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結構な距離を歩いたと思う。なにしろ真っ暗すぎて自分がどれだけ進んだかすら分からない。先はまだ見えず、どこにむかっているのかも分からない。
頼りになるのは小さな光。それと、カイルからもらったイヤリング。いまだに、どんな機能があるのは知らないけどカイルからもらったこのイヤリングを身に着けてると少し安心する。
暗くて怖くて不安になりそうな心をそっと支えてくれる。
今、リア様たちがどうなってるのか知りたい。湖の浄化はうまくいったのだろうか。リア様やカイル、他のみんなは無事だろうか。
少しでもみんなに私の状況を伝えたいけど、方法が思いつかない。
ああ、こんな時カイルならどうするかな。私みたいにぐだぐだ悩んでないで、さっさと解決してしまいそう。
「大丈夫。私は私で、できることはやる」
リア様たちは絶対に大丈夫。
もう一度、歩き出した。
しばらく歩いたその時、急に視界が開けあたりは森へと姿を変えていた。
青々とした木々が密集し、草が繁茂している。急な変化に動けないでいると後ろで声がした。
「ルカ! あんまり遠くに行くなよ!」
はーい、という元気な声も聞こえた。
そこにいたのは、知らない小さな女の子とお兄ちゃんらしき男の子。
湖の底にこんな森があるはずがない。
だとしたら、ここはどこなんだろう。湖の底に引きずり込まれて、それから真っ暗な場所を歩き続けて、次は森。
ちょっとまって、頭が混乱する。
とりあえず、これは魔王の仕業ってことは分かる。何をしたいのかは分からないけど。
考え混んでいるうちに場面はどんどん変わっていく。
森は消え、次に現れたのは小さな家。お父さんとお母さん。さっきの兄弟の笑い声が響いている。
そして、聞こえてきたのは少年の叫び声だった。助けて、と叫ぶ少女の声。離して、と抵抗する母親の声。行かないでくれ、と訴える父親の声。少年の顔には絶望が浮かんでいた。
考えなくても分かった。
あの少年が魔王で、これは少年が魔王になった理由。
『初めまして、聖女。ぼくの心を勝手に見ないでくれないかな』
振り返った先には、あの少年が成長したであろう姿。魔王だった。
「……そうね。初めまして魔王。だけど、私は見たくて見たんじゃない。あなたが見せてくれたんでしょう」
精一杯の去勢をはる。
私は無意識に耳のイヤリングへと手をのばした。




