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異世界バンド~俺たちの熱い魂(ソウル)で異世界を救ってやるぜ!  作者: 未羊


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102/114

102曲目 由利の抵抗

 私は、現実世界の方で目を覚ます。

 時間を待って、私はあの雑居ビルの管理会社に連絡を入れると、驚愕の事実を告げられてしまう。


「そ、そんな……」


 通話を終えた私は、部屋の中で愕然としてしまう。

 兄さんのバンド名を伝えてみたものの、知らないとはっきり言われてしまった。それどころか、兄さんが借りていた部屋は、もう何年も空き物件のままだという風にも伝えられてしまった。


「ダメ……。このままじゃ兄さんたちの存在そのものが消されてしまうわ」


 私はとても悔しかった。

 兄さんたちが向こうの世界に飛ばされたのは、自分たちの意思ではないというのに、なんでこんな仕打ちをしてくれるというの?

 このままじゃいけない。

 私はなんとしても対策を立てるべく、こちらの世界でもなんとかできないかと動くことにする。

 こういう時は、兄さんのライバルであるバンドのメンバーの双子の姉である蓮美を頼るべきよね。彼女が覚えているのなら、まだ望みがあるわ。

 私たちの両親が覚えていればいいんだけど、実家はかなり遠いし、こういうことには疎いからどこまで頼りになるのか分からないもの。ならば、近くの友人を頼るべき。

 そんなわけで、私は早速蓮美に連絡を入れる。

 今日の私はバイトは休みだけど、私が把握している通りなら、蓮美も今日は暇のはず。

 メールを入れれば、すぐに返事が来たわ。


「よかった。会ってくれるみたい。とにかく、大学に向かいましょう」


 私はすぐさま服を着替えて、部屋を飛び出ていった。


 大学の分かりやすい場所で待ち合わせをした私は、蓮美がやって来るのを待つ。


「由利!」


「蓮美、よかった来てくれて」


 約束した通り来てくれたので、私は思わずほっとしてしまう。私の予想外の行動を見て、蓮美はなんともいえない表情をしている。


「まったく、どうしたのよ、由利」


「ねえ、蓮美。このバンド名ってわかるかしら」


「えっ? 由利のお兄さんのバンドよね。妹のライバルの」


 蓮美の反応を聞いて、私は思わずほっとしてしまう。よかった、まだ蓮美には認識されている。

 だけど、私の反応を見て、蓮美はどうしたことなのか、よく分かっていないようだわ。変な顔をしているもの。

 そこで、私は昨日今日と体験したことを蓮美に話す。それと、私が現在進行形で体験している別のことも。


「うそ……。そんなことになっているの?」


 蓮美の反応を見て、私はこくりと頷いておく。


「もしかしたら、蓮美もそのうち忘れてしまうかもしれないわ。私は向こうの世界にも行けるから、忘れないだろうけれど」


「うーん。そんなことなんてあるのかしら。それにしても、由利のお兄さんたち、こっちで見つからないと思ったら、そんなことになっていたのね……」


 親指の爪を噛むような感じで、蓮美は悩んでくれているみたい。やっぱり、こういう時に持つべきは友人というわけかな。


「分かったわ。とはいえ、このままじゃあたしもその流れにのまれてしまうかもしれないわね。どうすればいいのかしら」


 蓮美は私に声をかけてくる。真剣に考えてくれているから、私はとても嬉しく思うわ。

 でも、確かに私以外は兄さんたちのつながりがないか薄いから、いずれ忘れてしまう可能性が高いわ。まったくどうしたものかしらね。


「そうだわ」


 私はふと自分が持ち歩いている荷物について思い出す。

 カバンから取り出したのは、私が向こうとのつながりを持つ証であるマイクよ。


「このマイクは?」


「向こうの世界で、盗賊のアジトの中に転がっていたマイクよ。これのおかげで、私は向こうとの間で、意識が行ったり来たりできるの。それに、こちらから物を持ち込むことだって可能だわ。多分、大きさには限界があるでしょうけれどね」


「なるほど……。ということは、もしかしたら、あたしにもそっちの世界のあたしがいるかも知れないのね」


「可能性はあるわね。私の向こうでの名前はリリア。ゴブリンの少女よ」


「ゴブリン?!」


 向こうの世界の話をすると、蓮美はものすごく驚いてしまっている。まあそりゃ、ゴブリンなんていったら、ファンタジー定番の雑魚モンスターだものね。私がそんなものになっているだなんて聞けば、驚いて当然というものだわ。

 だけど、なんとしてもつながりを強めておかないと、蓮美すらも記憶を奪われそうになってしまうものね。やむを得ないわ。


「由利」


「なあに、蓮美」


「今日、泊まりに行ってもいいかしら」


 私の手をがっちり握ったかと思えば、蓮美はそんなことを提案してきた。

 だけど、蓮美だって兄さんたちのことを忘れたくないという気持ちが強いのはよく分かる。なんといっても妹さんのライバルだからね、兄さんたちは。競い合うことで頑張ってきているんだもの。


「分かったわ。眠る時に、私と手をつないでいましょう。なにかあるかもしれないわ」


「ええ」


 そんなわけで、私たちのやることは決まった。

 兄さんの音楽自体は、こっちの世界でもまだ残っているけれど、本当にいつすべてを奪われてしまうか分からない。ならば、できるだけ抵抗するしかないというものだわ。

 あとは、向こうから兄さんたちを連れ戻す方法をどうにか突き止めないと。

 さあ、忙しくなるわ。

 その後の私たちは、ちょっと思うところがあって、家電量販店へと出かけていったわ。

 世界の力に抗って、絶対兄さんたちを取り戻してやるわよ。

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