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女の魅力


その日の帰り、侑汰は彼女たち二人を駅までで送っていってから、自分の家に向かっていた。


何か結局、以前の生活に戻ることになっちゃったな… けど、放っておいたらなんであんなに怒るんだろ?

近くにはいるんだからそれだけでいいと思うんだけどな… 取り敢えず怒ると怖いから怒らせないようにはしよう…


けど、褒めたりちょっと優しくされるとあの表情の変化は何なんだろう… 今度鏡を見せてやろうかな?


そんなことを呟きながら侑汰は家に帰っていった。



一方、家に着いた朱莉と沙奈江は今後の作戦会議を行った。


「朱莉、作戦会議はじめようか…」


「こっちは準備OKだよ。沙奈江」


「今日も思ったけどさ… 侑汰の恋愛オンチは相当ヤバいよね」


「私達、付き合いはじめた初日に完全放置プレイされたもんね、流石にびっくりした」


「とにかく、向こうから迫ってくることは100%無い事だけ理解できた」


「これからどうする?」


「私達なんだから当然女の子の魅力で侑汰にドキドキさせるしかないよ」


「そうだよね、まずは手っ取り早くそっちから行ってみようか」


「でもさ、なんか変だよね?」


「何が?」


「私達って形だけでも付き合ってるんだよね?」


「そう思ってるけど?」


「何で既に付き合ってる男の子をもう一度、墜としに行かないといけないの?」


「侑汰が恋愛にポンコツだからでしょ?」


「だよね~…」


「私も悲しくなってきてるんだからその話はもうやめよ…」


「でも今の席だから結構やりやすいよ」


「そうだね、何せ間に挟んでるんでね」


「どっちを向いても美少女から熱い視線を送られたら、そのうちどんな男だってムラムラくるから」


「そしたらさ、明日はね…… 」


朱莉と沙奈江の会議は1時間以上も続き、ようやく明日の方針が決定された。



次の日の朝、侑汰が教室に入ると… 侑汰の席付近に人が群がっていた。「いったい何事があったの?」と思うが、余りにも混雑して席に近付けそうにない。しばらくその辺でうろうろしていると、朝のHRが近付いてきたのでようやく人の群れが散らばり席に向かうことが出来た。


席に近付いたとき… そこには生徒指導の先生に引っ張っていかれるギリギリ限界レベルまで化粧をした朱莉と紗奈江がいた。


髪形、リボン、それに化粧、普段絶対にしてこないレベルで目いっぱい可愛くしている。それを見た侑汰は流石に見惚れた。

侑汰も驚きのあまり固まっている。

(物凄く綺麗だ)侑汰は普通に驚いた。


そんな様子を見ていた二人は思っていた。


朱莉(どう? こんな可愛い子見たらドッキドキでしょ? 侑汰君ならもっと近くから見てもいいんだよ)


沙奈江(これだけ綺麗な女の子を見たら触れてみたいと思わない? 侑汰だったらいいんだよ)


二人の思惑通り、流石の侑汰も二人を見て動揺している。侑汰の顔は少し赤くなってきている。

その様子を見て朱莉と沙奈江は「捕った!」と叫びそうになった。


それから授業が始まり作戦通り侑汰への誘惑を開始する。二人で侑汰の顔の向く方向でそれぞれ可愛いアピールをする。


侑汰の表情を見ていると時折赤くなったりして二人は大満足、成功を確信した。これで侑汰は自分から近付いてくる!


やがて1限目を終えると… 朝以上に朱莉や沙奈江の周囲に人が集まりすぎるため、侑汰は人ごみを嫌ってどこかへ行く。朱莉と沙奈江は身動きが取れない… しかも噂を聞いた違うクラスの奴らも見に来る。2限目が終わった後はもっと酷い状況となる。こんな感じで、朝から朱莉と沙奈江は一言も侑汰と話せなかった。


この状況はまずいことに気づき始めた二人は昼食を人のいない場所で食べようと考え、授業が終わると侑汰をいきなり引っ張っていき、体育館裏のひっそりとした場所まで連れてきた。


「今日はどうしたの二人とも? 凄く可愛いよ。本当にびっくりした」


「ちょっとね、侑汰君に見てもらおうと思って… えへへ」


「侑汰も綺麗な子が好きでしょ?」

沙奈江がそう言うと


「そりゃ 綺麗な子を見るとドキドキするよ」


二人は思った。いくら侑汰でもこれで私達に特別な感情を持つようになるだろうと…


「流石に朱莉は可愛いからその髪型が一番似合うね…」

「沙奈江は綺麗な顔だから化粧がうまく合って本当に美しく見えるよ」


昨日二人から「優しくしろ」「褒めろ」と言われていた侑汰は、その本領を発揮して彼女たちが褒めてほしいところをピンポイントで当てていき、上手に褒めていく。


(侑汰君、もっと褒めて、もっともっと… きゃぁぁぁ~)


(侑汰が褒めてくれてる… まだまだもっと言って~)


二人は一瞬で充電が完了する勢いで侑汰から優しさエネルギーを受け取っていった。

もう二人はデレデレのデレデレ… もはや他人には見せれないほどに表情は緩んでいる。


もっと褒めてほしい彼女たちはどんどん侑汰にせがんで、満足感を得ていった。やがて二人とも幸せでお腹いっぱいになった。


午後の授業は2人とも放心状態で、やや上を向いてニヤニヤし、時折「へへへ」という妙な声を出していた。


授業も終わり放課後になったが、朱莉と沙奈江はここからが勝負と狙っていた。今日こそ侑汰をどこかへ連れて行き3人だけの世界で誘惑しようと息巻いていたが… あまりにも二人の美しさが学校中に広まり、放課後になると待ってましたとばかりクラスに人が押しかけてきた。


侑汰はそんな人の波に弾き飛ばされ遠くの方へ流されていった。

侑汰は2人の様子を見て、一緒に帰るのをあきらめ小さく「バイバイ」と手を振って帰っていった。


それを見た二人はガックしとうな垂れた。 結局、侑汰の気持ちを確認できることなく、また余計な男子をバカみたいに集めて今日の学校は終わっていった。


2人だけで学校から帰る途中、


「沙奈江、あんたがギリギリまで攻めようって言ったからこんな事になったのよ! 侑汰先に帰っちゃたじゃない!」


「朱莉もノリノリで全力出してきたんでしょ? そこまでやんなくてもよかったじゃん!」


2人の不毛な言い争いはしばらく続いた。


「でもね、侑汰君の様子見てたけど、絶対今日のは効果大だよ」


「朱莉も思う? 私も手ごたえは十分あったと思う。もうちょっと時間があったら…」


「でも、これで私達だけ特別な女の子って見てくれるようになるだろうし…」


「そうだね、収穫はあったよね」


今日の努力は収穫大ということで、二人は結論を出した。実際はどうかわからない…


ただ、別方面に関しては収穫が絶大だった。その日以降、二人に告白してくる人数は3倍となった。


そもそも侑汰の恋愛オンチをとやかく言う前に、自分たちの問題点「侑汰に褒められると正常意識をなくす癖」を直す方がよほど重要なことは彼女たちはまだ気付いていない。



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