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恋の相談



その次の日、侑汰は珍しく自分からある人物のもとへ足を運んだ。

クラスの王子様こと綺羅怜治の所へ。


「怜治、ちょっといい?」


「どうした?」


「少し相談に乗って欲しいことがあるんだけど…」


「侑汰が相談って珍しいな。まさか朱莉と沙奈江たちのこと?」


「いや、違うよ。ただの一般的な恋愛相談…」


「それでも珍しいな。好きな子でもできた?」


「まあ、そんなとこだよ」


「今日の部活後だったらいいよ」


「じゃ、部活終わるまで待ってるから、終わったら電話して」


「分かった、電話するよ」


朱莉と沙奈江のことと言われて一瞬ギクッっとしたが、実際に話を聞きたいのは恋愛そのものだから一応嘘は言ってない…


けど、流石怜治だ。あんまり喋らない俺からの頼みでも直ぐに引き受けてくれる。やっぱ恋愛の相談にはイケメンモテモテで性格のいいこいつに聞くのが一番だ。


ちなみに今日の朱莉と沙奈江は、妙に大人しいというか妙に怪しい。

休み時間など二人でかたまって何やらひそひそ話している。時折「侑汰」という声が聞こえてくる。ワザとやっているのか真面目にやっているのか良く分からないが、俺に関係していることだけは間違いない。


大体俺に黙って相談だったらもっと離れた場所に行ってやらないと真横にいる俺本人には絶対聞こえてくる。狙ってやってるの?



授業が終わって放課後になると沙奈江が話しかけてきた。


「今日さ、帰りに3人で何か食べてから帰らないかって言ってるんだけど、侑汰は大丈夫?」


「今日はちょっとごめん。帰りに約束してるやつがいて付き合えない」


沙奈江は急に表情が険しくなり睨むように言ってきた。


「当然男の子だよね?」


「当然男です」


「じゃあさ、その人も入れて4人で食べに行かない?」


「俺らの関係バレるから絶対に無理でしょ?」


「そうだった… へへっ それじゃ私たちは二人で帰るね」


「ごめんね、明日にでも一緒に行こう。何かあったらラインしといて」


「うん、分かった」


そう言って、「バイバイ」と手を振って沙奈江は朱莉の元へ行った。

それから待っている間暇なので、取り敢えず宿題でもやるかと教室に残って頑張ろうとしたが、すぐに寝ていた。


急にスマホの着信音が鳴ったのでびっくりして起きると怜治からの電話だった。


「部活終わったぞ~」


「分かった。玄関で待ってて」


そう言って俺は急いで下駄箱へ向かった。

それから怜治と一緒に駅の方に向かい、近くにあるファーストフード店に入った。


「それで、相談って何?」


「実はさ、恋愛に関してなんだけど…」


「どんな事?」


「怜治ってさ、彼女のどこを見て付き合おうとか思ったりするの?」


「おっと、なかなか核心を突いてくるね侑汰君。俺は彼女の見た感じの雰囲気と、あとは俺のことを理解してくれるかだね」


「雰囲気って見た目ってこと?」


「ただの見た目だけじゃなくて、大人しそうとか元気そうとか… やっぱ自分に合うタイプだよね」


「あと理解って?」


「やっぱ我儘なのは困る。俺のやりたいこともわかってくれて、多少我慢もしてくれないとね」


「そりゃそうだな…」


「中学の時とか調子乗っちゃって適当に付き合ったらエラい目にあったよ」


そう言って怜治ははははっと明るく笑った。



「ところでさ、変なこと聞くけど… なんで付き合いたいとか思うの?」

聞く奴を間違えたら「病院行ってくる?」と言われかねない事を怜治に聞いてみた。


「う~ん、やっぱり一緒にいたいって思うからかな… 初めに会って話して、もう一度会いたくなって、そしたらずっと一緒にいたいと思うようになる… それと、やっぱり自分だけを見て欲しいと思うしね」


