3人の過去
ここで3人の過去をそれぞれご紹介
最初に四方朱莉
朱莉は小さい頃より可愛い顔をしており、周りの大人からも大事にされてきた。また、女の子連中と話すのが好きでいつも沢山の女の子と共に行動をしていた。明るい性格なので周りの女の子からの人気も高かった。
中学に入りその可愛い顔に魅力が加わってくる。少しずつ女らしさが出てきて男子の注目を集めるようになってきた。中学2年生になった頃から自分の人気の高さに気付くようになり、周囲の男子もやたらちやほやしだした。
そんな男子相手に冗談で可愛い素振りを見せると大うけ…。みんな朱莉に夢中になってくる。なんだかそれが楽しくて朱莉は可愛く見せることに磨きをかけていった。当然男子からの人気もうなぎ登りに上がっていく。
そんな中、ある一人の女の子が朱莉の前に現れた。その子は朱莉といい勝負ができるほど可愛い。最初は似た者同士で仲よくしようとしたが、喋っていると何かに上からものを言ってくる。朱莉は元もと負けず嫌いの性格で偉そうにされるのが大嫌いだった。そしてとうとう彼女と喧嘩して、どちらが人気あるのかを競うことになった。
いかに自分を可愛く見せて男を振り向かせるかを学び、実践していくことで朱莉の人気はさらに上がった。しかし、問題も発生する。人気を得るというのは学校のアイドルになるようなもので、アイドルは彼氏を作れない。彼氏を作ると途端に人気は低下する。
なので朱莉は気になる人からの告白もすべて断った。もはや女の意地である。しかし、3年生の夏休み前になると競争相手の女の子はいきなり競争から降りた。
「はいはい、あんたの勝ちでいいよ。私の負け」
彼女がいきなりそんなことを言った理由は彼氏ができたからである。好きな人ができ、こんな無意味なことでその人と付き合えなくなるなら、こんな勝負は捨ててやると彼女は考えた。
結局、朱莉は勝負には勝ったが好きになった男の子は得られなかった。朱莉は初めてこの勝負の無意味さに気付いて後悔した。中学3年生の終盤に何人かの人と付き合ったが、誰も本当に好きになれるような人ではなく、1ヶ月も持たないで終わる事が殆どだった。
このため高校生になったらこの可愛さで自分が本当に好きになった男の子を必ずものにすると決意した。
次に八条沙奈江
沙奈江は小さいころから元気一杯の活発な少女だった。男の子のような髪形や格好をしていたため小学校では女に見られなかった。中学に入り身長が高いこともあるのでバレー部に入った。沙奈江は部活に夢中になり頑張った。
元もとが奇麗な顔立ちをしていたため、大きくなるにつれてその顔の美しさが際立ってくる。やがて男子が数多く近寄ってくるが、部活に夢中な沙奈江はすべて無視した。男っぽい性格の沙奈江は、しつこく近寄ってくる男に対して怒りを露わにする。
このため普通の男子は一歩引いたところから彼女を眺めるようになった。やがて部活も終了し、沙奈江も恋愛に興味を持つようになったが、以前の行動が裏目に出て優しいが奥手なタイプの男子は近寄ってこない。近寄ってくるのはやたら自信を持ったイケメンのみだった。
沙奈江はどちらかというとあまり顔には拘りはなく、性格、特に優しさに重点を置いて男を見ていた。男っぽい沙奈江はどうしても雑に扱われやすいが、本当は女の子として優しく丁寧に扱って欲しい。
沙奈江の行動は男っぽいが、本当の中身は誰よりも乙女である。
自信過剰なイケメンが優しいはずもなく、付き合ってもすぐに別れるばかりであった。彼女が本当に欲しかったのは大切な人を扱うような優しさと気配りであった。
沙奈江も高校生になったら自分が理想に思っている男の子を見つけて、今度こそそんな人と恋愛したいと思っていた。
ある意味、沙奈江が侑汰に惹かれたのも、沙奈江が求めていた優しさや気遣いを侑汰は上手く与えることが出来たことが決め手になったのだろう。
