107曲目 次の目的地
俺たちはテヌート国王に謁見する。
「よくぞ参ったな、聖女モニーとその仲間たち」
国王は玉座に座しながら、俺たちに話しかけてくる。立ち上がらないが、国王ならこんなものだろう。別に怒るところじゃない。
「ティックの街を襲おうとした魔族を追い払ったそうだな。報告は受け取っておるぞ」
どうやら、ティックの街での話は国王の耳に届いているようだ。まぁ、ミクスのことがあって結構な日数滞在していたからな。距離的なことを考えたら、十分に伝わるだけの時間はあったか。
報告を聞いた以上のことは何も言ってこないんだが、まあ、とりあえず今はいいか。それよりも、俺たちは次にどこに進めばいいのか、それが聞ければいいんだからな。
俺たちがここまで来た理由は、魔王討伐だ。そのための情報さえ手に入れば、ひとまずは問題がないんだよ。
「魔族を追い払ったということで、私からの褒美がある。あとで宰相から渡すように手配をしておいたので、受け取っておくれ」
「はい、ありがとう存じます」
国王の話を聞いて、モニーは素直にお礼を言っている。
だが、すぐに小さく手を挙げて、国王へと発言の許可を求めている。
「うむ、何かな」
モニーの動きに気が付いたようで、国王が声をかけている。
国王から声がかかったことで、モニーが小さく頷いて、発言を始める。
「国王陛下、私たちは魔王討伐の命を受けて、こちらの大陸までやってきました。そこで、この大陸で現在最も魔族被害の大きな場所をお教えいただけますでしょうか」
「ふ、ふむ……」
モニーからかけられた言葉に、国王はどういうわけか、ちょっとうろたえているようだ。
まあ、なんとなくその気持ちはわかるな。
俺たちの一行は、俺たち聖器を持っていはいっているとはいえ、十代の少女ばかりだ。取り巻きにはそれなりの強さを持つ魔物がいるとはいえ、その構成に不安を抱くのはやむを得ない話なんだよ。
うん、いくら聖女がいるからとはいってもな、その実態はまだ十代後半の少女だしな。
だけどな、モニーは自分に課された役目を果たそうと必死になっているんだ。今だって、真剣な表情を国王に向け続けている。
仕方がないので、テヌート国王は、その類の話に詳しい部下をこの場に呼ぶことにしたようだ。手を挙げると、その場にいた兵士が一人慌てた様子で謁見の間から出ていった。
しばらくすると、これまたなんとも御大層な人物が戻ってきた。
見た目の服装からすれば、そこらの大臣なんかと変わらなさそうなんだか、見るからにその服がはちきれんばかりの状態になっている。相当鍛えてやがんな、このおっさん。
「お呼びでございましょうか、国王陛下」
「うむ、アクセート。そなたに聞きたいことがある」
「はっ、なんでございましょうか」
国王に話しかけられたおっさんは、実にかしこまりながら返事をしている。
こそこそと話しかけられたおっさんは、なんとも驚いた表情をしてくれている。これは、モニーがさっき話したことをそのまま伝えたな?
「いやはや、このような少女たちに、魔族との戦いが務まりましょうかね。我々ですら手を焼いているといいますのに」
「この者たちは、ティックを襲った魔王四天王を追い返したそうだ」
「な、なんと?!」
国王から事実を告げられると、おっさんは目をまんまるにしてやがる。うん、信じられないといった気持ちがまるまる伝わってくるぜ。だがな、それ、事実なんだよなぁ。
聖女もいるので大丈夫だろうという話を受けたおっさんは、ぐぬぬといった感じで考え込み始めた。
しばらく考えた結果、国王には逆らえないということで話を受け入れることにしたようだ。
「分かりました。現在、魔族との間で戦いが激しいのは、北西の国境付近でございます。中でもレンガートの街は被害が大きいですね。まだ市民の生活には影響は小さいですが、度重なる襲撃で兵士たちの疲労がたまっているとのことです」
「ふむ、なるほどな」
おっさんからの話を聞いた国王は、再び俺たちの方へと視線を向けてくる。
「今の話、聞こえたであろう。そなたたちにはレンガートの街へと向かってもらい、魔族との戦いを有利に進めてもらいたい」
「承知致しました。必ずや、魔族たちを追い返してみせますとも」
国王からの命令を受け、モニーがしっかりと頭を下げて答えている。
これで国王との話が終わり、俺たちは続けて宰相から褒美を渡される。かなりの金額が手に入ったので、これで道中の不安はかなり解消されたといえるだろう。まあ、俺たち四人は全く必要ないんだがな。
謁見の最後に、国王からすぐに向かうようには言われたものの、出発のタイミングは準備が整ってからで構わないと言われた。
だが、話の内容からすると、できる限り急いだいい方がいいというのは感じ取ったので、俺たちは王都の中であちこち巡って、必要なものを買い集めていく。
移動はドラムが変形したキャンピングカーで大丈夫だしな。
もちろん、レンガートの街の位置と行き方はしっかりと確認済みだぜ。おんなじミスを繰り返すかっていうんだよ。
『よっしゃ、これで一応準備はオーケーだな?』
「問題ありませんよ、リードさん」
「ええ、早速参りましょう」
準備を終えた俺たちは、国王に向かうように言われたレンガートの街へと向けて出発する。
本格的な魔族との戦いが始まることになるが、すべて俺たちの音楽で解決してやるぜ!
俺たちの感情は、じわじわと昂り始めていた。




