表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/30

侑汰は撫で上手

侑汰に頭を撫でられ、じっとしていた朱莉だが侑汰が離れると足の力が抜けそのまま床にぺしゃんと座り込んでしまった。顔を上にあげ天井の方を向いて放心状態となっているが、その表情は悦に入りまるで天国の花園にいるような顔をしている。


やがて表情は緩み切ってニヤニヤしながら時折「へへ… へへへッ」と妙な声を出す。

他人から見れば完全にドン引きされるレベルである。侑汰もそんな朱莉を見て「?」な状態。


暫く呆然として事の成り行きを見守っていた沙奈江も最初は驚きで声も上げれなかった。体も意識も完全に固まった。侑汰が朱莉から離れたとき、ようやく意識を取り戻し始め何が起こったのか考えを整理しようとするが、あたふたとするばかりで何も考えられない。


「ゆ、ゆ、侑汰… な、なにした…」


侑汰に問いたいが声にならない… 動揺のあまり視点も定まらない。

あれだけ侑汰に色仕掛けで迫っても何の反応もなかったのに、どうして機嫌を悪くして侑汰に怒った態度をとった朱莉にあんなことをするのか沙奈江には理解できなかった。


そうしているうちに少し落ち着いてきて、今起こったことを考えると… 沙奈江は悲しくなってきた。

侑汰はそんなに朱莉のことを思ってるんだ… 朱莉の方が好きなんだ…


「ゆうた~…」


沙奈江は今にも泣きそうな表情で侑汰の名前を呼んだ。そんな沙奈江を見た侑汰、


「沙奈江」


侑汰は彼女に近付き朱莉の時と同様、沙奈江の頭を胸に抱いて優しく頭を撫でる。さっきの情景を見ていた沙奈江は何の抵抗もしないが、体をビクビクとさせる。


侑汰の胸に優しく抱き寄せられて頭を侑汰の胸にもたれさせ、両手を胸に当てて侑汰に初めて触れた沙奈江は言いようのない幸福感を味わった。そして侑汰に優しく頭を撫でられると心が安らぎ自然と目を瞑ってしまう。

さっきまでの悲しかった思いは一瞬で消えてなくなった。沙奈江の表情は幸せで満ちている…


やがて侑汰が沙奈江から離れると沙奈江も朱莉同様放心状態となる。二人はどこを向くとも視線の定まらない目をしてへらへらと笑っている。今教室に誰か入ってきたら二人の高校人生は確実に終了するだろう…


そんな二人を見て侑汰はしきりに首を傾げている。


「あの二人は何やってんの?」


侑汰はいつも通りにやっただけである。鈴女に対してやっていることを…


暫くして意識を取り戻した二人、いまだに信じられない顔をしているが二人ともトマトより赤い顔をしている。いまだに心臓はバクバクと激しく鼓動している。それに対して侑汰はいたって冷静…


