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覚醒の鼓動

 鳥の声が朝を知らせた。いつの間にか時間が経っていたらしい。

 薄暗い世界に朝日が差し込んだ。部屋が明るくなり、なにもなくなってしまった部屋を容赦なく見せつけてくる。幸せだった日々の残骸が、朝の陽ざしに濡れている。

 やわらかな日差しが優しい過去を連想させて、重なり過ぎた思い出が押しよせてくる。


 ずっと過ごしてきた居場所は、もう無くなってしまったんだ。


「お腹がすいた……」


 相変らずに胃が痛い。でも、お腹がすいている。食べた方がいいのか、そうでないのか。


「……食べなかったら、死ぬかもな」


 ぽつりと呟いた。

 自分がどうしようもなさ過ぎて、自分自身が生きることすら許せなくなってくる。

 こんな世界にこれ以上僕は居たいとすら思えない。むしろ、歴史が繰り返されるなら、死んだとしても何も問題ないのではないだろうか。


「じゃあ、死んでみるか?」


 呟いた言葉とは裏腹に、僕は身体を全く動かしたくなかった。

 死んだら楽になるのに、どうしてだろう。ひょっとして、僕は生きたいのだろうか。自殺する気力とか、そもそもこんなに自分の中で言い訳しているのだから、本当は自殺する勇気すらも無いのかもしれない。


 そういえば、義姉はどうしているだろうか。

 手紙から察するに、義姉は帝国へ向かっている。義姉に任せておけば全部が解決しそうな気がする。もし解決できなかったとしても、過去に戻るだけ。また学園にいた日々が戻るのだと考えれば、なんと魅力的な未来なのだろう。


「なんだ。僕は何もしなくていいじゃないか……」


 驚くべきことに、僕は本当に何もしなくてもいい立場なのだ。

 それどころか、僕が加勢しても役に立つだろうか。いてもいなくても変わらない気がする。だって、人形を使うだけなら義姉の方が上手だし、僕の特徴の『純化』魔法があるけれども、それすら最近は曖昧な能力だ。


 なんだ、本当に何もしなくていいじゃないか。なんだこれ、あれだけ苦しみながら考えて、結局は他人任せの選択肢を選んでいるじゃないか。まるで大人に頼りきっている子供みたいだ。自分自身へもっと嫌気がさしてきた。


 それ以前に学園にかよっている時点で子供なのかもしれない。そういえば、僕はどうして学園に通おうと思っていたんだっけ。


「逃げるのも良いと思いますよ」


 義姉の声が聞こえた気がした。ベッドから跳ね起きて、声の方行を探す。

 机の上には昨晩からずっと黙っていたナズナが立っていた。僕はナズナの声を義姉と聞き間違えたらしい。


 ふと起こせた体に疑問を感じた。

 どうして僕は起きれたのだろう。さっきまで何もする気力がなかったのに。

 僕が起きたのを確認したナズナが、話を続けていく。


『逃げることを否定はしません。しかし、逃げて後悔するのが分かっているなら、逃げる回答は間違っています。もちろん、今を重んじて生きる選択肢を否定するつもりは毛頭もうとうにもありません。今とは現実に見えているものであり、未来とは先が分からなくて見えないものです。それぞれに違いがあるなら、それぞれに違った価値があるでしょう。ですから、私は逃げることは否定しません』


 その通りだ。

 駄目だと思ったから、逃げなくちゃいけないんだ。完全な負けの前に、まだ体力があるうちに逃げないといけない。僕がつぶれる前に逃げないといけない。


『しかしながら、逃げることは負けることであり、後ろ指をさされることを選ぶことです。したがって、ずっと負けを背負って生きていく覚悟のある人間しか、逃げることを選んではいけません。 ――『アナタ』は、負けを背負って生きる覚悟はありますか?』


