79曲目 スラーの冒険者ギルド
スラーの冒険者ギルドに乗り込んだ俺たちだが、建物の中の雰囲気が一瞬で変わったのを感じた。
『待て。ずいぶんと歓迎されてない感じだぜ』
「えっ?」
俺の声に、メロディが驚いている。
冒険者ギルドの中にいる連中は、俺たちに完全に視線が集中していた。
「おいおい。そんなに睨んでは、このお嬢さんたちが怖がってしまうじゃないか」
「さっきのお兄さん!?」
ふいに声がしたので振り向いたら、噴水のところで出会った男性が立っていた。
「ま、まぁ……。ミュゼスがそういうのなら、まぁなぁ……」
「ああ、そうだな……」
どうやらこの男性はミュゼスという名前らしい。有名な人物なのか、冒険者ギルドの中にいる連中が段々と目を逸らしていく。なんだかよく分からねえが、助かったようだな。
メロディたちがぼーっとしていると、ミュゼスがぱちんとウィンクをしてくる。うん、なんだか気に食わねえな。
『おい、とりあえず受付まで行くぞ』
俺が声をかけると、メロディたちはようやく我に返ったのか、受付のカウンターに向けて歩き出した。
カウンターまでやって来ると、女性の受付がメロディたちに向けてにこりと微笑んできた。
「はい、スラーの冒険者ギルドへようこそ。一体どのようなご用件でしょうか」
なんとも笑顔のまぶしい受付の女性だ。
だが、やることを見失ってもらっては困るので、俺たちはこういう交渉ごとに一番慣れていそうなフォルテをせっつく。
俺たちに急かされたフォルテは、一度咳払いをして気持ちを整えると、ようやく受付の女性と話を始めた。
「初めましてですわ。わたくし、メジョールカ大陸よりやってまいりました、フォルテ・ピアノートと申します。こちらは聖女のモニーさんで、こちらは普通の村人のメロディさん、そして、ゴブリンのリリアさんですわ」
「メジョールカ大陸から来られたのですか? 魔物がいるとはいえ、こんな幼い子どもたちだけで……」
受付の女性は、ものすごく驚いているようだな。まあ、当然といえば当然か。この世界でも、やっぱり少女たちだけでの旅っていうのは危険だっていうことだ。
とはいえ、俺たちを囲むこの魔物たちがまた結構強くて頼りになるんだよな。アニマートが加わったことで、スフォルたちの連携が強まった気がするぜ。
話はまだまだ続いている。その中で、モニーが荷物から国王たちから渡された王令状を取り出して、受付の女性に見せている。
当然ながら、その令状を見た受付の女性は、目を丸くしてしまっている。
「そうなのですか……。その年齢では大変でしょうに」
ものすごく同情する言葉が出てきた。
「分かりました。とりあえず、ギルドマスターとでお会いして下さい。この手の話であれば、ギルドマスターからの紹介状があると話が早くなりますからね」
「承知致しましたわ」
話はまとまり、俺たちはスラーの街の冒険者ギルドの頂点に立つギルドマスターと会うことになった。
俺たちは女性が奥に行くものだと思っていたのだが、その場から俺たちの方を見たまま声をかけてくる。
「というわけです。お話はお聞きになっておられましたよね、ギルドマスター」
なんということだろうか。どうやら、俺たちが入ってきた方向にギルドマスターがいるらしい。
一体どいつなんだ?
俺たちがきょろきょろと見回していると、思ってもみなかった男が近付いてくる。
「そんなに大きな声で呼ばなくても聞こえているよ、カレット」
「えっ、あなたがギルドマスターさんなのですか?!」
メロディたちが驚くのも無理はない。俺たちだって驚いている。
俺たちに近付いてきたのは、さっきまで俺たちと話をしていた、ミュゼスという男だったからだ。
なんてことだ。このキザったらしい男がスラーの冒険者ギルドのギルドマスターとはな。なんとも予想外な展開だぜ。
「おおよそは聞かせてもらった。詳しい話をするために、奥へ移動しようじゃないか。それじゃガレット、この子たちは預かっていくからね」
「はい、ギルドマスター」
ガレットと呼ばれた女性は、頭を下げてミュゼスに従っている。
そんなわけで、俺たちはミュゼスについていき、ギルドの奥へと向かっていく。スフォルたちは置いていかれるかと思ったが、一緒について行っても大丈夫だと言われた。なので、スフォルたちも連れていっている。
冒険者ギルドの中を進んでいき、とある部屋へと案内される。
中に入ると、大きくて立派なは部屋が広がっていた。
「さあ、そっちのテーブルを囲んで座ってくれないかな」
「は、はい」
ミュゼスに言われるがままに、フォルテたちはテーブルを囲んでいく。
それにしても、まさか噴水のところで何気に出くわした男がギルドマスターとはな。冒険者っぽい格好をしているからただの冒険者と思っていたからな。
「そんなに警戒しなくてもいい。君たちとガレットのやり取りを見ている限り、すぐに話は見えたから、すぐに準備はしよう。テヌート国王に一筆認めればいいのだろう?」
「は、はい。その通りですわ」
「お願いできますでしょうか」
驚くフォルテの隣で、モニーが冷静に頼み込んでいる。それに対して、ミュゼスはこくりと無言で頷いていた。
そうかと思えば、そのまますぐにペンを取って手紙を書き始めてしまった。
なんともとんとん拍子に話が進んでいく様子に、俺は警戒を緩められねえ。
「これでいいだろう。これをテヌート国王にお渡しすれば、王国内での活動には妨害が入らなくなる。もしそんなことがあれば、すぐに近くの冒険者ギルドに報告してくれ」
「あ、ありがとうございます」
なんとも簡単に、手紙をゲットしてしまった。
だが、これで簡単にこの部屋を出られるわけがなかった。
「では、その魔物たちについて、ちょっと詳しく聞かせてもらえないかな」
ミュゼスは、やることはやったのだから、今度は自分の番だと言わんばかりに声をかけてきた。
あまりの圧力に、俺たちは思わずたじたじになってしまったぜ。
やはりこの男、一筋縄じゃいかなさそうだ。




