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ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~  作者: 秋原かざや
第3章 大海原を越えた先に

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SAVE15 そんなこんなで……解決しちゃった?

 前回のあらすじ。

 怪しい視線を送っていた庭師を調査すべく、彼の部屋に向かいました!!

 もう、カインさんにおんぶにだっこですよー!!


 王宮のお庭の片隅に、彼の部屋はありました。

 まあ、ぶっちゃけ、そんなに時間、かからなかったです。

 拍子抜け?


 とにかく、この部屋に入りましょうか。

「よっし、ここはおねーさんにまっかせなさーいっ!!」

 キッドさんはさっそく、鍵を……。


 がちゃ。


 開けるまでもなく、開いた。

 音を立てて、見事に。

「あ、どうも」

 キッドさんが思わずぺこりと頭を下げる。

「え? も、もしかして……」

 思わず突っ込む私。って、ここ、突っ込むところですよね?

「ええ、合ってるよ」

 カインさんが頷いてくれます。良い人だ、本当に。

「うん、庭師、いる。驚いてる」

「捕まえろっ!!」

 私とキッドさん、そしてカインさんが突っ込んで。

「うわあああ!!」

 庭師はあっという間に抑えられたのだった。

 え? いいんですか? これで!?


 怪しいとまでは思ったけど、本当に犯人かどうか確かめるべく、ロープでぐるぐる巻きしてから、話を聞くことにしました。

「で、先ほどは何をしていたんです?」

「テーブルにあるものを、厨房で用意されている料理に入れる……つもりでした」

 嫌らしいと噂の目は、ちょっとたれ目で、ある意味、エロい雰囲気に見える……かも?

 という感じ。

 それ以外はいたって真面目な中年おじさんのように見える。

「除草薬、か……下手したら、死ぬぞ」

 カインさんが見て、告げました。

「でもまあ、鉄壁の内臓を持っている人なら、お腹下すだけかもねー?」

 キッドさんも言います。

「でも、どうしてそんなことを?」

 思わず、私はそれを訊きました。キッドさんもカインさんも驚いている様子。

「ええ、訊いてくれますか? 可愛らしいエルフのお嬢さん……」

 ほろりと涙を浮かべて、庭師さんは語り始めました。


 庭師さんは、隣の国から出稼ぎに来たそうです。

 庭師さんの家は、大家族で、出稼ぎしないと大変な家でした。

 けれど、ここに来るためには、コネが必要でした。

 コネのない庭師さんが、この職を得るには、もっと様々な障害がありました。

 それを解決してくれたのが、隣国の王様。

 王様のお願いを聞けば、ここの職を紹介しようと、持ちかけられました。

 庭師さんは、喜んで引き受けました。

 ここは隣国とはいえ、王様のお庭。それを手入れするだけでも多額のお金を得ることができるのです。

 ただ、庭師さんは知りませんでした。

 王様のお願いが、『王女暗殺』だったとは。

 そして、断ろうにも出来なかったのです。

「家族が、人質に……なっていたのです……」

 そして、仕方なく、除草薬を用意したのだと。


「なんて、王様なのっ!!」

 ハンカチで目元を押さえながら、私は立ち上がる。

「まあまあ、とにかく、事件の犯人発見だし、証拠もここに」

「うんそうだ。後はこのことを王様に報告しよう。そうすれば、クエストが……」

「うんそうだね。でも、そうなったら、庭師さんが可愛そうだわ」

 私は庭師さんのロープを解いた。

「ちょ、サナっち!?」

「報告は、私に任せてくれないかな?」

 真面目な私の視線に、キッドさんは黙ってしまい。

「サナ嬢がそのつもりなら、最後まで見守らせていただくよ」

 柔らかい微笑で、カインさんも頷いてくれた。


 おどおどする庭師さんの隣で、私は王様の前に居た。

「して、報告とは?」

「はい、王女様を狙う犯人を見つけました」

 静かに確かに告げます。

「それが、汝の隣に居る、庭師か?」

 私は王様を見て、首を振る。

「いいえ、違います」

 と。

 後ろに居たキッドさんとカインさんが、驚いている気がする。けれど、私は続けた。

「庭師さんの話を聞きました。隣国から来たそうですね」

「ふむ。彼は隣国の王から頼まれて、雇った者だ。粗末にはできん」

 それはきっといろいろあるのだろう。

「話を聞いたところ、庭師さんはいろいろ大変な家庭を抱えているようです。それを訊いた隣国の王さまが、ここに来るようにと告げられたそうです」

「ふむ、それなら問題ないのでは?」

「そうです、それ『だけ』なら」

 もう一度、王様を見据えて、私は口を開いた。

「ですが、それだけではなかったのです。隣国の王は、庭師さんの環境を盾に、恐ろしいお願いをしたのです。『この国の王女を暗殺せよ』と」

「何だと!?」

 ですが、と私は続けます。

「それはなされませんでした。その前に私達が見つけ、その行為を止めました。なので、彼に罪はありません。問題は、彼にこんな恐ろしいことを頼んだ隣国の王が、問題だと思います」

 一応、そのときに預かった除草薬ですと、カインさんが差し出す。

「けれど、それも彼から聞いた言葉です。決定的な証拠にはならないでしょう。ですが、気をつけてください。私達がずっとここにいるわけではありません。隣国がこの国を狙っていること。それだけ心に止めていただけると幸いです。また、先ほども言ったとおり、彼は事件を起こしておりません。なので、正確には犯人ではありません。これらをどう判断するかは、王様に委ねます。ただ、彼は大きな罰を与えられる者ではないと、これだけは伝えておきます」

 全てを言って、ほっと息をついた。

 全て言ったつもりだ。

 庭師さんは、可愛そうだ。

 だから、私は、そのことを告げた。しっかりした証拠もないことも伝えた。

 この後は王様が……。


「エクセレントっ!!」


 ぱんぱかぱーーーんっ!!

『シルキィキャットのメンバーは、イベントをクリアしました。

 エクセレントな行動を選んだので、ボーナスが加点されます。

 また、新たなクエストが発生しました!!』


「して、サナと申したな? みれば、おぬし、わが娘に似ておるのう?」

 えっと、そうなんですか? 初耳なんですけど?

「実は、隣国から娘を招待したいとの文が来ておってな。先ほどの話が本当ならば、それはとても危険な行為と思う」

「ええ、そうですね」

 万が一があったら、大変だ。

「そこでだ、おぬしにわが娘の影武者を頼みたい。引き受けてくれるか?」

「私でよければ、喜んで」

 と、言った途端、後ろで声があがった。

「わああ、サナっち受けちゃった!?」

「本当に、それ、引き受けるつもりなのか?」

 へ? だって、王女さまが狙われているって……。


 ぴろぴろりーん。

『シルキィキャットのメンバーは、新たなクエストを引き受けました。

 クリア条件は、王女の影武者を演じ、この国に帰国すること』


 ……あれ?

 も、もしかして、もしかしなくても、さっきの……。

「クエスト、だったの?」

「うん」

「紛うことなき、クエストだね」


 なりゆきで、新たなクエスト、引き受けちゃいました。

 ええええ!?

 というわけで、長かった3章も終わりです。

 次は番外編かなーと思っています。お楽しみにー☆

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