テスト明け
期末テストが始まったが、朱莉の資料のおかげでテストの感触も上々だ。そしてとうとう最終日を迎えた。
今日さえ乗り切れば多分赤点は無いと思う。3人とも最終日に気合を込めて試験に向かった。
最終日の今日は午前中のみで終了となり、午後は自由になる。さらに明日はテスト明けで学校はお休みとなるので、気分は最高の状態だ。
午前のテストが始まり3科目のテストを受けて今回の期末試験は終了した。出来栄えはまずまずといった感じで赤点だけは無いと自信を持っている。テスト用の資料を作ってくれた朱莉には本当に感謝の言葉しかない。
今日はテスト明けと言うこともあり、当然3人で遊ぶことになっていた。テスト後の解放感で晴れ晴れとした気分で楽しく遊べそう…
今日は3人でショッピングモールに行くことになっている。学校からは電車で30分ほどかかるが、規模が大きく学校から離れているためクラスメイトに偶然合うことも少ないだろうと言うことで決定した。
乗る電車の時間を決めていたので、俺は先に駅へ向かった。二人は少し遅れて駅に向かっている。スマホを弄りながらホームで電車を待っていると、朱莉と沙奈江が俺の近くにやってきた。少しして電車が到着し、知り合いが近くにいないことを確認して二人と合流する。
「やっとテスト終わったぁ~ 侑汰君と沙奈江はどうだった?」
「俺はなかなか手応えあるよ。赤点はないと思う」
「私も… 取り敢えず補習は免れたと思う」
「朱莉はど-なの?」
「私が皆のためにノートまとめたんだから出来たに決まってるでしょ」
朱莉は得意げな表情でエヘンと自信満々に言った後、表情は明るい笑顔に変わった。
「本当に朱莉のおかげだよ。助かった、ありがとう…」
本音で思っていることをそのまま朱莉に言うと、朱莉は嬉しさと恥ずかしさが入り混じったような表情になり、少し上を向いて「そ、そんな大したことしてないよ…」そういって思いっきり照れていた。そんな素直な反応をする朱莉を見ると何か新鮮で可愛く見える。
朱莉の顔はいつも可愛いが、残念ながら性格はそんなに可愛くはない…
みんなテストが終わった安心感とこれから遊べる期待感でウキウキしていたが、どこか表情には疲れが出ているといった複雑な面持ちだった。しかし、駅に到着してモールに入るとその表情も一気に明るくなった。
「取り敢えず昼ご飯でも食べようか?」
俺の言葉に二人も賛同して店屋を探し出した。テストも頑張ったと言うことで、ちょっとお高めのレストランのランチコースを選択する。
料理が運ばれてくると、お約束の撮影開始。「インスタ映え~」とか言って楽しそうに写メをとっていた。
料理を食べながら楽しく話していたのだが、この二人について前から疑問に感じていたことを聞いてみようと思った。
「朱莉や沙奈江ってさ、結構付き合った経験とかあるんだよね?」
沙奈江曰く、
「そんなの当り前でしょ。これだけ奇麗な子を皆が放っておくと思う?」
朱莉曰く、
「中学んときは学校で一番人気だったんだよ。あるに決まってるでしょ」
「それじゃ いっぱいデートとかしてたんでしょ?」
「そ、そんなの… あ、あたり前じゃない… ねえ沙奈江」
「そ、そうよ… 侑汰は私たちのこと馬鹿にしてんの?」
二人とも口では偉そうなことを言っているが、頬が引きつり視線が定まっていない。
「デートってどんなことしてたの?」
なんとなく分かってきたが、楽しくなってきたのでさらに突っ込んだ質問をする。
「そ、そんなもん… あれよね、沙奈江」
「そ、そうよ… 二人でどっかに行ったりとか」
二人は落ち着かなくなってきておどおどしだした。
「どっかに行って何してたの?」
もう楽しくってやめられない。こいつらなんて答えんの?
「そ、そんなもん… き、決まってる…じゃない」
「ゆ、侑汰には刺激が強いから言えないな…」
「こんなこととかしてたの?」
そう言って俺はテーブルの上に置いていた二人の手をいきなり握った。しかもわりかしガッチリと握ってやった。
「ひゃー」朱莉の叫び声
「ぎゃぁ~」沙奈江の雄叫び
二人とも急に体に力が入りビクんとして後ろに仰け反ろうとする。
何となくこんな感じになるのは分かっていたが、あまりの反応の大きさにこっちのほうが驚いた。
今まで彼女たちの様子をなんとなく見てきたが、男馴れしてないことは分かっていた。確かに付き合った人は何人もいるんだろうけど多分中身はすっからかんなんだろう…
見た目はとびっきり可愛くて奇麗、告白してきた男達をあしらうのも慣れている。こういう外面に対して彼女たちは非常に強い。ただし、自分が好きになった人と一緒にいた経験は二人とも殆どない。
すなわち好きになった人の懐に入ると信じられなくなるほど脆い。見た感じでは男を手玉に取るような美女に見えるが、好きな男に触れられると何も抵抗のできない幼い少女になってしまう。実際に二人の中身は経験値をほとんど持たないポンコツである。
二人の驚く様子を見て侑汰は大笑いしていたが、我に返った二人から物凄い目で睨まれている事に気づくと、一気に笑いが止まり縮こまっていった。侑汰には昔の恐怖が蘇っている。
「せっかく侑汰君から手を握って貰えたんだからこのままでいよう」
朱莉はそう言って沙奈江にも手を離さないように言った。
暫くして締めのデザートであるアイスが運ばれてきた。店員の不思議そうな視線を受けても意に介さず二人は手を離さない。
「早く食べよう、沙奈江」
「では、いただきま~す」
「このアイスおいしいね、沙奈江」
「ほんと、侑汰も早く食べなよ」
そう言って沙奈江はにやにやしている。二人に手を握られてどうやって食えっていうんじゃい…
「あれ、侑汰君アイス嫌いなの?」
朱莉が悪そ~な顔をしてヘラヘラ笑って言ってきた。
「そうか、侑汰は嫌いなんだ。仕方ないから私と朱莉で食べてあげようか?」
「そうだね、仕方ないよね~」
二人に好き勝手なことを言われた挙句、俺のアイスは消滅していった。




