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たいっへん、お待たせしました!!
カイル視点です!!!
油断した。
クリスタの浄化はうまくいっていた。おかげで魔物の攻撃も弱くなり倒しやすくなっていた。
だから、クリスタがナニかに引っ張られていくのに反応するのが遅れた。
「くっそ!!」
空を切った手を地面にたたきつける。
目の前には水の底まで透き通った湖。どこにもクリスタの姿はない。
クリスタの浄化は成功していた。その証拠に、湖のよどみは消え、周辺には鮮やかな花々が咲き誇っている。
何もできなかった。
クリスタを守れなかった! 守ると、決めていたのに。
「何してるのよ。早く立ちなさい! クリスを助けに行くわよ」
厳しい声に顔をあげた。アステリアの顔には後悔の感情がにじんでいた。唇をかみしめ、必死に何かを耐えているかのような。
その表情にハッとした。
後悔しているのは自分だけではないのだ。アステリアだって、他のみんなだってクリスタを守れなかったのは同じ。
「ごめん……。クリスタを助けに行こう」
そう言って立ち上がれば、アステリアはニコリと笑った。
「やっと、いつものカイルに戻ったわね。そん風にふぬけていたら、クリスに笑われてしまうわ」
ユキはどこか遠くの方を向いて吠えている。
言葉は分からないけど、その方向にクリスタがいるのはわかった。それに、僕も何となくだけどクリスタの居場所は分かる。
「とりあえず、村に戻ろう。このことを報告して、直ぐに出発の準備をしよう。話はそれからだ」
村ではフィリップさん達が待ち構えていた。
クリスタの浄化の光が村まで見えていたらしい。その光が消えた直後から村の入口で僕たちが帰ってくるのを待っていたようだ。
湖の浄化は無事に終わり、元の澄んだ湖に戻ったことを報告すると村の人たちは肩を抱き合って喜んでいた。その姿に嬉しく思うけれど今はそれどころでは無いと、フィリップさんの家に急いで戻った。
そこで、クリスタが行方不明になったことを告げた。
「今から僕たちは、クリスタを助けに行きます。休んでる暇はないんです」
ユキはずっと同じ方向を向いて、心配げに歩きまわっている。うん。分かってるよ。その方向にクリスタがいるんだよね。
「クリスタの場所は僕とユキが分かります。この前、僕が渡したイヤリング。あれには僕の魔力がこめられているから、どこにいても場所が分かるんです」
なんだか、アステリアが顔を引き攣らせたような気がするけど気のせいだよね。ストーカーって言葉は聞かなかったことにしてあげるよ。
「クリスタが居るのはここから真っ直ぐ東に向かった所。正確な場所は分かりませんが、クリスタは深緑の森にいるでしょう」
そこは、かつて魔王が生まれたところ。そして、レイラ様によって封印されたところだ。