 ナズナの真剣な問いかけに、僕は言葉が詰まった。


「分からない。でも、なにもやりたくないんだ……」


 単純な話だ。失敗をした人を信用できない。ただそれだけの話なんだ。

 僕は、僕自身を信用できない。だから僕はこの世界の続きを生きたくないんだ。


『アナタは馬鹿ですか。そのような意味ではありません。義姉は年齢の割には大人びているアナタが好きだと評価しておりました。しかし私はそうと感じません』

「うるさい! 何がいけないんだよッ! 駄目だと思ったから、これ以上悪くならないように逃げるんじゃないか! それのどこがいけないんだよ!」


 僕は怒りに身を任せて癇癪かんしゃくを叫ぶ。


「あの学園にいた頃の僕の居場所は、あの日々はもうなくなっているんだ! もはや、失ったなんて言葉じゃ済まされない! ゼロじゃないんだぞ、振り切って大マイナスだ! もう最悪な気分だ! 死にたくなるくらいに最っ低だ! あまりにも失望しすぎて、僕は僕を信じられないし、そもそも何を信じたらいいのか分からないし、だから停滞ていたいを選んで何が悪いんだよ! なにもしたくないんだよ! 死にたいくらいに、もう全部が嫌なんだよ!」


『いつも問題を解決してきたアナタは、冷静だと周囲に評価されていました。しかしながら、その評価は私の評価と異なっています。アナタは単に心が冷めていただけです。必死で生きていなかっただけです。それが一番に駄目なことだって、いま叫んでいる事こそがアナタの気持ちが葛藤している証拠でしょう!』


 急にナズナが大声をあげた。ナズナが凄烈に怒鳴り続ける。


『もう駄目だって無能を叫んで、気持ちよさそうに自己憐憫に浸るのは気持ちがいいですか!? 哀愁あいしゅうただよわせた悲しみに、そんなに無意味な同情が欲しいのですか!?』


 それ以上言わないでくれ。もう潰れそうなんだ。


『そうやって悟ったふりをして、全部を諦めて達観したふりをして、それのどこが正しい判断なのですか? 卑屈に生きているだけではないですか! 嫌なら挑めば良いではないですか! 最後まであがいて何がいけないのですか!?』


 ナズナが吼え続ける。


『もういい加減に気付いて下さい! あなたがどんなに駄目だって、どんなに情けなかったとしても、ちゃんと助けてくれる人がいたでしょ!? 簡単にあなたの世界を否定してはいけません! あなたの世界を勝手に完結させないで下さい! あなたはどんな人間になりたかったのですか? 気持ちが擦り切れるほど戦っても、何度も傷ついて癒えない傷をたくさん負って倒れたとしても、それでも立ちあがるのが人間ではないのですか!? 醜くても、みっともなくても、うつむかないで、願いを叫び続けて、諦めたくてもそれでも生きようとするからこそ――、悲しみに崩れ落ちても這い上がるからこその人間なのでしょうが!』


 ナズナの言葉が僕の胸に大きく響き渡る。ナズナの言葉を聞くたびに、僕の中で何かが崩れていくのを感じた。

 怒りが崩れ去る。悲しみも崩れ去る。全てが崩れて、ただただうつろに声が漏れた。


「そうだよ。知っていたよ……。分かっているつもりだったよ、そんなこと……。でも、僕には意思すらあるのかあやふやなんだよ。そもそも、この身体も人間であるのかすら……」


 ナズナが静かに答える。


『意思は決意するものです。そして、身体は人間である必要はありません。人形である私もそうですから』


 ナズナがテーブルの上から飛び降りて、僕のベッドに着地した。ベッドから はずみをつけて跳んで、僕の肩にのっかる。僕の涙をぬぐってくれた。


『こうして、本心で語り合うだけでも良いのです。今日は月が綺麗だとか、ポプラがサボったとか、ありふれた会話をして笑い合うだけでもいいのです。それだけで、わたしたちの心は通じ合います。心が通じ合うなら、人間です。人間であることが存在意義なら、それで良いのではないでしょうか』


