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異世界バンド~俺たちの熱い魂(ソウル)で異世界を救ってやるぜ!  作者: 未羊


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103/117

103曲目 世界に抗うために

 私は再び異世界に戻ってきます。

 今回は、ICレコーダーを持ち込みました。録音と再生ができる者ですし、向こうの世界に持ち帰れば充電だってできます。

 なんでこんなものを持ち込んだかというと、やっぱり兄さんたちの音楽を消させたくないからです。CDの音楽はまだ聴けましたが、これだっていつまでもつか分かりません。

 でも、不思議なんですよね。兄さんたちの存在が徐々に消えていっているのに、音楽だけはいまだにしっかりと残っているんですから。となれば、やはりレコーダーに兄さんたちの音楽を残すのは重要だと思うんです。

 目を覚ました私は、持ち込んだICレコーダーをぎゅっと握りしめます。

 でも、蓮美はこちらの世界までやってこれませんでした。一緒に手をつないで寝たといいますのに……。やはり、私だけが特殊なのでしょうか。

 いや、諦めるのはまだ早いです。私がリリアというゴブリンであるように、蓮美もこちらの世界の誰かとして来ているかも知れません。そうです。希望を捨てるのは早いのです。

 目を覚ました私は、事情をお話したモニーさんとキーボさんのところに向かいます。


「モニー様、キーボさん。ちょっとお話はよろしいでしょうか」


 部屋をノックした私は、二人に声をかけます。

 返事をいただいたことで、私は二人だけ部屋を移ってもらうことにします。兄さんとベスさんには、まだ聞かせるわけにはいきませんからね。

 隣の魔物だけで泊まっている部屋へとやってきます。モニーさんにも椅子に座ってもらって、私は話を切り出します。


『おや、それはレコーダーじゃないですか』


 話の際に向こうから持ち込んだICレコーダーを取り出すと、キーボさんがすぐに反応しています。


「れこーだー……? なんでしょうか、それは」


 モニーさんは分からないので、首を傾げています。


『レコーダーというのは、周囲の音を録音する機械ですね。こっちでいうなら魔法の道具が近いでしょうか。私たち聖器と近しいものと思って下さい』


「ろ、録音?」


 ありゃ、これも説明しないといけませんか。

 録音についても、私たちで説明をします。実際に、私はICレコーダーを作動させながら話をしました。

 話を終えたところで、私はICレコーダーを再生させます。そうすると、先程の私の説明がICレコーダーから聞こえてきました。


「えっ、えっ? これって魔法ですか?」


「いえ、キーボさんたちの世界の科学技術です」


 驚くモニーさんに私は淡々と説明をします。モニーさんはしばらく混乱していて、ちょっとお話になりそうにありませんでした。

 なので、私はキーボさんとお話をします。


『それにしても、またこんなものを持ち込むとは、ずいぶんなことをしましたね。こちらの世界では私たちのようなオーパーツですよ』


「仕方ないんです。これ以上、向こうの世界で兄さんたちがいた証を消させるわけにはいきませんからね。音楽こそ無事ですけれど、一部の方々の記憶から兄さんたちがどんどんと消えていっています。異世界転移の影響が出始めているんだと思います」


『なるほどですね……。しかし、こんなことをしたとはいえ、どうこうできるものだとは思えませんが?』


 私の行動に対して、キーボさんが懐疑的です。その気持ちも分からないことはありませんが、これは、私のささやかな抵抗です。

 なにせ、私は持っているマイクを通じて、こちらの世界とあちらの世界の間で意識が行き来できるんですから。これがある限り、私が兄さんたちを忘れることはないでしょうが、それゆえに兄さんたちが忘れ去られていくことが怖くて仕方ないんです。


「みなさんの演奏を通じて、もしかしたら向こうの世界の異変も食い止められるのではと、私は考えています。だから、この録音できるレコーダーを、今回は持ち込んだんです。私は、兄さんたちにあっちの世界に無事に戻ってきてもらいたいですから」


 ぎゅっとICレコーダーをを握りしめると、私の目からは大粒の涙がこぼれ始めます。

 向こうでの現実を突きつけられたことで抱いた私の気持ちが、ここであふれ出したんです。

 しばらく、私は声が出せませんでした。

 その私を心配したスフォルたちが、私のところへとやってきます。涙を止めさせようとなめてきますが、私の涙はとてもじゃないですけれど、止まりませんでした。

 私たちは、そのまましばらくまったく何も言えず、動くこともできませんでした。



「……あの、申し訳ありませんでした」


 ようやく気持ちが落ち着いてきた私は、涙をぬぐいながらモニーさんたちに謝罪します。

 ですが、モニーさんもキーボさんも、私を責めることはありませんでした。二人は私の気持ちをよく理解してくれたようです。


「キーボさんたちを元の世界に戻すには、やはり、魔王をどうにかしなければならないのでしょうね」


『かも知れませんね。先日のあのディスコーとかいう魔族の様子を見ている限り、世界征服をもくろんでいるような、そんな感じがしましたからね』


「はい。そうなりますと、いつまでもここに留まっているわけにはまいりません。ミクスさんを説得し、ドラムさんを合流させませんと」


「そうですね。私も頑張ります」


 いつまでも泣いていられないと、私は力を込めます。

 その時でした。


「モニー様、朝食ですわ。なにやらお話があるそうなので、食堂に急ぎましょう」


 フォルテさんが私たちを呼びに来ました。

 その呼び掛け応えて、私たちはお互いに一度頷くと、フォルテさんと一緒に食堂へと向かったのでした。

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