悪徳商会編③
怒号が響くーーー
「なんだてめえら!」
「メッセ商会令嬢の拉致及び脅迫の罪でございます」
突然グランツ商会に入ったガサ入れ。
逃げ出そうとした商会の連中は
とんでもない動きをする
謎のメイドにより全員捕縛され
グランツは罪状をつきつけられる。
「家宅捜査だ。」
眼鏡イケおじ執事を筆頭に
衛兵が完全に包囲。
結果、グランツ商会からは
数多くの不正契約が発見される。
「ふざけやがって!
なんの証拠もないのに
何が拉致脅迫だ!」
そこへ
コツンー
コツンー
一定の足音を響かせ
ゆっくり近づくその影。
「う!……うわぁ!!なんだお前!」
現れたその最強すぎる悪役令嬢の威圧に
グランツは一瞬で腰を抜かす。
「……証拠は、こちらでございますわ」
令嬢の右手に握られたのは
この街のカフェで手土産用に売っているクッキー。
そこには
【ナミです。娘さんに私は幸せにしてもらいます】
という謎のメッセージ。
「はめやがったな!てめえら……!」
「こ、これが噂の」
「……冷酷非情の暴君」
「ヴィオラ・エルデシュタイン侯爵令嬢!!」
扇が閉じる。ピシッ!
「ワタクシの街で不正は許しませんわ!」
グランツ商会の悪事はこうして
白日のもとに晒され終わりを迎える。
「え……えっと、どゆこと?」
お昼すぎにやっと現地に現れ
唖然とする私に、ルチアは
「あーなんかウチらを拉致して脅迫したらしいよ♪」
ニコニコしてるルチアは執事とメイドに挨拶。
優しい執事だけは答えを教えてくれる。
「要するに、しっぽが掴めないから
別の容疑で捕らえて
家宅捜査する口実を作ったわけです。」
あー……
はいはい、
なんかドラマとかで見た事あるそれ。
え?
つまり?
ということは?
もしかして……
ルチアちゃん
……わざと捕まった?!
私にウインクしながらペロッと舌を出した
この詐欺師は私から逃げるように
ヴィオラ様の元へ駆け寄る。
最初からそのつもりで調査に来てたのか。
敵を騙すにはまず味方からってか。
ナミちゃんは何もしなくていいよって
ほんとに、何もしなくてよかったんだ。
私が手土産に買ったクッキーを
わざとグランツ商会に、忘れさせて……。
その夜ーーー
無事事件は解決を迎え
屋敷に戻った私達。
そこで、私はヴィオラ様に呼び出される。
ヴィオラ様とルチア。
そして呼び出された私。
え、なんかヴィオラ様
めっちゃ私の事睨んでる。
ついに、役に立たなさすぎてクビか?!
たしかに、ほんとに、
何の役にもたっていないから何も言えない!
「ナミ。正直に答えなさい。」
「は、はい……?」
「勇者候補というのは
異世界から女神の加護をうけて召喚されます。
特別に強いスキルを得る代わりにその分
デメリット、失うものがあります。」
「は、はい……」
何を言われているのか理解ができない。
「つまり、"スキル"を得ていないナミは
失うはずだったものを失わずに所持している」
「……失うはずだったもの?」
何もない私に、そもそも失うものなんて……?
「あなた、転生前の記憶がありますね?」
「え!」
まさか!
「……ええ。勇者候補はもれなく全員」
「転生前の世界の記憶は失われて召喚されるのです」
……まさかの事実!
「そ、そうなんだ……全然わかってなかったです」
「ナミ。このことは他言無用です」
「これって……そんな何かやばいんですか……?」
いや、でもそうか
言われてみれば
私の知るアニメやゲームの
異世界転生者が無双するのって
転生前の記憶があるからって理由は
たしかに大きいはず。
「勇者は魔王を倒すかも知れない。」
「王様は国を統べるかもしれない。」
「しかし、そんなものでは済まされない」
「異世界の知識を持った、あなたは……」
「この世界の常識を全てひっくり返す
可能性を秘めているのです!」
……私にそんな、可能性がーーー!!!
突然の告白に正直ショックを受ける私。
他の勇者候補は記憶がなかったんだ……
改めて言われてみればたしかに納得。
料理も商売も、この世界にはないことを
私はたくさん知っている……!
それをこの世界に、伝えることができるんだ。
ーーー正直、何も出来ない自分が嫌だった。
戦えないし、コミュ力もない。
すぐビビるし、調子に乗って失敗はするし。
私、ほんとに、ここにいていいのかな……
本心ではそう思っていた。
だからーーー
こんなに嬉しいことはない。
私もみんなの、役に立てるかもしれないんだ!
私は跪き
改めて
ヴィオラ様に忠誠を誓う。
「わかりました!
正直この転生前の記憶がこの世界で
どこまで役に立つかわかりませんが
必ずヴィオラ様のために
この力を使うことを誓います!」
「ナミ。改めて我がエルデシュタイン家へ
正式に迎え入れるわ。」
「ありがとうございます!!」
「ナミちゃん!良かったね♪」
「ルチアちゃん!」
ルチアと抱き合いながら私は
思わず泣いてしまった。
私に生きる道をくれた。
なんとかごまかしながら
無理矢理取り巻きモブとして
今まできたけど……
これで
この世界で頑張ってみようと
やっと私は
心から思えたのだ。
読んでいただきありがとうございます!
もし少しでも面白いな、
続きが気になるなと
思っていただけましたら
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