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朱莉との初デート



明日は朱莉と二人っきりでの初デートか……


侑汰は姉の鈴女以外の女の子と二人で出かけた経験がない。デートと言っても何をしたらいいのか分からないので取り敢えず一般的なデートについて調べてみた。


行先は遊園地やショピングモール、映画館やイベント、あとはそれぞれの趣味に関係する所など… 二人で会話を重ねていき、お互いを理解し合って愛情を育てて行きましょう。相手の好意を感じることが出来れば手を繋ぐなどのスキンシップも大切… か…。 


よく調べていくと鈴姉とやってきたことばかりだな… 

侑汰は鈴女と行ってきた行為がどの程度のカップルに相当するか調べてみると「中級」レベルと書いていた。恋愛ガイドによると「あともう一押し、キスを経て最終段階へ」の位置にいるらしい… それを見て侑汰は冷や汗が出る思いをしている。


そう言えば中学3年の時に鈴女と手を繋ぎ外出している時に、高校生ぐらいの男子から刺すような視線で見られていたことを思い出す。その時鈴女は高校2年生で物凄い美貌… 侑汰はそんな鈴女とかなり関係の深い彼氏に間違われていたことに気付いた。


ま、でもデートって言ったって要は鈴姉と遊びに行ってた時と同じような感じでいいのか… だったら話は簡単だな。相手が姉さんじゃなくて朱莉や沙奈江になるだけのことか… 明日は姉さんの代わりに朱莉と一緒に遊ぶような感じで行けばいいか…



侑汰はこれからの二人との付き合い方を姉さんとの経験を基準にしようと考えた。ただ、それは恋愛ガイドにも書いているようにカップルとして「中級」レベル… 侑汰と彼女達の関係を正確に言うとまだ付き合ってもいない段階。恋愛経験の無い侑汰にはそのことが全く理解できていなかった。



「おはよう、侑汰君。待った?」

「いや、俺もさっき来たとこだよ」


朱莉との初デートの日、朱莉は待ち合わせの場所に約束の5分前にやってきた。初めて二人っきりで会うことになった朱莉は青を基調とした清楚な感じのワンピース姿で顔には薄く化粧がされており、普段よりも可愛い感じをより引き立たせていた。


朱莉は無邪気そうに悪戯っぽく笑みを浮かべていたが、少し緊張している様子も伺えた。朱莉にとっても男の子と二人っきりで一緒に遊んだ経験はあまりない。まして、沙奈江と勝負している気負いもあり、ただ楽しむといった気軽な気持ちでいることも出来ず、落ち着かない様子を隠すことが出来なかった。


逆に侑汰は姉さんと一緒に遊びに行ってる感覚でいるため、いつものような感じでこれと言って緊張もしていなかった。


「それじゃ、行こうか…」


侑汰はそう言って朱莉の方へ手を差し出す… 

朱莉は侑汰の顔と差し出された手を交互に見つめて恥かしそうにそっとゆっくり侑汰の手を取った。その手を侑汰は包み込むように優しく握り二人は歩き始めた。朱莉の手は最初、力なく侑汰に握られているだけであったが、やがて自分から力を入れて侑汰の手を握り返す。すると侑汰ももう少し握る力を強くする… こうして二人の手はしっかりと繋がりそのまま離れることもなかった。


侑汰と過ごす二人だけの時間で出来るだけ関係を深めたかった朱莉は、前の日に恋愛本を読み漁りあれやこれやと作戦を考えていたが、何一つ上手くいきそうな作戦が思いつかず出たとこ勝負の気持ちでやってきた。


そんな時に不意に侑汰から差し出された手… その手を握ることにより繋がる自分たち… 朱莉は昨日まで考えていた色んなことを全て忘れ、今は繋がっている手から伝わる侑汰の優しさだけを感じていた。それは朱莉が今までに味わったことのない何とも言いようのない落ち着きを与えてくれる…


「急がないと電車が来ちゃうよ」


そう言って侑汰は朱莉の手を引っ張って歩く速度を速める。朱莉も引っ張られて歩みを速めるが、朱莉の顔は幸せそうな笑みを浮かべていた。


今日の予定は朱莉がどうしても観たいという映画を見ることが中心で、それ以外の時間は食事やショッピングとなっている。映画が始まるのは3時過ぎなので、取り敢えずモールに行き食事を済ませようとなった。モールに着くといい感じのパスタ屋があったので、ここで食べようということになった。


