108曲目 レンガートへと向かう快適道中
ドラムが変形したキャンピングカーに乗って、俺たちは一路レンガートの街へと向けて進んでいく。
それにしても、ドラムの変形したキャンピングカーは相変わらずすごい。どんな悪路を走ろうともほとんど揺れねえからな。ちゃんと外見てねえと、どこは知ってるのかまったくわからねえぜ。
ちなみに、キャンピングカーの中では、すっかりこの度に慣れてしまったスフォルたちが一匹ずつ順番にトリミングとブラッシングを受けている。いい毛並みを保つためには必要だからな。フォルテもすっかり慣れてしまっているのか、まったくそつなくこなしていやがる。
「ギャッギャッ!」
レンガートへと向けて進む最中、唯一外に出て周囲を警戒していたアニマートが急に騒ぎ始める。
「外に魔物が迫っています」
助手席に座っていたモニーが、扉を開けて俺たちに伝えてくる。
俺たちが動こうとすると、スフォルたちがすっと立ち上がる。そうかと思うと、任せてくれと言わんばかりに俺たちを見ると、ドアを開けて外へと飛び出していっている。
いや、ウルフのくせに器用にドアを開けるもんだな。
それからしばらくすると、返り血を浴びたスフォルたちが戻ってくる。
さすがに真っ赤になった姿を見た時は驚いたぜ。メロディは思わず気絶しそうになっていたしな。あれだけ戦いを見てきたとはいえど、やはりただの村人にはまだ厳しいか。
魔物を仕留めたということもあって、ドラムもさすがにその場に止まる。解体しなきゃいけないからな。
解体となると、フォルテとリリアが揃って出ていく。いや、二人ともすっかりその手のことに慣れちまっているな。
フォルテは貴族のお嬢様だし、リリアは俺と同じ世界の人間の精神が宿っている。どちらにしても得意とはいえることじゃねえ。
だというのに、いざ解体を始めてみるとものすごく手際がいいったらありゃしない。
仕留めたのはスフォルたちウルフ軍団だから、傷口とかはかなりめちゃくちゃだ。普通なら目を背けてもおかしくない状態なんだが、二人揃ってバンバンと解体を進めていっている。
その様子を、横でミクスがじっと眺めている。
「……なんでしょうか」
「いや、解体っていう作業を見せてもらってるんだ。俺は鍛冶師の娘だからっていってもよ、それ以外のことにも興味はあるからな」
「そうですか。なら、手出ししないでじっくり見ていって下さい。私はゴブリンですけれど、こういうことは得意ですから」
横に立たれてじっと見られていたら、そりゃ気になるよな。リリアが不機嫌そうに顔を向けるも、ミクスからそんな答えが返ってくると邪険にできなくなってしまった。なので、これでもかというくらいしっかりと解体作業を見せつけていた。
それにしても、メロディになんとか解体作業を見させてもらっているが、中身がとても俺の妹とは思えねえよな、リリアは。こっちの世界に来たら、やっぱりゴブリンに引っ張られてるんだろうな。
無事に解体が終わると、要らないものは燃やして処分し、必要なものはドラムの中へと持って帰ってくる。
このドラムが変形したキャンピングカーには冷蔵庫があるものだから、肉とかはその中にしまっておく。これで簡単には腐らないだろうな。
解体作業で血まみれになってしまったフォルテとリリアは、そろってお風呂へと向かっていく。着ていた服は洗濯だ。
このキャンピングカー、洗濯機までついてるんだから、いくらなんでも設備が充実しすぎだろう。さすがはドラムだな。もちろん、洗濯機はドラム式だ。
「はあ、ここのお風呂はとても気持ちいですわ」
「やはり、お湯が出て、湯船につかれるというのは最高ですね」
フォルテとリリアがお風呂から出てきたな。となれば、移動再開だ。
ミクスは運転席へと戻り、ドラムは再び前進を始める。とにかく、日が出ている間はひたすら移動だ。
なんといっても、本当ならばのんびりしている間はねえんだからな。こうしている間にもレンガートの街は魔族からの襲撃を受け続けている。突破されてしまえば、テヌート王国の中に魔族の脅威がなだれ込むことにもなりかねねえんだ。
俺たちはどんどんと進んでいく。
ドラムもあんまり遠慮せずに飛ばしてきたものだから、王都フェルマを出発してから一週間も経たない間にレンガートの街の近くまでやって来ていた。
「外に出て前方の景色を確認して参りましたけれど、そろそろレンガートの街ですわね」
『はっ、ようやくか。魔族どもを俺たちの音楽で蹴散らしてやろうじゃねえかよ』
『そうですぜ、リーダー。やってやりやしょうよ』
フォルテの声に、俺とベスが思いっきりやる気になっているぜ。
無事にレンガートの街に到着した俺たちは、キャンピングカーを降りて、ドラムを本来の姿へと戻す。あのデカブツのままじゃ、街の中には入れないからな。
とにかく街にやってきた以上、やることはひとつってもんだ。
『よし、街の中に入って情報収集だ。なんとしても最良の形で魔族どもを退けてやるぞ!』
「おーっ!」
俺たちは気合いを入れて、レンガートの街へと向かっていく。
入口では門番に止められやしたが、国王から預かった書状を見せると、おとなしく俺たちを通してくれたぜ。さすが国王の書状は最強だな。
ともかく、俺たちはレンガートの街に到着した。
さあ、待っていやがれ、魔族ども。絶対に俺たちの音楽のとりこにしてやるからな!




