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表現者への演奏家25

「ん…?高遠黎子?」

「…え?」

不自然な男性の声に振り返ると、

(かける)さん…?」

「ひさしぶり。

は、いいんだけどなに?

こそどろみたいな挙動不審なことやってんすか?」

「いや…べつに…。」

「なんか探してんの?」

「…ストラップ…。」

「…。」

翔さんは引いた顔をしている。

…そこまでの顔しなくてもいいじゃない。

確かに、仕事(打ち合わせ)の合間…控え室で静かにせず、事務所近辺をずっと彷徨いてるってやばいやつかもしれないけど。

「そんなこといったら翔さんだって。

普段はこんなとこより大きな事務所にいるくせに、なにをこんなこじんまりしたところ彷徨いてるんですか。」

「別にいいだろそんなこと。

俺は怪しくなく堂々と来たのここに。

昨日もだけど。」

「きのう…。」

「あ、待合ソファで夕方、無防備に寝てたのも知ってるから。

兄さんに、あれ、はよう襲(食)いな?って言ってやった。」

「…はあ!?」

そもそもこの人、なんで奏一さんと…!?

というか、今の私たちの状況知ってるはずでしょ…??

なにをそんなに呑気なことを…。

こっちはきのう…いろいろ大変だったのに…!

「あのさぁ、そのなんか言いたげな顔もわかるけどさ。

ひとまず俺からもひとことここで言っていいっすか。」

「…なんです…?」

「おそろいのストラップ持つならもっと、

マシなやつにしろよっ!」

……はあ!?

「失敬な!というかなんで翔さんがストラップのこと知ってるんですか!」

「知ってるわ!ひとめ見りゃ目立つんじゃ!あんなん…てかあれなに?

なんのキャラあれ…あのキモいやつなにマジで…

ストラップのくせして無駄にでけえし。」

なにその引いた表情…。

「え…カワイイじゃないですか、

エセラビちゃん。」

「見たこともねえよあんな深海魚みてえなウサギ…どこに売ってたん(デート…魔界か地獄にでも行ったん)?

あれはなに?キモカワ路線ってこと?」

「まあ…一般的には、そうですかね?」

「…で?携帯に?カレシがおそろいのつけてくれないって?気にしてたと…?」

「…色々あったんで、それだけじゃないですけど…(そもそもまだつきあってくれさえしてないようですし)」

「うん。

俺がカレシでも引くわ、恥ずかしい、つけたくねえ笑」

そう笑いながら、翔さんはストラップを取り出した。

「あー!遺失物横領罪!!」

「うるせえわっ!

狭い廊下でスタッフが不幸なもん踏みそうになってたところをわざわざ拾ってやったんだぞありがたいと思え!」

「はあ!?

そりゃどうも忘れものセンターに届ければよかったでしょうが!」

「どこだよそれ。」

「事務室(そりゃどうも忘れものセンターはそこまでが通称)です。それか交番。」

「色々書くだろ(なが…あとネーミングダサ)、手続きがめんどくさい。

でも横領するほど良いストラップじゃねえよこれ。

むしろダストボックスにダンクシュートだな。」

「それを言うならtrash canです。

ダンクシュートも、なんか変だし。」

「いちいち言うことが鼻につく女だなっ」

「あなたこそ、この前は奏一さんとお似合いだとか言ってたくせに」

「あれは音楽が釣り合うって認めただけだわっ

別に付き合うの認めたわけじゃありませーん」

…鼻につくのはどっちなんだろう腹立つなぁ…!