「いっぱいありすぎて迷っちゃうね…」


朱莉が沢山あるパスタメニューからどれがいいか決めかねていると、


「朱莉だったらトマトクリームソースでこのチーズがトッピングされているのとか好きじゃないの?」


侑汰が朱莉に勧めてきた。朱莉も何となくそれにしようかと考えていたので、侑汰の言葉に従った。


「侑汰君、私が好きなの良く分かったね?」

「結構一緒に居たから好きなものとか何となくわかってきたよ」


侑汰は優しく笑いながらそう言った。その言葉を最初はポカんとして聞いていた朱莉だったが、やがて幸せそうな表情で笑みを浮かべて侑汰の顔をじっと見つめていた。


それから映画の始まる時間までぶらぶらとその辺の店屋を二人で見て廻った。手を繋ぎ歩いている朱莉は凄く楽しそうな表情で、侑汰の手を引っ張ってあっちこっちの店屋を探索していった。今までよりも少し進んだ関係、しかもそれは自分が想像していたよりも心地いい… そのことに朱莉は喜びを感じていた。



そろそろ映画の始まる時間となったので、チケットを買いポップコーンやドリンクを購入して館内に入った。


朱莉が希望した映画は時間を超えたラブストーリー的なもので、なかなか評判の高い映画… らしいのだが、俺にはよく分からない。


「この映画ね、ラストが物凄く感動的なんだって…」


朱莉は目をキラキラさせて俺にそう言いながら映画が始まるのをワクワク顔で待っている。俺はそんな楽しそうにしている朱莉の可愛い横顔をみて少しドキッとした。俺だけに見せてくれる可愛い笑顔… その笑顔に魅了されて思わず見惚れてしまう…


やがて映画が始まり、静寂となった館内に映像が流れ始める。

朱莉は席に着いても侑汰の手を握っていた。薄暗くなった館内で侑汰の横顔を見つめていると胸の鼓動が高鳴り、少し息苦しくなってくる…


(今日は凄く侑汰君を近くに感じることが出来る… 何だか幸せ… 侑汰君、わたし… ゴメン…もう無理…)


朱莉は映画開始5分で寝落ちした。昨日くだらない作戦を夜遅くまで考えていたことが祟ってしまった。

映画に夢中になっていた侑汰だったが、ふと朱莉を見ると頭をふらふらと揺らせて爆睡状態…


侑汰は小さな声で「あかり~」と言って体を少し揺さぶるが朱莉は全く反応しない。この映画をどうしても観たいと言っていた張本人が熟睡していることに侑汰は呆れたが、侑汰は朱莉の肩へ腕を回して頭を自分の肩にもたれさせてそのまま眠らせた。


自分の肩にもたれかかってスヤスヤと眠る朱莉のあどけない様子、髪から匂ってくる何とも言えない甘い香り、侑汰は朱莉という一人の女の子を全身で感じていた。静かに映画を観ているだけなのに鼓動は大きくなり心地よい緊張感を感じる…


結局、朱莉は最後まで目覚めることは無かった。

上映が終了したとき侑汰は横でスヤスヤと眠っている朱莉を… 完全に忘れて一人感動の涙を流していた。


「よかったぁ~ すれ違いばかりで苛々したけど、やっぱ最後は巡り合えるんだぁ~ ぐすん…」


上映も終わったので感動の余韻を残しながらも現実に戻り朱莉を起こす。


「朱莉、起きろ~ 終わったぞ~」


そう言って朱莉の肩をゆさゆさと揺さぶるとようやく朱莉は目を覚まし始めた。


「ん… 何? やっと始まるの?」

「残念ながらすべて終了致しました…」

「…… えっ… え~!」


朱莉は驚き目を丸くして侑汰の顔を凝視すると、やがて現実を把握できて来たのか一気に落胆して落ち込んでいった。


寝ていた本人が悪いのだが、朱莉の落ち込み具合を見た侑汰も流石に可哀そうだと感じて優しく朱莉の肩を抱いて映画館を後にした。


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