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勝負の始まり



食事を終えた後、二人とも服を見たいというので二人に付き合った。女性の買い物の付き合いは姉さんで慣れているが、何故あんなに時間をかけるのかはいまだに理解できない。


二人は店に入ると自分が気に入った服を手にもって試着室に入る。着替え終わって出てくると決まり文句を言う。


「どう? 似合ってると思う?」


普通、男はこんな時に困るらしい。適当に似合ってるといっても女の子は怒るし、似合ってないと言ったらさらに怒る。しかし俺は姉さんにさんざん鍛えられているのでこの辺にはめっぽう強い。

選んだ服のどこがどう似合ってるか、もっとこんな感じの服のほうが似合うといた感想を的確に言ってやった。


言われた朱莉や沙奈江も最初はポカンとしていたが、すぐに納得できたみたいだった。


「侑汰は私が何て言って欲しいかよく分かるね」


沙奈江が不思議そうに言うが、姉さんの服を選んでる時に比べれば楽勝だ。姉さんならもっと細かい感想まで言わされる。



二人が欲しかった服も買い終わりモール内をぶらぶらしていると、いきなり朱莉が俺に言ってきた。


「ちょっと沙奈江と一緒に見たい店があるんだ。侑汰君どっかで時間潰しててくれない?」


「ああ、いいよ」


俺は二人で下着でも見に行くのかと思いその場で二人と別れた。流石に俺も女性の下着売り場に連れていかれるのはきつい。


折角一人になったこともあり、部屋のアクセサリーや小物を売っている店をぶらりと見に行った。俺はこういった店が好きでよく立ち寄る。アイデア商品や奇抜なデザインの物など見ているとつい欲しくなる。


色んな物を眺めて行くうちにふとトンボ玉を吊るしたストラップに目が止まった。丸いガラスに色や模様が入っている。色も斑な感じで濃さが様々に変化している。その変化する色の濃さが模様となり何とも言えない雰囲気を出す。


俺の一番好きな萌黄色があったので取り出そうとすると、近くに赤色と薄い青色のトンボ玉があった。そういえば朱莉には赤、沙奈江には青がよく合ってるな…


折角なので色違いの3つを購入することにした。まるで光の3原色… この3つの光を重ねると白色となり色はなくなる…


買い終わるとすぐにスマホに着信があり朱莉たちと合流した。



「侑汰君は何してたの?」


朱莉に聞かれたけど二人に渡すのはもう少し後にしよう… そう思って適当にぶらぶらしてたとだけ答えておいた。


その後も適当にその辺の店を見て歩いていたが、「ちょっと疲れた… どっかで座って休もう」と沙奈江が言ったのでモールの外れにあるベンチに3人で腰を下ろした。


「結構歩いたな… ホントに疲れた」


ベンチに座ってグダってると朱莉は鞄の中をごそごそと探してスマホを取り出した。


「ねえ、折角だから3人で写真撮ろうよ」


悪戯っぽく微笑みながら朱莉は俺と沙奈江にそう言うと、


「そういえば3人で写真って撮ったことないよね、記念に撮ろうよ」


沙奈江も俺に言ってきた。別に断る理由もないので俺も「じゃ、撮ってみようか」と言うと、朱莉と沙奈江はお互いに目を合わせてから急に近寄ってきて俺と腕を絡ませて頬を俺の顔に近付けてきた。


朱莉が腕を伸ばしてスマホを俺たちの方に向けて自撮りでシャッターを切る。スマホに写ったのは俺を真ん中に二人が笑顔で寄り添うような姿だった。


「うん、なかなかうまく撮れてる」


朱莉が言った後に沙奈江も画像を見て


「いい感じで撮れてるね」


そう言って満足そうに微笑んでいた。


「後でみんなに送るね」


朱莉はそう言いながらスマホに写っている俺たちの写真を見ていた。ただ、その写真を見ている朱莉の表情は嬉しそうに見える反面、どこか懐かしいものでも見るような表情にも見えた。


