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表現者への演奏家26

奏一さんを待っていて、じっさい会うと。

「え…、奏一さん?」

彼は、翔さんが言ったように目をぎらぎら…いえ。

とてもきらきらさせてこっちを見てきた。

ひとまず近くにすわる。

「あの…どうしました…?」

「やっとゆるしてくれる…の…?」

きらきらというか…ちょっとうるうるしてない…?

「はい…。」

「よかった。ありがとう、れいちゃん。」

…そ、そこまでうれしそうな反応をされるとこちらも困っちゃうんですが…。

「…ああ、それよりも先に、ごめんね。」

「…え?」

「昨日とてもこわがっていたから。

仕事で疲れていたとはいえ、ひとまず昨日は拗ねちゃってごめんなさい。」

「え、あれ拗ねてたんですか!?」

「うん…ん…?

れいちゃん、どうしてそんなにびっくりしてるの?」

「いえまああの…怒ってたんですか…?」

「怒るってほどでは…なかったんじゃないかな。

でも、長い間ずっとお話してくれなかったから、どうして、どうして…?って。

あのとき待ってくれてたの、すごくうれしかったのに寂しくて…かけたものも、突っ返されちゃったから。」

「ああ…すみません。

でも、奏一さん、拗ねたからああいう言い方だったんですか?」

「うん…俺はね…あれくらいわからなかったの。」

「え…あれくらい…?」

「だって…俺も覚えていないくらいずっとだよ?

話しかけようとしても、ずっと心ここにあらずで生返事だったでしょ。

ずっと、ああいう感じの返し方だったから、俺だってちょっとこわかったの。」

言いたいことはわからなくないけど。

でもあんなほどでは…なかった気がするんだけど…?

「そんなにおかしかったですかわたし。」

「ううん。そういうわけではないんだよ。

でも、なにかをきいたのがきっかけだっていうのは、ずっとおもってて。

誤解を解きたいのに、ずっと話…きいてくれなくて。

それに音楽は合わせても、ずっとあんな感じなのはほんとうだったんだ。

4日前くらいかな…それでおれ…音をはずしてね…それで余計に嫌な思いさせちゃったのかと…。」

ああ…奏一さん。

ひと月ぶんの想いが、やや早口に出てきてるのがわかる…。

そんなに誤解してたんだ…わたし。

「奏一さん、ミユキ先輩と話したんじゃないんですか?」

「彼女とは話したよ。定期的に気にしてくれるからね。」

「それって電話ですか?」

「うん。本当は会って話したいんだけど彼女は忙しいようだから。

この間やっと電話出てもらったんだ。

そうしたら、この前のことは自分で君に話すか?ときかれたから。

きっと仕事が忙しくて…結果的に仕事優先になってて、きみを含め色んなところで迷惑かかってるんじゃないかって、相談してたときの話だと思って。

自分から、なんでも話さなきゃダメですよね、だから俺は、あとは君になんでも自分から話しますって言った。

実際に、実はそうとも言っているんだよ、そのあと…。

仕事優先でごめんねって…。」

…ああ、だからか。

ミユキ先輩が言ってた半分の謎は解けた。

それに、ごめんねって謝ってたんだ…。

「じゃあ…、私のこと、迷惑だって話は…?」

「やっぱりきみもそうきいているの?」

「…はい。

奏一さん、仕事以外のことさせられて迷惑してるって。」

「そんなこと、きみはもちろん誰にも言っていないんだよ。

そういうふうにどこかできこえちゃったのかな…。確かにさいきん仕事ばかりだったけど…。

でも、誰にほんとのこと言ってもみんな信じてくれなくてっ!」

あ…うるうるしてる…。

「あ…強い言い方でごめんね…。」

「いえ。奏一さん、泣かないでください。」

「え、ないてないよ?」

「涙でてます。」

「あ…ほんと…ただくやしかったんだ、情けないね。」

「私こそごめんなさい。

奏一さんのこと、いちばんに信じてあげられなかっただなんて、情けないです。」

「ううん…それはいいんだ。

でも…おはなし、ちょっとだけきいてほしかった…。」

なんだか本当に申し訳ない…。

「ごめんなさい奏一さん…。」

「誤解がとけたらそれだけでうれしいよ。」

「はい…もう疑いません。

…ああでもそういえば、あれってぜんぶデタラメに言ってたんですか?」

「即興だけど、適当なことばでは…あった気がするな。」

「じゃあ、うーん…。

わたしもあまり覚えてないんですけど、ほら、急に飲み物出してきたじゃないですか。

あれはなんなの?」

「あれはね、手振りがうまく思い返せなかったんだ。」

「手振り…?」

彼は、手でグラスを持つかたちを作った。

…ああこれ、飲みにでもいきませんかってことか。

「でも、お酒の意味になっちゃうし、紅茶を飲んでる様子じゃいまいち伝わるかわからないし…。

ひとまず、どこかで何かお茶でも飲みながらゆっくり話さない?って言いたかったの。」

なるほど、それは合点がいった。

確かに、あれお茶だったし。

「じゃあ、わすれものは?ハイヒールでいいの?」

「あってるよ。これは俺からしたら…なんだけど。

きみがあんなに高いヒールを履いたのはじめてみたんだ。

それに化粧とか、服装も全体的に大人びていたから、どうしたのかなって思ったの。別の仕事のための貸衣装ではあるだろうとは思ったし、そう確認したかった。そういう演出もあるだろうから。」

「はい、珍しいかもしれないですがただの演出です。」

「そっか…よかった。」

なにがよかったのかはちょっとわからないけど。

安心したのならよかった。

「のこったもの、っていうのは?」

「…おとしもの。」

「やっぱり。ストラップですね。」

「うん。」

「ためになった…?ってきいたのは?」

「それは…。」

ちょっと渋っている。

「ちょっとことばは違うけど、だいじなもの…じゃないの?って。

俺の前に翔がすぐ拾っていっちゃったのも知ってるんだけど。」

「だいじなもの…」

「えっと…きみがすきな子でしょ?このうさぎちゃん。」

「はい。

奏一さんは、ずっとつけてくれてたんですものね…。」

「え…それは…まあ…。

せっかくの記念ではあるから…。」

「じゃあなんであらかじめそう言わなかったんですか?

わたし2台持ちってことも知らなかったし。」

「ごめん…ちょっと…照れくさくなっちゃって…。」

「ふうーん?」

「だ、だってかけるが…。

これをみてすごくいじってくるんだもの…。

かわいーかわいーって…意地悪言って頭撫でようとしてきたり…。」

「だってかわいいじゃない。」

「え?」

「エセラビちゃん。」

「…うん、そうだね。とてもかわいいよ。」

そんなに目を見て、言わなくてもいいのに…。

「じゃあ奏一さん。」

「ん?」

「夢って、なに?」

「ゆめ?」

「うん。

諦めたくない、夢があるんでしょ?」

「…っ」

…奏一さん?

なにそのかおは…。

「教えてくださいよー、奏一さんのゆめ!」

「ゆ、夢なんて当たり障りのないものですっ!」

「あれ?また拗ねてる?」

「拗ねてないっ」

「拗ねてるじゃん。」

「…れいちゃんの、ばか。」

「もー、ごめんなさいってば。

ねー、奏一さん、こっちむいて?」

「…。」

すぐに向いてくれるけど、拗ねたかおもかわいいな…。

でもそのあとにっこり笑ってくれた。

今度こそ、お茶でものんでゆっくり話そう。

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