この二人が高校入学で知り合った。お互いを見たそれぞれの第一印象
朱莉:こんな奇麗な子初めて見た。こんな子が同じ学校に入学したんだ
沙奈江:もの凄く可愛い、女の私から見ても可愛くって抱き締めたくなる。
お互いにその美しさについ見惚れた。自然とお互いに目が合い、笑顔になって話し始めるようになった。
中学時代の話になり、お互い思うような男の子と知り合えなかったことを知って共感し、そこから一気に仲良くなった。
今回は以前のような失敗をしないようにと二人で誓っている。だが、彼女達と侑汰との関係が深くなっていっても二人は果たして約束を守れるかどうかは分らない…
さて、最後に一番の問題児である侑汰の話となる
侑汰の顔はやや可愛い感じではあるがイケメンな訳でもない。中の上といった程度である。性格は優しく温厚であるが、行動的ではない。身長も平均より少し高い程度でこれといった特徴はない。
ただ、一つだけ高い能力がある。それがいわゆる「空気を読む」という力である。相手の言葉や表情、雰囲気から相手が何を言いたいのかが理解できる。この能力があるので姉の鈴女から教わった女性心理をうまく活用できる。
ただ、相手の言葉を聞いてからこちらの対応を考えるのでどうしても受け身になってしまう。なので、侑汰は自分からあまり話しかけることもない。だが、話しかけられた場合は上手く返事をするので人から嫌われることはない。このため友達は少ないのに人からボッチと思われることもない。いわゆる話してみると喋りやすい奴である。
ただ、そのこと自体が侑汰の最も大きな欠点となる。侑汰は気を遣いすぎる、決して我儘を言わない。
極端に言うと自分というものを持たず、常に相手のことだけを意識する。
ただの友人との付き合いだけであればそれで何とかなるが、こと恋愛ではそうはいかない。一方的に相手の言うことばかりを聞いて自分の気持ちを相手に伝えないでいては、やがて相手の不信感を招く。
今の侑汰と付き合った彼女がいたとしたら必ず「本当に私のことが好きなの?」と思うことになる。侑汰の対応はまるで客と従業員である。従業員が客に何かリクエストをするはずもない。
侑汰は大好きな姉の鈴女にさえ同じような態度である。鈴女はそれに気付いて何とかしたいと考えていた時に、侑汰から朱莉と沙奈江の話を聞いた。そして二人と直接話をして二人の意志が固いのも分かった。
だから鈴女は二人に対し、
「どんな方法を使ってもいいから侑汰を強引に自分たちの方に向かせて本当の恋愛をさせて」
と頼んだ。
自分のために傍にいて欲しいと侑汰自身から言わせることが目標である。すなわち、どちらか一人を選んで侑汰が自ら告白することがゴールとなる。その約束を二人は了承した。ただし、ゴールにたどり着くのはどちらか一人だけだ…
この3人はたまたま席替えで隣になっただけだった。
もしも朱莉と沙奈江が争いをしていなかったら…
侑汰が自分から二人に近付くこともなかっただろうし、二人も侑汰のことを気にかけることはなかっただろう…
もしも侑汰が気遣いなどできない人だったら…
二人が侑汰のおかげで仲直りできることもなければ、二人が侑汰のことを好きになることもなかっただろう…
しかし実際は二人が喧嘩をしていたことで、侑汰は二人を宥めるため前に出ざるを得なくなった。その結果として二人は侑汰のことを好きにさせられた。
二人が侑汰に行動を起こさせ、その行動が二人の気持ちを侑汰に向けさせた。
自分が変わればその変化が相手を変えていく、相手の変化はさらに自分を変えていく…
二人の行動が侑汰を変えると、その変化はやがて二人を変えていくことになる…
朱莉と沙奈江は今、侑汰を変えようとしている…