…。

「いや、やっぱり認めてましたよ。」

「だって、本人がるんるんでいる手前真っ向から否定できないだろ…。」

「まあたしかに…?」

「とにかくほら。

これもうおとすなよ。」

「ありがとうございます。」

「じゃ、俺はもういくから。」

…。

「翔さん。」

「なに?」

「…翔さんって、そんなキャラでしたっけ。」

「…いちいち呼びとめてきくのってそういうことなんでしょうかねぇ?」

「うーん…。」

「…にいさんのこと、引っかかってるんだろ。」

「…はい。」



「俺から言わせてみれば、全然普通だったな。」

翔さんはハンバーガーを頬張りながら喋っている。

…なに言ってるのか分かりづらいから、いったん食うのやめろ。

…とは、奢ってもらった手前言えないけど。

…にしても、本当に奏一さんの弟なのだろうか。

こうやってジャンクフードばっかり食べて…もう。

「俺だってバンドで新曲作ろうとすると、スイッチはいるよ。

そういうときたまにメンバーから、目ギラッギラしてるって言われるし。」

「目がぎらぎら…?」

「うん。兄さんなおさら典型的な芸術家タイプじゃん。」

分かりきってんじゃん、そんなこと。

って、もぐもぐしながら言ってたきがする。

「マネージャーさんへのパワハラは…?」

「ん…キサラギさん、退職するとき普通にここで送別兼ねてゴスペバ食ったけど。

高遠はそのとき丁度アイドルとしての仕事おさめだったじゃん?」

「はあ…あの、ゴスペバ…?」

「ゴージャススペシャルバーガー。」

…省略すな。

てかなんだそのネーミングセンスは。

…とは、やっぱり奢ってもらった手前言えないけど。

「まあ普通にあの人、結婚するし奥さんの実家にうつるからって理由だけど。

兄さんもいたよ。にっこにこしてたけど、ちょっと別れ際うるってたな。」

「うーん…あ、それに恋愛とか…なんかもつれがあったって。」

「ああまあ…いろいろあったよ。

あのひとも芸術家のてまえ…その気全くないのにホイホイタイプなのかさ…、

色々あったのが、そもそももつれじゃなくぜんぶ勘違いしたやべえ女の暴走だったって話ここでしてやろーか?」

「…。」

気にはなるけど、その目…同類だと思われてるのかも、いやだな…。

「な、芸能界って闇深いよな。」

「私の目をみて言わないでくださーい。」

翔さんはやっとバーガーをひとつ食べ終わった。

これでまともな話ができる…。

「でも私…ミユキ先輩が嘘を言っているようにも思えなくて。」

「それ所属タレントの総括管理かなんかのひと?」

「はい、管理部の。元はモデルやってたひとで、地元も一緒の先輩なんです。」

「あー…一時期あの、綺麗な女性になったって話題なった(らしい)ひとね。

うんまあ…あんだけ美人なら嘘ついてないんじゃね?」

その基準もどうかとおもうけど。

「じゃあ、なんでこんなにも違う話になってるんですか。

キサラギさんも、奏一さんも…直接ミユキ先輩とお話したそうなんですよ?」

「んじゃきくけどさ。

…それ、ほんとにあったはなし?」

「ミユキ先輩が言うんだから…ほんとにあったはなしでしょうよ。」

「ちがうちがう。

そのミユキねーさんが、

ほんとに、会ったの?ってはなし。」

「会った…?会わなきゃ話できないじゃない。」

「実は、間接的にきいてた(またぎぎ)とかさ。

…それか。」

翔さんはスマホを取り出した。

「これで話しただけだったりしない…?」

「メッセージや通話…ってこと…?」

「そ。今やビデオであってもこの中でなら誤魔化しきくんだよ。」

「……」

「はは。」


うそだと、おもってるだろ…。


「な、このせかいって闇深いよな。」

「私の目をみて…言わないでくださいよ…。」

翔さんはもうひとつのバーガーを食べはじめる。

また振り出しに戻されてしまうらしい。

…ってか何個めだ。

奏一さんのこと言えないくらい大飯食らいなんだなこのひと、も。

「あのっ」

「ん?」

「でも奏一さん、昨日変だったんです。

変なことばっかり言って、話にすらならなかったんですよ。」

「たまにそーいうことあるよな、あのひと。」

ああ…そこは共感するんだ。

「このまえもさ、兄さんにバンドの音きかせたんだけど。」

