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異世界バンド~俺たちの熱い魂(ソウル)で異世界を救ってやるぜ!  作者: 未羊


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76/110

76曲目 ミドレストを去る

 無事に眠ることのできた私は、リリアとして異世界で目を覚ます。


「リリア、起きたのね」


「あ、お、おはようございます。メロディさん、いいお天気みたいですね」


 私はにっこりと笑っている。

 でも、メロディさんの顔を見るとちょっと疲れているように見えるので、ほとんど休まずに看病してくれていたみたいだ。迷惑かけちゃったみたいね。

 その後、メロディさんは他の人たちを呼びに行っていた。

 一人になった私は、部屋の中を見回してみる。部屋の中にはスープとパンが置かれていたので、メロディさんがここで食事を取ろうとしていたことが窺える。ということは、みんながいないのは気を遣って外で食事をしているってことかしらね。

 うーん、これはちょっと迷惑かけちゃったなぁ。

 状況が見えてきたことで、私は思わずため息をついてしまう。

 こっちの世界ではゴブリンとはいえど、私の意識は日本人だからね。人に迷惑をかけるのは、正直言って心苦しいわ。次からはなんとしても倒れないように気をつけなきゃ。

 私はベッドの上で、拳をぎゅっと握りしめながら誓う。


 しばらく待っていると、部屋の中にはメロディさんがみなさんを連れて戻ってきた。


「リリアさん、目を覚ましたのですね」


「よかった。心配しましたよ」


「あの……。ご心配をおかけしました」


 フォルテさんとモニーさんにはしっかり謝罪しておく。もちろん、兄さんたちにもね。

 私は体を起こすと、スフォルたちにも順番に近付いていって一匹ずつ頭を撫でてあげている。

 その最後、見たことのある鳥が一羽紛れ込んでいた。


「あれっ、この鳥の魔物って……」


「はい、スフォルが倒した鳥ですね。改心して仲間になったんですよ。名前はアニマートと申します」


「あ、ああっと……。いい名前ですね」


 モニーさんの説明を聞いて、私はついどう反応していいのか困ってしまった。私も兄さんの影響で、音楽にはそこそこ詳しいもの。名前を聞いて、すぐに意味が分かってしまったから、ね。


「ケエエッ」


 私を見るなり、翼を広げて鳴いている。どうやら、挨拶しているみたい。こっちの私は同じ魔物だからか、なんとなく分かってしまう。


「ええ、よろしくね、アニマート」


「ケエエッ」


 首を軽く上下させているので、どうやら歓迎はされている模様。意外と頭がいいみたい。名前を付けてもらった影響なのかしら。

 私がまじまじと見つめていると、アニマートと名付けられた鳥が寄ってくる。

 そうかと思えば、私に対して頭を擦りつけてきた。私はとどめを刺そうとしていたはずだから、嫌われているかと思ったんだけどね。意外と懐いてくれているみたいだ。


『リリア、体調は大丈夫か?』


「えっと……、まだくらくらとします、でしょうか」


 兄さんが状態を確認してきたので、私は頭を押さえながら自分の感じを確認する。さっきまで気を失っていたのだから、とてもいいとは言える状態ではなかった。

 こんな状態でも、リリアとしてしゃべる時には、とにかく丁寧語を心がける。リリアは最初から丁寧語だったから、私の意識がそれを崩すわけにはいかない。

 だけど、そんなことを言っている状態じゃなくなってしまったらしい。

 目が覚めたばかりだというのに、部屋に大きな足音が近付いてきていた。


「聖女モニー、少々お話はよろしいでしょうか」


「はい。大体のお話は想像がつきます。すぐさま、西に向けて出発致します」


「……ご理解なされているのであれば、あえて言いますまい。港までは護衛いたしますが、一部の住民からよく思われていないのは事実なのです」


 なんということなのかしら。私たちは、すぐに島から出ていかなくてはいけないみたいだ。

 後で詳しくお聞きしたけれど、どうやら昨日の魔物の襲撃を、私たちのせいだとする人たちがいるようだった。だから、私たちは早くミドレストを出発しなければならないといけないということらしい。

 何か悪いことがあったのなら、都合の良いものにその原因を押し付ける。こちらの世界でもあることのようだ。いや、むしろこちらの世界だからこそ起きるのかしら。

 なぜ、島を守るために戦ったというのに、このような扱いを受けなければならないのかしら。私たちが魔物だとはいっても、本当に安直すぎると思う。否定もできないけれど。

 とはいえ、島民とのこれ以上のトラブルは避けたいもの。モニーさんの判断に、私たちは素直に従う。さすがにフォルテさんとメロディさんは少し文句を言っていたけれどね。兄さんたちは論外。

 流れ的に仕方ないので、私たちは荷物をまとめてすぐに港へと向かった。


「それでは、私どもはここまでです。聖女様たちの旅のご無事を、ここで祈っております」


「はい、ありがとうございます」


 警備兵たちに見守られながら、私たちは船に乗ってミドレストを出発する。

 新たな魔物アニマートを加えた私たちは、ミドレストからどんどんと離れていく。

 目指すは兄さんのバンドの仲間であるドラムさんがいるという西の大陸マイネリア。まずはその港町であるラルゴだ。

 ミドレストを出港したからには、そこまで無事にたどり着けるのか、それが心配ね。

 上空ではミドレストが周りを見張ってくれている。なんとも頼もしい味方が手に入ったものだと思うわ。

 期待と不安が入り混じる中、私たちの乗った船は順調に西を目指して進んでいっていた。

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