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異世界バンド~俺たちの熱い魂(ソウル)で異世界を救ってやるぜ!  作者: 未羊


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77/110

77曲目 ただで海は渡れない

 ミドレストを出発した俺たちは、航海を順調に続けている。

 ただ、ミドレストまでとは違って、今回は魔物どもがちょくちょくちょっかいをかけてきている。まったく、なんだっていうんだ。


「こんなに魔物が出るなんて聞いていないぞ」


「いつもの航路だっていうのに、なんだっていうんだ」


 どうやら船員たちも経験のない襲撃のようだ。となれば、何かに反応して魔物が襲い掛かってきてるというのか?

 考えても分からないな。となれば、俺たちにできることは魔物を追っ払うことだけだ。

 海の上ではスフォルたちウルフはほとんど役に立たない。なにせ、落ちてしまったら助けるのが困難だからな。

 となれば、フォルテとモニーの魔法とアニマートくらいしか攻撃する手段がない。船員たちもそれなりに戦える人間ではあるみたいだが、限度っていうものがあるからな。

 本当に、なんだってこんなに魔物が襲い掛かってくるんだ。


「悪しき者たちをこの船から遠ざけませんと」


「本当ですわね。このままでは、船を沈められかねませんわよ」


「わ、私だって戦います」


 モニーとフォルテに続いて、メロディも参戦するつもりのようだ。とはいえ、メロディはほぼ特殊能力がない一般人だ。戦うには向いていねえ。

 そうだ。俺たちの楽器といえば、そもそも電気を使っているな。それなら……。


『メロディ!』


「なんでしょうか、リードさん」


『海に向かって、俺をかき鳴らせ! 俺の予想通りなら、魔物どもをおとなしくできるはずだ!』


「なんだかよく分かりませんけど、分かりました!」


 俺の圧に負けたのか、メロディは俺をしっかりと構えて甲板の中央に立つ。

 すぅっと息を吸い込むと、思い切り俺をかき鳴らし始める。

 どんな旋律かは分からねえでたらめな音楽だが、なんだろうと音が出せれば問題ねえ。


「う、うるせぇっ!」


「こんなんで戦いに集中できるか!」


 さすがに音楽のない世界だと、俺の音は雑音にしかならねえよな。まあ、メロディがかき鳴らしているのはまったくでたらめなんで、間違っちゃいないんだがな。

 だが、でたらめだろうが今は関係ねぇっ!

 俺は気合いを入れて集中すると、音にエレキギターらしさを乗せていく。


「な、なんですの、これは……」


「なんだか、空気がピリピリします」


 フォルテたちが異変を感じ取ったようだ。

 そう。今メロディが奏でている音に、エレキギターっぽく電気を乗せているんだ。普通ならそうでもないんだが、これが海水に触れればどうなるか……。


「ギエエエエッ!!」


「ゴオオオオッ!!」


 突然、魔物たちが苦しみ始める。

 あまりにも突然のことに、船に乗っている全員が驚いている。


『へへっ、狙った通りだぜ』


 俺は顔をにやつかせている。いや、今はただのリードギターだから、顔なんてものがあるかといわれたら困るんだがな。


「ど、どういうことですの、これは」


 フォルテが声を上げて驚いている。


『なるほどな。リーダーは電気で海の連中にダメージを与えたってわけだ』


「で、電気?」


 ベスがすぐに分かったようだが、電気が分からないフォルテはさらに頭がこんがらがっていく。


『なんと説明したらいいのでしょうかね。この世界にも雷はありますよね』


「はい、雷はございます」


『モニーさん、ありがとうございます。その雷を小規模化したものといったところでしょうか。私たちの世界では、その電気を使ってあらゆるものを動かします。その電気というものは、人や動物が触れると、たちまちに大きなダメージを受けてしまうものなのです』


「よ、よく分かりませんね……」


 キーボの説明でもよく分からないらしい。モニーは首を横に振っているようだ。


『電気ってのはな、海水だとよく通るんだよ。俺たちはそうでもないが、あいつらは海水の中から出てきたからな。だから、耳からその海水を伝って、体の中に大きなダメージを与えているってわけさ』


「な、なるほど、よく分かりません」


 俺が説明を加えてやるも、メロディにはっきりこう言われてしまった。まあ、俺たちも知識不足でうまく伝えられねえから、しょうがねえな。

 だが、そうやっている間に船を襲った魔物どもは、次々と動かなくなって沈んでいく。俺たちの音から遠ざかろうとしているんだろうな。

 一部、力尽きた連中は海面に浮かんでいた。

 やがて静かになると、俺はメロディに演奏をやめるように伝えた。


「すげぇ、魔物どもが全部逃げていった」


「嬢ちゃん、やるじゃねえか!」


「耳障りだったが、効果はすごかったぞ!」


「えへ、あはははは……」


 船員たちに囲まれて、メロディは対応に困っていた。

 なんにせよ、魔物は撃退された。

 力尽きた魔物は船の上に引き上げられ、解体処理をしてから再び海の中へと投げ捨てられていた。

 おかげで、その日の夜は豪華な海鮮料理だったぜ。楽器の体じゃ食えねえのが残念だがな。


 俺が電気の力で魔物を退けてからというもの、すっかり魔物の襲撃はなくなった。下手に手を出せばやられると学習したのだろう。

 ようやく安心できる状況になった俺たちの目の前に、いよいよ陸地が見えてきた。


「見えてきたぞ! あれがマイネリア大陸だ」


 船員たちの声に、俺たちはようやくほっとする。

 長い船旅を終えて、俺たちは目的地であるマイネリア大陸に上陸することになる。

 さあ、早いところドラムを見つけて、久しぶりにバンドのメンバーを勢ぞろいさせねえとな。

 俺たちを乗せた船は、いよいよ港町ラルゴへと到着しようとしていたのだった。

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