 すっと心が軽くなった。心に重たくしかかっていたものが、雪溶けのように優しく消えていく。


「……僕も人間なのかな?」

『はい。正確には、人間になるのだと決意すれば人間なのでしょう』


 僕は冷静に世界を見つめていたつもりだったけれども、本当は冷静に見ようとすらしていなかったのかもしれない。冷静に考えるふりをして、一生懸命考えることによって気持ちに気付かないふりをしていたのかもしれない。


「ナズナ、今から人間になる僕に、居場所ってあるのかな?」

『アナタが生きていると自覚していた場所が居場所ではないでしょうか』

「そっか。じゃあ、さっきなくなったんだね」


 アルフがいなくなり、ユーリとフランが去っていった。義姉も出ていき、ついにはココアもいなくなってしまったのだ。僕の居場所は、僕が悲しんでいる間に全部を失くしてしまった。

 ナズナが考えるように一拍置いてから、優しい声を渡してきた。


『少し訂正をします。正確には移動したと言うべきでしょうか』

「移動?」

『人間とは成長し続けるものですから』


 そっか。それはとても重要なことだ。大切なことを忘れていた。

 僕の中でたくさんの言葉が浮かんできた。心を整理するように、浮かんできた言葉をナズナに呟いていく。


「いま自覚したんだけれどもさ。居場所って、なくなる時があるんだね」

『そうですね』


 意識していないとすぐに消えてしまう。だって、人間は生きていて動き続けて、成長していくからだ。


「居場所っていうのは、他人から与えられると楽なんだよな。善意でくれる場合なら、特に自分に合ったものをくれるし」


 義姉が学園に行かせてくれた。だから僕は学生という身分を享受きょうじゅする事ができたのだろう。


「でもな、その居場所は提供者の状況が変われば気まぐれで家賃は値上がるときがある。だって維持するのも大変だもんな。それはしょうがないことなんだけれども、居場所っていうのは与えられたひとりのためだけのものじゃない。余所よその誰かから いきなり追い出される時もあるし、下手をすれば足蹴にされて利用される時もあった……」


 居場所自体が人間の集まりなら、居場所はいつも動いているのだ。学生が宝を集める課題は、学園長が大魔法の媒体に利用するため。ドラゴンの村のニセ村長のように、突然に裏切って支配しようとするときだってあった。いつもなにげなくある居場所だったとしても、本当は危うくて、常に揺らいでいるものなのかもしれない。


「だから、僕が思っていたよりも、居場所っていうのは絶対的なものじゃなかったんだ」


 最初にアルフがいなくなり、ユーリやフランがいなくなった。義姉がいなくなり、ついにはココアもいなくなった。そうして僕の居場所はなくなっていった。居場所がなくなったから、僕の世界はなくなってしまったんだ。

 だから、僕は世界は残酷なものなんだと思った。それでも僕は――。


「ねえ、ナズナ。ココが出て行ったのはもしかして」

『予測ですが、アナタに失望したのではありません。希望を得るために帝国へ戦いに向かったのでしょう。でなければ、サクラを連れていく理由がありません。アナタを嫌って出て行ったなら、サクラを持っていかないでしょう。なによりも、二人で作った思い出の人形ですから』


 なんだ、思っていたよりも僕の世界は残酷ではないじゃないか。ただ気持ちがすれ違っただけだったんだ。

 そもそも、ユーリやフランだって、僕らから離れたいと思って去ったのではない。ココアも義姉も形は違うけれども、似ているようなものなのだろう。だったらきっと、アルフだってそうなのかもしれない。


 これはまいった。真っ先に行動しはじめたユーリやフランの方が、もしかして僕よりもずっとオトナなのかもしれない。立ち向かいに行った義姉はもちろんだ。


 ココだって、今の居場所を護るため、いいや、次の居場所を護るために戦いに行ったんだ。

 ココがいなくなったのは、前に進もうと思ったから。サクラがいないのは、戦いに行ったからに他ならない。僕の傍にいて面倒をみてもらっている居場所にずっと依存しているのではなくて、今度は一緒に支え合う未来のために出ていったんだ。


