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ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~  作者: 秋原かざや
第3章 大海原を越えた先に

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SAVE EX-1 ラナの憂鬱~ご乱心?~

一方その頃ということで、ラナ君のお話です。

ちょっち、過去話もあるよっ!!

 どうしてだ?

 戦争イベントを起こして、勝利をもぎ取るつもりだった。

 そうすれば、我がパーティに箔がつく。また、パーティに称号も付けられるようになる。

 わざわざ拠点を要塞にして、罠も課金アイテムを使って大量に取り付けた。

 パーティメンバーも500レベル以上の者を10人、それ以外を50人集めた。

 最高の作戦も与えた。

 だからこそ、とても優勢だった。

 そんな要塞に、相手はたったの5人で挑んできた。

 相手のパーティ名だと? 所詮、捨て駒になる奴らだ。覚えてやったら、可哀相というものだ。

 だから気にすることなく、作戦を展開していた。

 そう、我らが勝利するのだ!!


「怯む気ないねー」

 たったの5人でやってきた無謀なパーティの一人。

 治療専門のセレスティーナは、思わず苦笑を浮かべた。

「こりゃあ、思った以上に固いな」

 武道着に身を包んだ武道家、アルフ・ローランもため息混じりに口を開く。

「でも、もうすぐミスティ、戻ってくる」

 言葉数少ない武士、早雲銅山そううんどうざんが要塞を見つめながら、そう告げた。

「うん、ミスティが戻ってきたら、一気に行こう」

 膨大な魔力を備えた魔人であり、魔法剣士のラナン・ユエルは、神妙な面持ちで彼女の帰還を待っていた。

 この場に居ない、ミスティ。盗賊の彼女が抜け道を見つけて戻ってくることを信じて。


 しかし、彼らの思いは、敵の周到な罠により、打ち砕かれることとなる。


「ご、ごめんなさい……」

 駆けつけたときには、遅かった。

 セレスティーナが傷だらけのミスティを抱える。急いで回復魔法をかけようとしたが、それはできなかった。そう、もう彼女は戦闘不能だったのだ。

「ミスティ、ごめんね! もっと早く行けば……」

 涙を零すセレスティーナの頬に、ミスティは血だらけの手で触れる。

「いいの。ちょっと無理しすぎちゃったのよ。だって、こんな大仕事、めったにないでしょ? ……ラナン、みんな、一足先にファーストレインに……行ってるわね……」

 そう微笑んで、彼女の体が消えた。残るのはキラキラと輝く残滓のみ。

「……皆、作戦があるんだけど、いいかな?」

 静かにラナンは告げる。口元に冷えた笑みを浮かべながら、そのオッドアイには復讐の炎が燃え上がっていた。

「いいぜ、言ってみな?」

 アルフの促しによって、ラナンは続ける。

「みんなはこのまま、前進してってくれる? 裏からボスの思惑を打ち砕いて」

「ラナンは?」

 心配そうに銅山が尋ねた。

「僕は表で敵を惹き付ける。大丈夫、これくらいどうってことないから」

 ラナンを見送って、3人はミスティの見つけた裏道を行く。

「……ねえ、あれって、切れてるよね?」

「どうだか?」

「それに煽ったの、セレ」

 アルフと銅山がセレを見た。

「だってさー、ミスティがやられちゃったんだよ、むかつくじゃん!! このままクリアしても、ミスティにはお金は入るけど、EXPは半分だし、可哀想だよ」

「だから、泣いた?」

「うん。その身で思い知るといいんだ」

 セレはにこっと、小悪魔的な笑みを浮かべる。

「あれか……『無敗の鬼神』」

「そ、それにボク達、こうして『安全な道』に進んでるわけだし。傍観しちゃってもいいと思うな」

「南無三」

 思わず銅山が手を合わせた。


 気が付けば、要塞は瓦礫の山になっていた。

 何が起きたのか、分からなかった。

 味方はもう、3人しかいなかった。

 煙だけが、今の状況を教えてくれている。

「ねえ、『俺』の仲間をヤってくれたの、君?」

 冷えたオッドアイが、怪しく光る。

「お嬢、逃げてください!」

「ここは我等が食い止め……ぐおっ!?」

 あっという間に、前に居た3人は、双剣の餌食になった。

 残るは、たった一人。

「もう一度、聞いていい? 君だよね? これ、作ったの?」

「……は、はい」

 震える声で、そう答えた。足も手も震えていた。

 気絶できないのは、これが偽りのファンタジー世界だからだ。

 涙が、こぼれた。

 どうして、どうしてこうなった!?

 ただ、自分のパーティを強化したくて、がんばっただけなのに。

「凄かったよ。いろいろ。課金罠も山ほどあったしね」

 ざりっざりっと音を立てて、彼はゆっくり近づいてくる。

「だけど、罠にかかった盗賊を、寄ってたかって倒すのはどうかと思うよ?」

「え? ど、どうして……それを……?」

「さあ? どうしてだろ?」

 微笑んだ。その瞳を細めて、にっと。

「さようなら。悔やむなら、自分の行いに」

 一瞬で、世界が暗転した。



「っていう、凄い人が」

 セレはふうっとため息を零した。

「まあ、いいんじゃない。こういう方が健全よ」

 ミスティは楽しげにその様子を眺めている。

「でもそろそろ止めた方がいいんじゃね?」

 可哀想に思ったのか、アルフが声をあげた。

「仕方ない。相手が相手だから」

 とうさんが目を瞑った。

「サナが、サナが……また消えたっ!!?」

 ファーストレインの町から船で移動する途中で、サナと迷子になった。

 辺りを入念に探していたら……サナは時刻になったので、船に乗っていた。

 それに気づいたのが、サナの乗った船が出港した後。

 翌日、一番早い便で、町に向かったというのに。

「どうして、またクエスト受けちゃうんだよぉおおおーー!!」

 びえええんと言わんばかりにラナは、大混乱。

「もうもう、こうなったら、見つけたら絶対に『エンゲージ』するっ!! 絶対だ!!」

「ちょ、ちょっと待って、本当にするの!?」

「お前、『エンゲージ』の意味を知ってていってるんだよな?」

「わかってるさ!! もともとするつもりで誘ったんだからなっ!!」

 涙目で訴える。

「こんな想いするなら、最初っからすればよかったーっ!! 『エンゲージ』すれば、アイテムなしでも遠距離で会話できるしっ!!」

 ある意味、暴走している。隠しスキルは発動してはいないけど。

「僕のサナを帰せぇぇぇーーーーっ!!!」

 アクアバランの冒険者ギルドで、化け物といわれた男が、泣き叫んでいたのは言うまでも無く。

 果たして、彼は彼女と無事に合流できるのか……それはまた、別のお話。


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