「はあ…(そもそもこのひとのバンド内の担当がわかってない)」

「最初、深入りすんのも良くないって言いたかったのかと思ったけど。

はじめのおとが、それぞれつよく出ていて、いいねぇ…

確かに、君たちは最強だよねぇ…だって。」

「はじめのおとが、それぞれ…?」

「そうそう、色々わかんないんだけどさ、

まず…俺も それぞれ がよくわかんなくてさ、

どこが それぞれのはじめ なのかきいたのさ。

そうしたら、どうやら…。

まあ分かりやすく言えば、言葉は文にすれば切れるところがあるだろ。

そのいちばん最初の音だけのことを言っているようなんだよ。」

「…あの、やっぱりバーガー食べてないでちゃんと話してください。」

「ん。」

言うと素直にきいてくれた。

…兄弟は、たまにこういうところもある。

「俺たち特に目ギラッギラして作ってたのがさ、

歌詞よ。もう今回はアツいロックてきな歌詞にしたくて。」

「歌詞…。」

「それも全く気づかなかったんだけど。

あとにして、わかったことがあったんだ。

間の切れ目と…あとはやっぱ大事なのが頭文字。」

「はい…」

「あ、あった…歌詞カード持ってたわ。

ほら、ここね、つなげてみ。」

「…。」


オレ、たchiさiキyoう


「俺たち最強

って、なってたんだよ。

なあすごいだろ?頭文字(と若干の区切り)繋げたらそうなってたんだぜ!?」

「…へえ。」

「なんか反応うっす…。」

「…まあ…すごいですね…。

それに気づいた奏一さん…。」

「まあ…そうなんだけどさ…。」

「…。」

「…」

…ほか、なんか言いたいことないわけ?

と、翔さんはまたバーガーを食べはじめた。

聞く気があるのかないのかわからない。

「わすれものとかのこりもの…はハイヒールとストラップのことかな。」

「ん?」

「でもその前に急にのみもの出してきたのもわからないし…やっぱり意味わかんないです。」

「ん…。」

翔さんも食べながら一緒になって考えてくれてるの分かるんだけど。

「結局どうなったのその会話。」

「実はわたしおそろしくなって逃げちゃって…。

だって…仕事でおかしくなっちゃったのかとおもって咄嗟に。

ほら、あの時間やけに薄暗いし、あの廊下…。」

「ん…?まあそれはあとでいいけどさ。

最後言ってたことくらい覚えてないわけ?」

「…うーんと…。

ふたつめに、ずっとつけてある

とか、なんとか。」

「ふたつめ…?」

「はい。」


…。


「…それさ、ふつうにストラップのことじゃね?」

「はい?」

「だって俺がみたときふつうにつけてたし。

それで、なんじゃこりゃ…ってシュミ疑ったんだもん俺。」

「…シュミって…。

いや私が見たときは外してましたよ。

それか実はわたしみたいに落としてたのかな…。」

「…ん?そりゃあれだよ?

仕事用のにはつけるわけないじゃん。」

「仕事用?」

「え、しらないの?

あのひと携帯2台持ちだよ?」

「え!?

…でも、同じような機種2つ持ったらわからなくないですか?」

「うん、てか結果てきにあれまったくおなじなんよな。それ俺もきいたんだけど。

半分は仕方なくて半分はドジね。

まず機種はたまたま同じのが支給されることになってたらしい。

で、そのとき兄さんが仕事わりと忙しくてさ、はやく手元に替えたの持たなきゃいけなくて、とりあえずキサラギさんにね…適当にえらんでおいていいよー^ ^

って言ったら、

ああなった。」

「ああ…まあ…無難な色ですし。」

「俺なら黒じゃなくて赤にしたわ。」

仕事を赤にするならそれはそれでばか。

もう…どっちもばかだなぁ…。

「とりあえず、奏一さんと話をしてきます。

ごちそうさまでした。」

「おい高遠黎子っ…兄さんも忙しいんだから終わるの待ってからにしろ」

「だって奏一さんこの時間ぐらいからお昼休みだったはずだから!」

「はあ?

てか、ごちそうさま以前の感謝はねえんか…。」

「あざっす!」

「おい…。」

そこに愛はあるんか。

っていうまたしょうもないボケがきこえた気がしたけど、気にせず店を出て走り出した。

変なひとですね、そうくんは。

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