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異世界バンド~俺たちの熱い魂(ソウル)で異世界を救ってやるぜ!  作者: 未羊


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115/122

115曲目 由利と蓮美の秘め事

「あたたたた……。調子に乗りすぎちゃったかしらね」


 あたしは由利の隣で目を覚ます。

 そういえば、昨日も由利の体験をしようとしている世界に行きたくて一緒に止めてもらったんだっけか。


「いやまぁ、あっちの世界に行きたかったけれど、まさか敵側の存在だなんて思ってもみなかったわよ……」


 顔に手を当てて、大きくため息を吐く。

 由利がゴブリンとして動いているといっていた世界に、あたしもついに行くことができた。

 でも、向こうでのあたしは魔王の部下の一人である魔王四天王のハキースという女の魔族だった。声で相手を魅了するサキュバスの一種っぽいわね。


「にしても、ハキースってハスキーのアナグラムよね? あたしの名前は蓮美だから、なんだかなぁって思うわ」


 向こうとこちらとの自分の名前の共通点を見出して、あたしはますます複雑な気分になったわ。


 チリン。


 あたしは耳に聞き慣れた音を聞く。

 何かと思って左手の方を見ると、由利のマイクとぶつかり合うような位置に、見たことのある鈴が転がっていた。

 これがなんであるのか、あたしはすぐに分かった。

 ええ、ハキースとなったあたしが持っていた鈴だわ。


(となると、由利の持っているマイクも……)


 そう思った私は、由利のマイクをよく確認してみる。

 やっぱり。あのゴブリンが持っていたマイクと同じだわ。由利が話していた内容は本当だったってわけね。

 でも、困ったというものだ。

 夢の中で体験したことを、このまま由利に話をしていいのかどうか。同じ側だったら気兼ねなく話せたんだろうけど、あたしの立ち位置は敵サイド。互いに手の内を明かすことになってしまう。


「ああ、面倒だわ」


 思わず頭をわしゃわしゃとかき回してしまう。


「蓮美、どうしたのよ」


「わぁっ?!」


 突然聞こえてきた声に、あたしは思いっきり驚いてしまう。顔を向けると、由利が目をこすりながら目を覚ましていた。


「お、おはよう、由利」


「うん、おはよう。起きてご飯食べて、大学行くわよ」


「あ、うん。今日の講義の準備はできているから、ご飯食べちゃおうね」


「……変な蓮美」


 由利は思いっきり怪訝そうな顔をしていた。普通に思えば私の態度はどことなくおかしいものね、鋭い由利ならそうなるか。

 だったら、おとなしく話しちゃった方がいいかな。由利もあたしに全部話してくれているわけだし。


「由利、ご飯食べながらでいいから、話はいいかしら」


「いいわよ。私の方もあるからね。とりあえず、顔を洗って服を着替えましょ」


「そうね」


 布団から起き抜けたあたしたちは、顔を洗ってから朝食の支度をする。

 食卓を囲みながら、あたしは由利に切り出す。


「由利、あたしも向こうの世界に行くことができたわ」


「本当? どこに現れたのよ」


 思い切って話をすると、由利は食いついてきた。まあ当然かしらね。


「聞いて驚かないでよ。早速由利とも会えたみたいだしね」


「え?」


 由利と会えたって話すと、思いっきり固まっていた。すぐに考え込み始めたから、どこで会ったのか必死に思い出そうとしているみたいだわ。

 多分、答えにたどり着かないだろうから、あたしは自分からネタ晴らしをする。


「魔族と戦ってたでしょ。その戦った魔族があたしよ」


「……え?」


 再び由利は固まった。

 しかし、すぐに冷静になっていた。


「そっか。あの魔族が蓮美なら、音楽のことを知っていても不思議じゃないか。でも、振る舞いも言葉も魔族過ぎたんだけどな……」


「そりゃねぇ。魔王四天王なんだから、あたしの記憶と人格が乱入したところで、すぐにはいそうですかって寝返れないでしょ。ただでさえ後のない四天王なのに」


「それもそっか」


 由利はあっさり理解してくれたようだった。


「しっかし、由利たちとの戦いに集中するあまり、他の兵士たちの乱入には困ったものだわ。殺されるんじゃないかって必死に逃げ帰ったわよ」


「あれは確かにそうね。兄さんも残念がっていたわ。音楽で勝負できるなんて思ってもみなかったからね」


「だてに妹がバンドやってないわよ。あたしだってそこそこできるんだから。双子だし」


「それもそうね。蓮美の歌の実力は、時々遊ぶ私が一番よくわかっているもの」


 どうやら、由利のお兄さんもあたしのことをずいぶんと気にかけていたみたいね。だったらなおさら、あの乱入は許せなかったわね。今度会ったらどう辱めてやろうかしら。

 ……っといけないいけない。こっちの世界でそんな魔族的な考えをしてどうすんのよ。あたしはすぐに反省した。


「そうそう、由利」


「なに、蓮美」


「お互いに情報交換するのはいいけれど、下手に他の人に情報を流さないようにしましょう」


「そうね。変な疑いをかけられちゃたまったもんじゃないものね。互いに内通者としての疑いをかけられちゃう。まさか異世界で通じ合っているとは思わないでしょうけれどね」


 こっちの世界で情報交換はするけれど、お互いの胸の内にだけしまっておくことを確認して頷き合う。

 そうして無事に朝食と情報交換を終えたあたしたちは、今日の大学の講義を受けるために部屋を出ていったのだった。

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