侑汰の思い
3人は侑汰の家に到着した。
「取り敢えずリビングで休もうか?」
そう言った侑汰に対して朱莉も沙奈江も首をぶるんぶるんと振って侑汰の部屋に行きたいと言った。
侑汰はあまり気が進まないが自分の部屋に二人を招き入れた。
「どうぞ入って。適当にその辺に座ってくれ」
そういって二人を部屋に入れたが、部屋に入った途端、二人は侑汰のベッドへダイブ。
「侑汰君 いいベッドで寝てるね~ 気持ちいい キャハハ」
「なんか侑汰の香りがしていい感じ、このまま寝ちゃっていい?」
二人とも好き放題にやりだした。
そんな様子を侑汰は呆れるような感じで眺めていた。
「飲み物持ってくるけど、何がいい?」
「紅茶がいいな、沙奈江は?」
「あたしもそれでいい」
「それじゃ、持ってくるから… あんまりガサガサと部屋の中を探索しないでね…」
「「分かってま~す!」」
二人そろって元気よく嘘くさい返事をした。
ま、どうせ探られても何も出てこないし… いいか。
侑汰がリビングに降りていくと、急に朱莉は真面目な顔になって沙奈江に話し始めた。
「沙奈江、ちょっとこれから侑汰君に大事なこと聞きたいんだよね…」
「どうしたの、急に…」
「これから本気で私達との関係を考えて欲しいと思ってるんだ…」
「それは私も同じだよ、朱莉…」
「そのためにどうしても確かめたいことがあって…」
「朱莉に任せるよ」
朱莉は冷静に何かを思案している…
暫くして侑汰が紅茶を淹れて部屋に戻ってくると、二人は神妙な面持ちでテーブルの前に座っている。
「紅茶持ってきたよ」
そう言って侑汰はテーブルに置くが、二人は「ありがとう」というが、先ほどまでの明るさはない。
「侑汰君、ちょっと真面目に話していいかな?」
「ああ、いいよ…」
彼女たちの真剣な表情を見て侑汰も真面目な顔をして答えた。
「今日さ… 私たちを慰めてくれるのに初めて私達に触れたよね?」
「そうだね…」
「どうして触れようと思ったの?」
「朱莉と沙奈江を慰めようと思って…」
「それで頭を撫でたりしてくれたの?」
「朱莉と沙奈江は俺の仲のいい友達だからかな…」
「他の女の子にはしない?」
「知らない女の子は絶対に触らないよ。だって失礼でしょ?」
「私たちに触れて何か感じた?」
「特別何も感じないよ」
「自分から私たちを触ってみたいって気持ちにならない?」
「… 正直何とも言えない… かな…」
「侑汰君、今でも私たちのこと嫌い?」
「それはない。最近は朱莉や沙奈江といて楽しいと思うし…」
この答えで朱莉は何かを感じ取った
「侑汰君、正直に言うね… 私と沙奈江は侑汰君のことが好き。今日初めて侑汰君から触れられて凄く嬉しかった。それとね、女の子としてドキドキして興奮した。これが好きだと思っている人と触れ合った時の感想なの」
さらに朱莉は侑汰に少し詰め寄って言った。
「侑汰君は私たちを嫌いじゃないけど好きでもない… 正確に言うとある程度以上好きにならないと思う」
「… そんなこと…ない…」
「侑汰君が本当に好きな人が他にいるんだよ…」
朱莉のその言葉を聞いて、侑汰は自分でも何かを感じた様子で表情が微妙に変化した。
「でもね、私達は侑汰君のことが好き。それを変えようとは思わない。今日侑汰君と触れて余計に好きになった。侑汰君を必ず私達の方へ向かせる。だから侑汰君自身も自分の気持ちをよく考えてみて…」
「… わかった… 」
まったく感情が込められていないような生返事… 侑汰は少し呆然となっていた。
「それじゃ 今日は帰るね。沙奈江、帰ろう…」
「う、うん 帰ろうか…」
そう言って朱莉と沙奈江は侑汰の家を後にした。
侑汰の家から帰る途中
「朱莉、あの話って結局何だったの?」
「沙奈江、今から言うことに正直に答えてね」
「いいよ」
「今日、侑汰君に触れられてどうだった?」
「凄くドキドキして緊張したけど… なんか良かったっていうか… 幸せを感じちゃった」
「じゃ、逆に自分から侑汰君に触れに行った時どう感じると思う?」
「緊張するけど、やっぱドキドキして少し興奮しちゃう」
「侑汰君以外の男の子に触れても同じように思う?」
