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異世界バンド~俺たちの熱い魂(ソウル)で異世界を救ってやるぜ!  作者: 未羊


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111/119

111曲目 人間と魔族のはざま

 表に出てみて、この世界というものをあたしは理解した。

 魅了使いのあたしは、空が飛べる。だから、空中から様子を確認してみたの。遠くに街が見えて、その手前の森との境界付近で、魔族と人間とが戦っている。

 うん、ゲームや漫画なんかでよく見る、剣と魔法の世界ってやつだわ。

 向こうの世界では、こんな戦いとは無縁だっただけに、このような戦いの現場を目の当たりにしても、すぐに現実として受け入れられなかった。

 魔王四天王の一人としても最弱なのは、その辺も影響しているのかもしれないわね。魅了を得意とするあたしは、直接戦いのは苦手っていうところがあるから。

 とはいえ、何かしら活躍しないことには、魔王軍の中では粛清されかねない。あれだけ願っていたこちらの世界での生活。すぐに終了させるわけにはいかないわ。なんとしても、生き延びてやるんですからね。

 あたしは、目の前の現状を見ながら、強く決意をする。


 前線へと赴いたあたしは、相手の軍勢を確認する。

 そろいの鎧兜に身を包んだ兵士と、それとは異なる姿をした人間たちがいる。おそらくは、冒険者たちなんでしょうね。


「おお、ハキース様だ」


「ハキース様が来たぞ」


 後ろで控えてきた魔族たちが、あたしの姿を見つけて歓喜の声を上げている。

 四天王では最弱ではあるけれども、それなりに慕う魔族がいたんだなと、あたしはちょっと感動させられてしまう。


「戦況を確認させてもらえるかしら」


「はっ! 現状は拮抗しているという状態でございます」


 控えていた魔族に確認をすると、上空から見ていて感じた状況と同じような報告を聞かされた。ということは、このまま放っておけば、あたしたちは押し返されないわね。

 それというのも、向こうの世界で由利と話したことで、向こうには援軍が来ることが分かっているから。

 ここの戦力からすれば、あたしでも攻め落とせると見ていた魔王様の期待を、このままでは裏切ってしまいかねない。

 となれば、いずれ退却するにしても、それ以前にはこちらを優勢にしておかなければいけないわね。

 攻めあぐねて敗走するよりも、有利に進めていたところをひっくり返される方がまだいいわ。


「あたしも打って出るわ。ここを落とさないことには、魔王様に合わせる顔がない。最前線に通達をして」


「承知致しました!」


 あたしの部下は、元気よく返事をすると最前線へと駆け出していく。

 さあ、ここからはあたしの夢魔としての力の見せどころだわ。なんでか持つことになってしまったこのタンバリン。これの力を確認しなきゃね。

 翼を広げて、あたしは人間たちとぶつかり合う最前線へと向かう。


 最前線では、武器と矢と魔法が双方から飛び交っている。戦力としてはこちらの方が上なはずなのに、なぜ拮抗しているというのかしら。

 ああ、なんだかイライラしてくるわ。

 その瞬間、あたしはハッとしてしまう。いけない、魔族としての意識がかなり前面に出てしまったわね。

 頭を左右に振っていると、あたしに向けて魔法が飛んでくる。


「ちっ!」


 慌ててあたしは攻撃を避ける。まともに食らえば危なかったわね。

 にしても、こっそり出てきたというのにあたしを見つけるなんてやってくれるじゃないの。

 ならば、あたしの力でひどい目に遭わせてあげましょう。

 あたしは腰についている鈴を手に取り、一度チリンと鳴らす。

 すると、あたしに向けて飛んできた攻撃のすべてが、その場で力を失ってしまっている。魔法はかき消え、矢はその場でぽとりと地面に落ちていく。どうやら、あたしの能力は防御に長けているようだった。


「ふふふっ、愚かしい人間たちだこと。このあたしに対して刃を向けるだなんて」


 ふふっ、ちょっとは悪役らしくできているかしらね。

 あたしは、手に持った鈴をタンバリンへと変化させる。


「この魔王四天王であるハキース様の手によって死ねること、光栄に思えることね」


 目を細めながら見下してみると、兵士たちが逆上したような様子を見せてくる。そして、あたしに向けて総攻撃を仕掛けるように遠距離攻撃を持った兵士たちに声をかけているわ。

 あたし一人でそこまで戦力を引きつけられるとはね。


「さぁ、あたしの部下たちよ。人間たちを蹴散らしてやりなさい!」


「おおーっ!」


 あたしが命令を出すと、最前線の魔族たちが一斉に動き出す。そのタイミングで、あたしはタンバリンを一度鳴らす。

 鳴らした瞬間、魔族たちの体が光ったような気がしたわね。でも、気にしているような状況じゃない。あたしに対して、人間たちの攻撃が始まる。


「そんなへなちょこな攻撃が、あたしに通じますかっていうのよ」


 あたしは再びタンバリンを鳴らす。

 そしたら、鈴の状態の時とは違い、あたしの目の前にバリアのようなものが張られる。そのバリアは、矢や魔法を簡単に跳ね返してしまっていた。

 あはははっ、なかなかに爽快ね。

 ……っといけない。ついつい魔族に染まり切ってしまうところだったわ。

 あたしのやることは、人間たちを殺さないようにしつつ、その戦力を削いでいくこと。面倒なことは全部部下に投げてしまいましょうね。

 部下である魔族と人間たちの戦いを見守りながら、あたしは由利たちがやって来ることをただひたすらと待ち続けたわ。

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