「ど、ど、どうしたの? いきなり… 侑汰君」


朱莉がしどろもどろの状態で侑汰に聞いた。


「だって、朱莉は何か機嫌悪そうだったから宥めたかったし、沙奈江は悲しそうだったから… つい…」


二人の心境は驚愕どころではなかったが、気持ちが複雑になりすぎて何を言いたいのか自分でもわからない。ただ、二人とも全く同じことを考えていた。


まず、侑汰が自分たちに触れてきたことは大満足。

次に抱き寄せられて頭を撫でてもらった感想、


「「あれ、物凄くいい。ホントにいい、最高!」」

でも、問題はこれから…


「「なんで侑汰はあんなに慣れてるの? どうしてあんなに上手いの?」」


朱莉も沙奈江も凄くモテるが実は男の子と付き合った経験は非常に少ない。まして深い付き合いなど皆無であった。抱き締められるどころかまともに手を握られたこともない。


だから何と比べて上手いとは言えないが、彼女たちが感じた満足感が半端ではなかった。違和感なんて全く感じない、無茶苦茶心地よい。

二人は最高の満足感を味わい、最大の疑問を持った。一体嬉しいのか不安なのかよく分からない…


でも二人には侑汰が何で女の子を冷静に抱き寄せたり頭を撫でたりできるのか、それがどうしてあんなに上手なのかなんとなく想像はついてきた。


「きっと鈴女さんだ…」


侑汰は以前、二人に鈴女と普通に抱き合ったりしていると言っていた。


「朱莉、今度鈴女さんに話を聞きに行こ…」

「そうだね… 色々聞いてみたいし…」


二人は物凄く不安な気持ちになったが、侑汰に抱き寄せられた感覚も忘れられない。

二人は完全に侑汰に惚れ込んでしまった。



「侑汰君、ちょっとお願いがあるんだけど…」


朱莉は侑汰に私たちと手を繋いでみてと頼んだ。


「いいよ」


侑汰はそう言っていたって冷静に二人の手を取り繋いだ。

その握り方、力加減、優しく包み込むような感じに二人は仰天した。上手すぎる…


二人は真っ赤になるが手を放したくないので握っている手に力が入る。するとほんの少しだけ強すぎない程度で侑汰は手を握り返してくる。もう二人はメロメロ… 体をくねくねさせて落ち着かない。


「二人ともトイレに行きたいの?」


侑汰が言った言葉で、顔色は赤から真っ赤に変貌し二人は叫んだ。


「「違うから!」」



そろそろ帰ろうとなって皆で下駄箱に向かい靴を履き替えて校舎を後にした。

校門を出るまでは侑汰と二人は少し距離を開けている。さすがに学校の連中にばれると騒動が起こるので3人とも注意をしている。


侑汰が前を歩きその後ろを十歩ほど距離をとって朱莉と沙奈江が一緒に歩いている。

だが、今日の二人の目はいつもとは違う… なぜかギラギラしていた。


今日は帰りが遅くなったため、校門を過ぎてしばらくすると同じ学校の生徒を見かけなくなった。

すると二人はどんどん侑汰との距離を詰めていく。とうとう二人は侑汰の背後にピタリとついた。


侑汰と自分たちの制服が触れ合うほどの距離だ。二人は… どうしても手を繋ぎたくて狙っている。


『朱莉が行ったら直ぐに私も繋ごう』

『沙奈江が行ったら直ぐに私も繋ごう』


二人とも互いの挙動にピリピリと神経を尖らせていた。


『早く行きなよ沙奈江!じれったいな…』

『何ぐずぐずしてんの朱莉、早く行ってよ!』


二人は今すぐにでも侑汰と手を繋ぎたいが、自分から行く勇気がない。なので互いに先に行けと思っている。


いつもなら何かに話しかけてくる二人が何も声をかけてこない。しかも背後にぴったりと付かれている。

侑汰は二人が何をやってるのか訳が分からないので声をかけた。


「二人ともどうしたの? 」

「……」


二人とも俯いてしまい何も言い出せない。あれだけ好き勝手やってきた彼女たちの行動の変化に侑汰は戸惑う。


どうにも様子が変だと感じていたが、話があるなら聞いてあげようかなと思った。


「なんか元気ないけど、良かったら家に寄ってく?」


侑汰からの初のお誘い… しかも家にご招待。二人のテンションは一気にMAX。


「い、いいの? 本当に?」

「行く行く行く、すぐに行こ!」


二人の表情はあっという間に満面の笑みに早変わり。嬉しくて飛び跳ねる勢いで侑汰の背中を押して歩き始めた。


(なんでこんなにいきなり表情がコロコロ変わるのかな…)


侑汰はそんな彼女たちを不思議そうに見ていたが、何か楽しい気分になってきて自分も自然と笑顔になっていった。


彼女たちの笑顔を見てると何となく自分の心も和む…



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