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異世界バンド~俺たちの熱い魂(ソウル)で異世界を救ってやるぜ!  作者: 未羊


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114/121

114曲目 歌合戦

 魔族らしく振る舞いながらも、あたしは眼下に見えたものにちょっと興奮していた。

 ギターにドラム、妹のバンドでも見たことのある楽器が、この世界でも見られているんだからね。なんだかテンションが上がってくるわ。

 ということは、あの楽器たちが由利のお兄さんたちで、となるとあのゴブリンは……。うん、由利の顔にそっくりだわ。本当にこっちの世界じゃゴブリンなのね、由利ってば。

 嬉しい反面、こっちはテヌート王国のレンガートへと攻め込む魔族の大将。役目を果たさないと魔王様に殺される。

 悪いけど由利、こっちの世界じゃ魔族として精一杯振る舞わせてもらうわ。向こうで謝罪させてもらうから、今は我慢してよね。

 さてと、どうやってもてあそんであげようかしら。こっちのあたしは声の魔族って言われているらしいからね。

 となると、向こうは音楽でかき消せると思っているってところかしら。さっきから必死に演奏しちゃってね。

 あっ、そうだわ。この音楽ならあたしも知っているし、由利にヒントを与えると同時に、ショックを与えてあげようかしら。

 あたしは、必死に演奏している連中を見ながらにやりと笑ってしまう。


「ふふっ、必死に頑張ってくれちゃってねぇ。そうだわ、その頑張りを敬意を表して、ちょっと驚かせてあげる」


 人間と敵対する魔族らしく、実にいやらしい態度を取っている。

 そういえば、あのゴブリンが手に持っているのはマイクね。こっちの世界には存在しないものだから、由利のお兄さんたち同様に目立っているわ。

 あたしはつい笑ってしまう。

 それにしてもこの音楽、向こうじゃ慣れ親しんでいるからまったく耳障りでも何でもないのよね。

 耳障りって発言したのは、この魔族の方が知らないから。今のあたしには、向こうの蓮美とこのハキースの記憶がごちゃ混ぜになっちゃっているからね。性格も安定しないものね。同じあたしだとしても、これが環境の違いってものなのかしらね。

 おっと、いつまでものんびりしているわけにはいかないわね。

 由利のお兄さんたちの音楽で、あたしの部下たちが少しずつ動きが止まり始めているわ。このままじゃあっさり敗走しかねない。あたし自身が後のない魔族だけに、それはさすがに避けたいところだわ。二つの世界の自分が重なり合ったところで死ぬとか、笑えない話だもの。

 魔王四天王の一人として、抗わせてもらうわよ。


「さぁ、あたしの声で魅了されてしまいなさい」


 あたしは自分の口の前に、魔力で輪っかを描く。

 そして、タイミングを合わせて歌い出す。

 その瞬間、ゴブリンの表情が変わったわね。

 ふふっ、驚いているようね。なぜこの曲をあたしが歌えるのか。

 さあ、由利。あたしとあなた、どちらがこの歌を歌えるか、競おうじゃないの。歌合戦の始まりよ。

 ちらりと視線を向けて、あたしは挑発するような笑みを向ける。由利は一瞬のたじろいだけれど、すぐに表情を引き締めていたわね。

 そうそう、そうこなくっちゃ。

 向こうでは親友でも、こちらでは敵同士。手加減はしないわよ。

 こちらでも向こうの記憶や人格を維持できるようになったとはいえ、そう簡単に寝返るわけにはいかない。あたしは魔王四天王なんですからね。


『くそっ、なんてやつだ』


『俺たちの曲の歌詞をきちんと歌っているなんて、なんて奴なんですかね』


『そんなことなどどうでもいい。こいつを追い返さないことには、街の連中に被害が及ぶんだからよ。俺様たちの熱いビートの前に、ひれ伏させてやるぜ!』


 あらあら、由利のお兄さんたちも必死だわね。というか、まさか声まで聞こえるとは。これも転移者の特典のようなものかしら。

 でも、その強気もいつまでもつかしら。そろそろ楽曲が終わるわ。二曲目に突入するのかしら。

 あたしが考えごとをしていると、予想外な展開が襲い掛かってくる。


「ギャギャギャッ!」


「なに?!」


 変な鳥の魔物が、あたしに対して襲い掛かってきたわ。こいつは、由利が話していた仲間にした鳥の魔物ね。

 このあたしに攻撃を仕掛けてくるとは、やってくれるじゃないのよ。


「邪魔よ!」


 あたしは息を吸い込み、大きな声で鳥の魔物へと声をぶつける。


「ギャギャッ!」


 直撃を受けた鳥の魔物は、バランスを失って地面へと落ちていく。

 由利の仲間であるのなら大事にしたいところだけど、戦いの最中だから情けは無用。悪いわね。


「アニマート!」


 歌っていた由利が歌を止めて、落っこちていく鳥の魔物を受け止めにいっている。

 まったく、相変わらず優しい子だわね、由利は。でも、今が戦いの最中だということを忘れないでちょうだい。


「はははっ! テンションを上げていくわよ。あなたたちの音楽、このあたしが乗っ取ってあげるわ!」


『なっ?!』


『今、音楽ってはっきり言いやしたね』


『こいつ、ただの魔族じゃねえぞ』


 おっと、思わず言ってしまった単語だけど、はっきりと反応しちゃったわね。これは失言だわ。

 まあいいわ。気付かれたとはいっても、どうこうできる状況ではないでしょうからね。

 さぁ、歌合戦の続きをしましょう、由利。

 あたしは意地悪ににやりと笑っていた。

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