SAVE15 そんなこんなで……解決しちゃった?
前回のあらすじ。
怪しい視線を送っていた庭師を調査すべく、彼の部屋に向かいました!!
もう、カインさんにおんぶにだっこですよー!!
王宮のお庭の片隅に、彼の部屋はありました。
まあ、ぶっちゃけ、そんなに時間、かからなかったです。
拍子抜け?
とにかく、この部屋に入りましょうか。
「よっし、ここはおねーさんにまっかせなさーいっ!!」
キッドさんはさっそく、鍵を……。
がちゃ。
開けるまでもなく、開いた。
音を立てて、見事に。
「あ、どうも」
キッドさんが思わずぺこりと頭を下げる。
「え? も、もしかして……」
思わず突っ込む私。って、ここ、突っ込むところですよね?
「ええ、合ってるよ」
カインさんが頷いてくれます。良い人だ、本当に。
「うん、庭師、いる。驚いてる」
「捕まえろっ!!」
私とキッドさん、そしてカインさんが突っ込んで。
「うわあああ!!」
庭師はあっという間に抑えられたのだった。
え? いいんですか? これで!?
怪しいとまでは思ったけど、本当に犯人かどうか確かめるべく、ロープでぐるぐる巻きしてから、話を聞くことにしました。
「で、先ほどは何をしていたんです?」
「テーブルにあるものを、厨房で用意されている料理に入れる……つもりでした」
嫌らしいと噂の目は、ちょっとたれ目で、ある意味、エロい雰囲気に見える……かも?
という感じ。
それ以外はいたって真面目な中年おじさんのように見える。
「除草薬、か……下手したら、死ぬぞ」
カインさんが見て、告げました。
「でもまあ、鉄壁の内臓を持っている人なら、お腹下すだけかもねー?」
キッドさんも言います。
「でも、どうしてそんなことを?」
思わず、私はそれを訊きました。キッドさんもカインさんも驚いている様子。
「ええ、訊いてくれますか? 可愛らしいエルフのお嬢さん……」
ほろりと涙を浮かべて、庭師さんは語り始めました。
庭師さんは、隣の国から出稼ぎに来たそうです。
庭師さんの家は、大家族で、出稼ぎしないと大変な家でした。
けれど、ここに来るためには、コネが必要でした。
コネのない庭師さんが、この職を得るには、もっと様々な障害がありました。
それを解決してくれたのが、隣国の王様。
王様のお願いを聞けば、ここの職を紹介しようと、持ちかけられました。
庭師さんは、喜んで引き受けました。
ここは隣国とはいえ、王様のお庭。それを手入れするだけでも多額のお金を得ることができるのです。
ただ、庭師さんは知りませんでした。
王様のお願いが、『王女暗殺』だったとは。
そして、断ろうにも出来なかったのです。
「家族が、人質に……なっていたのです……」
そして、仕方なく、除草薬を用意したのだと。
「なんて、王様なのっ!!」
ハンカチで目元を押さえながら、私は立ち上がる。
「まあまあ、とにかく、事件の犯人発見だし、証拠もここに」
「うんそうだ。後はこのことを王様に報告しよう。そうすれば、クエストが……」
「うんそうだね。でも、そうなったら、庭師さんが可愛そうだわ」
私は庭師さんのロープを解いた。
「ちょ、サナっち!?」
「報告は、私に任せてくれないかな?」
真面目な私の視線に、キッドさんは黙ってしまい。
「サナ嬢がそのつもりなら、最後まで見守らせていただくよ」
柔らかい微笑で、カインさんも頷いてくれた。
おどおどする庭師さんの隣で、私は王様の前に居た。
「して、報告とは?」
「はい、王女様を狙う犯人を見つけました」
静かに確かに告げます。
「それが、汝の隣に居る、庭師か?」
私は王様を見て、首を振る。
「いいえ、違います」
と。
後ろに居たキッドさんとカインさんが、驚いている気がする。けれど、私は続けた。
「庭師さんの話を聞きました。隣国から来たそうですね」
「ふむ。彼は隣国の王から頼まれて、雇った者だ。粗末にはできん」
それはきっといろいろあるのだろう。
「話を聞いたところ、庭師さんはいろいろ大変な家庭を抱えているようです。それを訊いた隣国の王さまが、ここに来るようにと告げられたそうです」
「ふむ、それなら問題ないのでは?」
「そうです、それ『だけ』なら」
もう一度、王様を見据えて、私は口を開いた。
「ですが、それだけではなかったのです。隣国の王は、庭師さんの環境を盾に、恐ろしいお願いをしたのです。『この国の王女を暗殺せよ』と」
「何だと!?」
ですが、と私は続けます。
「それはなされませんでした。その前に私達が見つけ、その行為を止めました。なので、彼に罪はありません。問題は、彼にこんな恐ろしいことを頼んだ隣国の王が、問題だと思います」
一応、そのときに預かった除草薬ですと、カインさんが差し出す。
「けれど、それも彼から聞いた言葉です。決定的な証拠にはならないでしょう。ですが、気をつけてください。私達がずっとここにいるわけではありません。隣国がこの国を狙っていること。それだけ心に止めていただけると幸いです。また、先ほども言ったとおり、彼は事件を起こしておりません。なので、正確には犯人ではありません。これらをどう判断するかは、王様に委ねます。ただ、彼は大きな罰を与えられる者ではないと、これだけは伝えておきます」
全てを言って、ほっと息をついた。
全て言ったつもりだ。
庭師さんは、可愛そうだ。
だから、私は、そのことを告げた。しっかりした証拠もないことも伝えた。
この後は王様が……。
「エクセレントっ!!」
ぱんぱかぱーーーんっ!!
『シルキィキャットのメンバーは、イベントをクリアしました。
エクセレントな行動を選んだので、ボーナスが加点されます。
また、新たなクエストが発生しました!!』
「して、サナと申したな? みれば、おぬし、わが娘に似ておるのう?」
えっと、そうなんですか? 初耳なんですけど?
「実は、隣国から娘を招待したいとの文が来ておってな。先ほどの話が本当ならば、それはとても危険な行為と思う」
「ええ、そうですね」
万が一があったら、大変だ。
「そこでだ、おぬしにわが娘の影武者を頼みたい。引き受けてくれるか?」
「私でよければ、喜んで」
と、言った途端、後ろで声があがった。
「わああ、サナっち受けちゃった!?」
「本当に、それ、引き受けるつもりなのか?」
へ? だって、王女さまが狙われているって……。
ぴろぴろりーん。
『シルキィキャットのメンバーは、新たなクエストを引き受けました。
クリア条件は、王女の影武者を演じ、この国に帰国すること』
……あれ?
も、もしかして、もしかしなくても、さっきの……。
「クエスト、だったの?」
「うん」
「紛うことなき、クエストだね」
なりゆきで、新たなクエスト、引き受けちゃいました。
ええええ!?
というわけで、長かった3章も終わりです。
次は番外編かなーと思っています。お楽しみにー☆