「侑汰以外に自分から触れにもいかないけど、たとえ触れても何も思わないよ」
「それじゃこんな場合はどう? 侑汰君以外にも気になる人がいる… その人に自分から触れに行ったときは?」
「… なんか… すごく微妙な状況だね。 ん~、もしかしたら何か感じちゃうかも知れないけど… 侑汰に悪いからできるだけ感じないように自分に言い聞かせるかな…」
「それが今日侑汰君が感じたことじゃないかな。私たちと触れ合ってね…」
「どういうこと?」
「本当に好きな人は別にいるけど私達も少しは気になる。それで今日、初めて触れたけどそこまで感情は入らない」
「侑汰が好きな人って、やっぱり…」
「そう、鈴女さんだと思う」
「そんなんだったら私達じゃどうしようもないんじゃないの?」
「… 私の勝手な想像なんだけど… 侑汰君は鈴女さんを本気で好きにならないようにしてるとは思う。だから他の女の子にも興味を示そうとする… だけど鈴女さんからも離れられない… こんな中途半端な状態かな」
「朱莉はどうしようと思ってるの?」
「今の侑汰君は私達のことを少し好きになってきてると思うんだよね… だからその気持ちをもっと大きくさせるしかない…」
「なんかいい方法ある?」
「取り敢えず試してみたいことはあるんだ。詳しくは後で相談しよ」
「わかった。私達は何でもやるしかないもんね」
「侑汰君にはホント手間がかかるよね」
「それはそれで案外楽しいところもあるけどね」
―――――――――
侑汰は二人が帰った後、朱莉に言われたことについて考えていた。
俺は鈴姉が好きだ。それは姉としてだけでなく一人の女性としてもそうなのかもしれない。俺が中学生の時に苦労したことは今でも覚えてる。小学生までは姉さんに抱きしめられてもただ暖かさを感じて気持ちいいだけだった。何とも言えない安らぎを感じるだけだった。
だけど中学2年になった頃から姉さんから女を感じるようになった。姉さんは高校1年で美人でスタイルもよかった。姉さんに抱きしめられると妙な興奮を覚えるようになった。
その時に俺が感じたことは、怖さだった… これが姉さんにばれると姉さんに嫌われる、姉さんの傍で居れなくなる… ただそれだけが怖かった。
だからその事がばれないようにそれからは徹底して周囲に気を配った。一番気を使った相手は姉さんだ。
姉さんだけには絶対にばれてはいけない、この関係を続けるためにも… 俺はできるだけ好きになれそうな女の子を見つけて、自分でその子のことを好きだと思い込むようにした。周りからただの姉さん好きな弟程度に思われるよう努力しようと思っていた。おかげで親友の亮佑も俺が姉さんのことを本当に好きだとは思わなかった。
そして姉さんに抱きしめられてもこれで満足しようと自分に言い聞かせた… おかげで、今では変な興奮も起こらない。
ただ、いつまでもこんな関係が続けられるはずがないのは分かっている。高校に入ったら本当に自分が好きだと思える子を作ろうと思った。 そして鈴姉から少し離れようと…
でも、朱莉に言われて気付いたけど、結局は何も変えられてない。
鈴姉に気持ちがいってしまい、本当の自分を出せなくて周囲には気を遣ってばかりいる。
朱莉と沙奈江の間の席になって、これだけ奇麗な子たちを毎日見ていたら、自分もその内どちらかの子を好きになって、姉さんのことをある程度忘れられるかもと思っていた。
実際は予想外のことが起こって逆に鈴姉を頼ることになってしまったけど、今ではこんな可愛い子たちが俺の事を好きだと言ってくれている。夢にも思わなかったことだ。本当ならこの機会を利用して姉離れしないといけないのに、やっぱりできてない… 俺はまだ姉さんが好きなんだ…
だけど、最近俺も少しだけ変わってきている。あの二人は本当に俺のことを好きに思ってくれている。二人で化粧をしてきたときに感じたけど、俺だけのためにあそこまで頑張ってくれてる姿を見ると妙に心の奥が揺さぶられる。なんとなく目が離せなくなる。俺もできればその気持ちに応えてあげたい…
侑汰は初めて鈴女以外の女性と真剣に向き合おうと考え始めた。




