愛憎の輪舞編②
シンシアは長期休暇を取っていた。
結界によりエルデシュタイン領内は安定しており
護衛としての仕事がほぼ無かったのと、
アビゲイルに手も足も出なかったことによる
自分自身の鼓舞のため。
休暇中は教会のエドの元で鍛錬に明け暮れていた。
「はっはっは!もう僕より強いよ!」
「…まだまだでございます!」
「ストイックだねぇ…まぁ、それでこそ君だけどね」
まさかヴィオラ様と同格の者が現れると思っていなかった。
あんな屈辱は二度とごめん
まだまだ、自分は未熟だ……。
シンシアはさらに高みを目指す。
「シンシアさーんっ♪」
「やほやほ〜」
今やエルデシュタインの財政を担う名コンビとなった
仲良しコンビの登場である。
「……ナミとルチアですか。何の用でございますか」
「ここに居るって聞いたからちょっと顔見とこうかなって」
「旦那様もお元気そうですね♪」
「はっはっは!シンシアがゆっくりさせてくれないんだ」
「……旦那様意地悪でございます」
「クスクス」
「はっはっは!」
「ヴィオラ様はお元気でございますか?」
「うんうん♪元気元気〜」
「毎日アビゲイル様が来るので相手大変そうだけどね♪」
「でもなんだかんだ楽しそうだよね〜」
「何かあれば連絡はください……それより」
シンシアの目が鋭くなる
「……あの写真の件……ヴィオラ様を使っての
商売のようなものはいかがなものかと思います」
「……あれはまぁ商売というか」
「布教活動みたいな?」
「……アビゲイルはまだしも……
なぜヴィオラ様まで……何だかふしだらでございます」
「気にしすぎだよシンシアさん〜」
「ふんすっ」
アビゲイル様とヴィオラ様のブロマイド写真を使った
布教活動(推し活)はものの見事に大成功。
領地以外や他国では
教祖のアビゲイル様がやはり強いが
エルデシュタイン領内では
圧倒的にヴィオラ様推しが多い。
写真を持ち歩いて派閥をアピールする推し活民が急増。
黒派(アビゲイル様)
紅派(ヴィオラ様)
なんて呼び名で大盛況。
派閥がふたつあることにより対抗意識が芽生え、
競い合って売上は倍々の相乗効果。
3つ目のブロマイド写真ができた頃には
即日完売で暴動が起きかけたほど。
実際売上の半分は教会とエルデシュタイン領に
落ちているので布教活動であることは間違いないが
ごめん正直めちゃくちゃ儲かってる……。うん。
「シンシアさん、そんなこと言って
ヴィオラ様の写真ちゃっかり持ってるんでしょ♪」
「……そ、それは!
主に忠誠を誓った者として当然でございます!」
「それそれ。みんなそうだよ同じ気待ち〜♪」
「……むー」
くく。やっぱりなんだかんだ
ヴィオラ様が大好きなんだよね。みんな。
「あらあら〜娘達が来てるじゃない〜」
「奥様〜♪」
「ママ〜♪」
「魔力尽きたので遊びに来たのよ〜」
シータの今の仕事はもっぱら
回復魔道具アイテム【ポーション】に
ひたすら光魔法を付与していくという仕事。
このポーションを持ち歩くことにより
怪我もみるみる治ってしまう。
ちなみに解毒などの状態異常治癒バージョンもある。
みごとに魔道具自体の普及も進んでいる。
「うちの教祖は毎晩ヴィオラちゃんとこ行ってるのね〜?
毎日ベロベロに酔っ払って帰ってくるわ〜♪」
なんて教祖だ。ヴィオラ様に怒ってもらわなきゃ。
「そういえばクロウは隣国へ行ってるのですか?」
「うんうん。魔王にやられた例の隣国に潜入してる〜」
「シュガーが一緒に行って向こうでマーキングして
帰って来てるからいつでも
転移で行けますよシンシアさん。」
「剣聖の顔を見たくないので嫌でございます」
「クスクス」
リーベの結界も安定しているし、
みんな順調に活躍している。
しばらくは安泰かなと思っていたが事件は起きる。
信者の素行がどんどん悪くなってるのだ。
まさにマナーの悪い推し活民。
「黒猫ショップでまた揉め事です〜」
「紅派が教会に入らずヴィオラ教を推奨しだしています」
困ったことに素行が悪いのがどうやら
紅派(ヴィオラ様派閥)なのだ。
黒派(アビゲイル様教会)が被害を受けているよう。
「1度話し合いが必要かもね」
「ヴィオラ様に相談しよう」
「信者達が暴れるというのは
ヴィオラ教の顔に泥を塗るようなものでございます」
だよね。
対策は必要だね。
「よし、ヴィオラ様に少し時間作ってもらおう」
この事件。
ただの暴徒化では
すまなくなる。
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