俺も今がちょうどいいタイミングかなと思い、先ほど買ったストラップを朱莉と沙奈江に渡した。


「これ、二人がいないときに立ち寄った店で買ったものなんだけど…」


そう言って、朱莉には赤のトンボ玉、沙奈江には薄い青色のトンボ玉のストラップを渡し、自分のも見せた。


「俺のだけ買うのも何だかと思って、朱莉と沙奈江にも買ったんだ」


そう言って二人に渡すと、二人はそれを手に持ってじっとそれを見つめ、暫く黙っていた。

あんまり趣味じゃなかったかな? と思って気不味く感じていたら二人はそのトンボ玉を見つめながら


「ありがとう… 凄く奇麗…」


ぼそっとそう呟いた。最初は何か呆然とした様子だったが、やがて大事そうに手で包み込んで俺の方へ顔を向けてきた。


少し潤んだ目で俺を見つめるその表情は、どこか真剣で何かを感じているように見える…

俺は何となく3人でお揃いの物を買おうと思っただけなんだけど、この二人の反応は思いもよらなかった。


「やっぱり侑汰君だ。大事にするね」


「侑汰、本当にありがとう。私も大切にする」


彼女たちの言葉を聞いて気に入ってくれたことは分かったが、なぜそんなに真剣な表情になるのか全く分からない…


その後、彼女たちの表情は元の明るい笑顔に戻り、3人でモール内のショップを巡っていった。

少し人通りが少ない場所に来た時、朱莉が「ちょっとだけ手を繋いで歩こう」と言いだして3人で手を繋いで歩いた。


俺達が小学生なら周りは暖かい目で見てくれるだろうが、今の俺を同じ高校生の男子が見たら殺意の籠った目でしか見てくれないだろう… こんなに可愛い子達を一人で独占するなんて許されるはずもない。


二人と合流してから何かいつもと違う感覚を覚えるが、それが何かは分からない… ただ、何時ものように楽しそうにしている彼女たちを見ると単なる思い過ごしなのかもしれない。


―――――――――



侑汰と離れた朱莉と沙奈江はモールの二階に上がり、手摺にもたれながら一階の様子を二人並んで何となく眺めていた。


「沙奈江、侑汰君 大分変ってきたの気付いてる?」


「分かってるよ。侑汰が私たちを見る目は前とは違う」


「今は私達を特別な女の子としてしっかり見てるよね」


「これでようやく始められるってことだよね、朱莉…」


「そう言う事。そろそろ勝負と行きますか… 沙奈江」


「ホントはもっと前から始まってた筈なのにね… クスッ」


「シスコン侑汰君に普通の男の子の感覚を持って貰うのに時間かかったもんね…」


「でも今はしっかり私たちの方を侑汰は向いている。後はどちらへ向くかだよね…」


「沙奈江、これからはお互いにやりたいようにしよう。私への気遣いも無しでいいよ…」


「それはお互い様だよ、朱莉」


「先に侑汰君の気持ちを掴んだ方の勝ち… 負けたら潔く引く…」


「そして勝負が終わっても私達は友達のまま… そうだよね、朱莉」


「その通り。私が勝っても沙奈江だけは特別に侑汰君と仲良くするのを許してあげるからね… えへへ」


「それはこっちも同じ。朱莉だけは侑汰と遊ぶのを許してあげる… クスッ」


「これから私達はライバルだね。もうこうやって何も考えずに3人で楽しく遊ぶこともないね、沙奈江」


「なんか… ね。正直3人でこうやって遊ぶのもアリって思うこともあるんだけど… これじゃダメなんだよね…」


「このままいてもいずれ先へ行きたいと思うようになって何時かは勝負になっちゃうよ」


「私達は2人で侑汰は1人だからね…」


「明日は学校休みでしょ? 明日3人で最後に遊んで夏休みに入ったら勝負開始でどう?」


「それでいいよ。明日は最後に楽しもうか、朱莉」


「そうだね… 取り敢えず明日侑汰君にこのことを伝えるね」


「それじゃ、そろそろ侑汰のところに戻ろうか…」



二人はもう一歩前進するために決断をした。

二人は決意を持った凛とした表情になっていたが、何処か寂し気な雰囲気も隠せなかった。




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