 ユーリもフランも、義姉もココも、自分のできることを探して先に出て行ったんだ。自分たちのできることをしたくて、全力で出ていったのだろう。みんな成長していくために。


 ナズナが小さく笑った。


『気付きましたか?』

「うん。やっと分かった……」


 僕はそっとまぶたを閉じる。今日までの思い出が重なっていった。

 真っ暗な部屋で初めてココに出会ったこと。ココを連れて帰った時のアルフの反応。服を作ってあげたら、ココが喜んでくれた思い出。模擬戦争でユーリやフランと戦った日。ポステリーさんに諭されて、初めて「ココ」と呼んだ日の記憶。課外学習で、トランプを使って遊んだこと。義姉と一緒にご飯を食べて笑いあったこと。様々な僕の歴史が溢れ出る。

 真っ暗だった僕の心の内。さっきまで空っぽのがらんどうだった僕の中で、僕を形成していく思い出が次々に鮮やかな色を解き放ちはじめていく。


 その中で特別な色をあやどっているのは、もちろんココとの思い出だ。

 そうか、僕にはみんながいたから、ココがいたから今日まで生きてこれたんだ。


 自覚をした途端に僕の内で何かが鼓動をはじめた。僕の心が息付く音がはじまった。

 不思議なほどに静かな音ではあるが、耳心地の良い鼓動は まるで綺羅星きらぼしを眺めているような穏やかな心地にさせる。

 綺羅星の如く輝いている思い出たちが僕の心の断片になっていく。やっと僕は、僕に出会えた気がした。


 僕は瞳を開く。さっきまで暗い世界に見えていた光景が、今は眩しく感じられた。

 ただ生きるだけなら、ここでぼぅっと待っていればいい。でも、僕はみんなのことを、ココのことを忘れることなんてしたくない。だから、僕は過去に戻ることを阻止しなければいけない。未来を切り開かないといけない。これから生きていく思い出には、みんな一緒の未来じゃないと嫌なんだ。


 だから僕は、僕のできることをしなくちゃいけない。

 僕自身が魔法のような幻想から作られて、まるで嘘から出たような存在だったとしても、嘘でも前に進まないといけない。

 だから、僕は僕として生きていくことを決意する。決意なんて目に見えない不確かなものだけれども、ちゃんと胸の奥に燃え上がっている。僕の意志の根源は魔法であり、造られたものだとしても、この意思だけは本物だ。この決意が仮初めのものなんて、作られたものだなんて思えない。これが僕の意志なんだ。


 さてと、とナズナがほこりを落とすようにスカートをぽんぽんと叩きながら立ちあがった。


『良い目になりましたね。しかし、あなたの気持ちが変わっただけで、あなたの目の前にある世界が変わったのではありません。あなたの世界の見方が変わっただけです。あなたが何を考えていようが、世界に対しては何も影響はありません』


 ですから、とナズナが言葉をためる。


『――戦うのは、ここからです』


 決意のこもった言葉をナズナが言い放った。

 僕は同意して、ナズナに頷く。


 どうして、ナズナは僕にここまで言ってくれるのだろう。このおせっかいさは義姉と似ている気がしてきた。

 そういえば、ナズナは姉が作った人形で、義姉の考えが投影されていた。つまり、ナズナがイエスと言えば、だいたい義姉もイエスと言うことが予測できるというわけだ。義姉の分身と言っても差し支えないのかもしれない。

 義姉は未来を賭ける大切な戦いのために、少しでも戦力が惜しい状況のはず。それなのに、義姉はナズナを置いていったのだ。


 途端に、じんと胸にくるものが込みあげてきた。

 なんだよ、僕は義姉に放っておかれたわけではなかったじゃないか。ちゃんと僕を見守るために、ナズナを置いていってくれていた。思っているよりも愛されているじゃないか、僕は。