人格者の怜治はそんな質問にもきちんと答えてくれた。


「怜治さ、おかしなこと言うけど俺、女の子を好きになるってことが良く分かんないんだよね… どう感じたら好きになってることになるのか…」


「そんなの簡単だよ、その子の傍に自分から近づきたいって思うんだったらその時点で好きなんだよ」


怜治はいとも簡単に答えた。すなわち、俺が朱莉や沙奈江が傍にいて欲しいと思った時点で好きだということになる。


確かにそれは分かりやすかった。だったら俺も確かめないといけない… 俺は彼女たちの傍に歩み寄ろうとしたいのかどうか…


「こんなことを聞くんだから侑汰は誰か好きになれそうな子でもできた?」


「どうかな… 好きになってみたいとは思う…」


「そうか… そういえばあの二人は最近大人しいけど大丈夫?」


俺は以前、朱莉と沙奈江からの被害を受けていた時、怜治に相談したことがある。


「最近は二人も仲直りして仲良くやってるよ。俺とも普通に喋るし」


「よかったな。でも侑汰はあの二人見て何とも思わないの?」


「確かに凄く奇麗だとは思うよ。でも被害を被ってたからね…」


「そうだったな。それさえなけりゃ惚れてなかったかい?」


「どうかな…」


俺はまさに今、自分からあの二人に惚れてみようと思っている… とは流石に言えなかった。


「とにかく焦らずじっくり好きになれそうな人を見れば? 本当に好きになったら行動したくなるよ」


「そうだよな… なんか変なことばかり聞いて悪いな」


「確かに小学生レベルの質問だな」


そう言って怜治はケラケラと楽しそうに笑った。


「もう一つだけ聞いていい?」


「ああ、いいよ」


「キスってどんな時にする? それとどんな感じ」


怜治はブフッといって飲んでいたジュースを吐き出しそうになった。


「… い、いきなりビックリすること聞いてくるね」


「怜治はキスとかしたことあるんだろ?」


「あるよ」


「何でしたいと思った?」


「彼女の手を握ったり抱きしめたりして距離が近づくと、自然とそうなるよ」


「そんなもんか…」


俺は鈴姉と抱き合ってても今はキスしたいとは思わない。朱莉や沙奈江相手だったら違うのかな?


「それと、キスの感想は… 上手く言えないが、結構いいもんだと思う」


「そうか… いいもんなんだ…」


それから、「彼女が出来たらいろんな楽しい事があるぞ」と言って怜治は自分の体験などを話してくれた。


「今日は悪かったな。ありがとう怜治」


「別にたいしたことないよ。またいつでも相談して」


そんな感じで怜治との話は終わった。



俺は自分のやってきたことが少しおかしいとは思っていたが、今の自分はかなり異常なことに気付いた。確かに鈴姉との関係は普通の姉弟と比べておかしかったと今は思う。それに怜治は抱きしめるとかは結構二人の仲が深くなってからのことだと言ってたが、それぐらいなら俺はいつでも朱莉や沙奈江にできる。しかも何も感じない… 


怜治の話を聞いてて自分のヤバさが結構わかってきた。彼女がいたことないのに変なところで女の子に慣れ過ぎてる。それに鈴姉に女を感じないように頑張っていた変な感覚が今でも残っている。なんとか自分を変えていかないと…


とにかく鈴姉を女として好きな気持ちをなくそう… そうすれば何も隠すことがなくなり、周りを気遣う必要もなくなる。


普通を演じるんではなく本当に普通になれる。



俺はそんな事を考えながら家に向かって歩いていた。

家についてふとスマホを見てみると… なんとラインの未読が50件程度もあった。当然送り主は朱莉と沙奈江。


その内容を確認すると笑いが込み上げてきた。


『家に帰ったら連絡頂戴ね』そんな内容を送って3分後に


『なんで連絡くれないの?』と、送信してくる。


誰も家に戻ったなんて一言も返信してないのに…


冗談でやってるのなら結構笑えると思ったが、真剣にやってるんならヤバい奴にしか思えない。

文章の中身は「何話してたの?」とか、「早く連絡よこせ」とかが多かったが、なんとなく一生懸命送ってきてる様子を想像すると彼女たちの思いが伝わってくる。俺は自分でも気付かないうちに笑っていた。


そして俺は直ぐに彼女たちに同じ内容の返信を送った。


『遅くなってごめん、今帰ってきた。いつも俺の事思っててくれてありがとう…』


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