105曲目 変形!
ミュゼスから依頼を受けたのはいいが、俺たちは次の目的地がよく分からねえ。
『次はどこに向かうべきだろうかな』
「それでしたら、やはり王都フェルマに戻るのが一番だと思います。国王陛下もですし、冒険者ギルドもどこよりも多くの情報を持っていますからね」
俺が悩んでいると、モニーがその様に助言をしてくれた。
「あと、商業ギルドに声をかけたら、珍しい鉱石などの情報も手に入るでしょうし、ミクスさんがついてくる理由にもなりますよ」
「なに、珍しい鉱石だって?!」
モニーの言葉に、面白いくらいに食いついている。わっかりやすいなぁ。
だが、そうなると問題は移動手段だ。まあ、ウルフ連中がいるから困らないとはいえ、こいつらに頼みっぱなしってのもなぁ。
さぁ、どうしたものか。
『リーダー、こういう時は俺様に任せてくれ』
『なんだよ、ドラム』
何かいい案がありそうな雰囲気で、ドラムが俺に話しかけてくる。
『ミクス、ヴィークルモードって叫んでくれねえか?』
「な、なんだ、そのヴィー……なんとかって」
『なんでもいいんだよ。とりあえず叫んでくれ』
突然のドラムの頼みに、ミクスが意味が分からないという表情を浮かべている。まあ、こっちの世界じゃヴィークルなんて単語ねえんだな。
ドラムに押し切られる形で、ミクスは渋々了承しているみたいだぜ。
「ヴィークルモード!」
ものすごく恥ずかしがりながら、なぜか右手を高く掲げて叫んでいる。なんで右手を上げたよ。
ところが、ミクスが叫んだ瞬間、ドラムの体が光り出す。
本体自体はキックドラムみたいなんだが、光った瞬間、スネアとタムが飛び出してきて、キックドラムと合体していく。他にもシンバル類やスティックも出てきて、なんかアニメでよくある変形シーンみたいになっているぜ。
しばらくして光がやんだかと思えば、そこに現れたのはでっかいキャンピングカーみたいな姿になったドラムだった。
なんだよ、このミュージシャンたちに怒られそうな姿はよ……。
なんでかって? タイヤ部分がドラムだからだよ。
『ふふん、どうだい。俺様の乗り物形態は!』
なぜか得意げに喋ってやがんな。
とはいえ、ドラムがこんな姿を持っているのも、なんとなくだが納得できる。
それというのも、俺たちのバンドで運転を担当していたのが、他でもないドラムだからだ。俺たちだって免許を持っているが、ドラムが運転しているのが一番安全だったからな。うん、お察しだよ。
『ほらほら、乗った乗った。王都ってところに行くんだろ?』
『分かったよ。まったく、うるさいやつだな』
俺たちは渋々、メロディたちに伝えて中へと乗りこむ。
ところが、中に入って驚いたな。
『おいおい、まるで家じゃねえかよ』
「なんですか、これ。まるでシステムキッチンじゃないですか。わぁ、水道がある。こっちにはトイレで、お風呂まで!」
リリアが驚きすぎている。あっちの世界の単語をつぶやきまくりだぞ。
『おう。ワンコどもが乗っても大丈夫だぜ』
ドラムがこんなことを言うものだから、スフォルたちウルフたちとアニマートも一緒に中に乗る。まったく問題がねえ。
しかも、よくよく見てみたら、外から見える大きさと、中に入った時の大きさが釣り合ってねえぜ。これが魔法のある世界の不思議ってやつだな!
『みんな乗ったな? ミクス、運転席に来てくれ。乗り込んだ場所の左手に扉があるから、そこを開ければ運転席だ』
「あ、ああ。とりあえずいう通りにするぜ」
ぽかんとした表情のまま、ミクスはドラムに言われるがままに扉を開けていく。
「うわぁ、なんだこりゃあっ!」
でっかい叫び声が聞こえるので、俺はメロディに言って運転席に向かってもらう。
扉をくぐると、うん、さっきまでの空間と違って実にこじんまりとした運転席があった。隣にはもちろん、助手席もあった。
ミクスが何に驚いているかと思ったら、ハンドルなどの内部設備のようだ。
「すげぇ。よくは分からねえが、なんか洗練されたものを感じるぜ」
あっ、そうか。こいつ鍛冶師の娘だもんな。デザインとかそういうのにも興味があるってことか。そうかそうか。
『なんだ、リーダーも来たのか。なら、そこの嬢ちゃんは隣の席に座ってくれ。ミクスはこっちの輪っかのある方な』
「は、はい」
「おう、分かったぜ」
ドラムに言われるがままに、ミクスは運転席に、メロディは助手席に座り込む。
『そんじゃ、王都フェルマってところに向かうから、方向を指示しておくれ。ミクスは覚えるまで、俺様の運転技術を見て学ぶんだ』
「分かったよ。こんなワクワクしたのはなんとも久しぶりだぜ」
表情と言葉から、気分が昂っているのがよく分かるぜ。
『おう。それじゃ、リーダー。王都までの方向を指示してくれよ。それに従って俺様が自動運転してやるからよ』
「お、おう」
うん、やべぇ。全然方向を覚えてないぜ。
『リーダー? もしや、方向が分からねえなんてこたぁ、ねえですよね?』
ぎくり。
せっかく王都に戻るってことになったのに、肝心の方向が分からない。
はてさてどうしたものか。俺はこの状況を解決するために、ぐるぐると思考を巡らせることになったのだった。
はあ、なんとも前途多難だぜ。