「謝らなくっちゃいけないな。いっぱい言い過ぎたから」

『謝る対象は、ひとりで良いですか?』

「もちろん、ココにも迷惑かけた事を謝らないといけない」

『サクラにもですよ。心の基礎は同じなので、追加してあげて下さい』

「そっか。ごめんね、ナズナ。あと、大切なことを教えてくれてありがとう」


 ナズナが目を細めてはにかむように照れた。でも、それは一瞬の間の表情で、即座に真顔に戻った。

 ナズナが小さな手で拳を握りしめ、決意の拳を見つめながら呟く。


『今夜もわたしはあなたの手足となり動きましょう。さて、運命を切り開くのは、助言を渡したわたしではありません。決意した人間の手で切り開かれるべきものです。決して繰り返される過去によってになわれるものではありません』


 うつむいていたナズナが顔をあげる。凛とした瞳と視線が交わる。


『行(生)きましょう、――マスター。頼りにしていますよ』

「ああ、『俺』に任せとけ」


 今日まで何度失敗しただろうか。ココのことを分かっていたつもりだったのに、さっきまで何も分かっていなかった。義姉の気遣いすら、僕は気付かずに無下にしかけていた。

 きっと、いつかまた失敗するかもしれない。それでも、僕はずっと挑戦していきたいと思った。だって、変わろうと思うだけじゃダメなんだ。変わるために、何度失敗してもくじけないって思わないといけないから。


 理不尽が襲ってきても、知らない方が良かったと思える事と出会ったとしても、僕はもう逃げない。ちゃんと全部を抱えて前を向いて前進していきたいと思う。


 ぴょこんと机に一体の人形が飛び乗ってきた。スミレが服を引きずって持ってきていた。


『備えあれば憂いなし よのっ』

「ありがとう」


 スミレからジャケットを受けとる。

 渡してくれたジャケットにはしわ一つなく、かすかに石鹸せっけんの香りがした。スミレが事前に準備をしてくれていたのかもしれない。

 僕は投げるような勢いでジャケットをはためかせてはおる。制服でありながら帝国仕立ての戦闘服だ。身が引き締まる思いがした。


 テーブルの上に、今度は学園長の本と、見慣れた財布が投げ込まれた。

 ポプラがジャンプをしてテーブルの上に乗ってくる。ポプラの手には、自身の身長ほどの紙切れも持っていた。


『マッタクもう。勢いも大切ダケド、準備もしないとネ。買ってきた霊薬も本にイッパイ詰め込んでおいたヨ』

「いつの間に?」

『ずぅっっと不貞腐ふてくさってるあいだにネ。安売りとかアッタし』


 あっ、ジャケットの定位置に財布が入ってない。コイツ、いつの間にか抜き取っていやがった。

 勝手に財布の中身を使うのはどうかと思うが、腐っていた僕のために動いてくれたのだから怒るに怒れない微妙な気持ちになった。


 ポプラが折りたたまれた紙をテーブルいっぱいに広げる。ふわりと広げられた紙は帝国までの地図だった。


『ソレデ、最短距離はドコなのカナ?』


 まるで何かを試すような愉快げな口調で、ポプラが見上げながら言い放ってきた。

 この様子だと事前に解答を調べてきたのだろう。準備がいいやつだ。


 僕は地図で現在地を指差す。そこから帝国まで真っ直ぐに指を伸ばした。


「直線距離で真っ直ぐに行けばいい。地図では途中でがけがあって行けないと示されている。でも、それは商人が荷物を持っていけないだけの話だ。基本的に地図は商人が使うものだから、商人の目線で地図が描かれているからね。つまり、手荷物の少ない俺達なら行けるだろうし、何よりも糸を使えば乗り越えられるはず。そうなると、このルートから先だと――」


 僕は上機嫌に頷きながら聞くポプラと答え合わせをしていった。





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