勇者候補VS魔王編③
すこし昔のお話。
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私の名はシンシア。
このギルド【漆黒の翼】で
冒険者をしている。
S級に昇格した私にはもう
相手になる魔物も人もおらず
なんだか物足りない日々を過ごしていた。
国の騎士団から勧誘もされたが、
あまり乗り気にはなれず
今後の人生をどうするのがいいか
悩んでいた時にその人に出会った。
熊ほどもある大きな体。
だが、まるで少年のような
輝く笑顔で私を見ている。
この地の領主であり、
伝説の勇者こと
エルデシュタイン侯爵であった。
「はっはっは!君の噂を聞いてね!
どうだい少し手合わせしてみないか?」
これは面白い。
この世界で最強と言われた男とついに
やり合える日が来るとは。
結果は
10秒ともたなかった。
何をしようとしても全て攻撃をする前に
止められてしまう。
何もすることが出来ず私はその場で倒れ込んでしまった。
【心眼】のスキルをもつこの伝説の勇者は
数秒先の未来が視えているという。
「いいね君!うちの娘の家庭教師を探しているんだよ」
私はその数分後にはギルドの冒険者を辞めていた。
さらに数日後
まだたった12歳の
勇者の娘にも
私は敗れることになる。
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私の名はセバスチャン。
魔法学園で教師をしている。
国の騎士団と魔法使いは
国としての武力の象徴であり
その一角を担うことになる
この魔法学園で教鞭をふるうことに
私は誇りを持っていた。
そんな時
勇者候補が入学してきた。
光魔法を使うというその者に
私は基礎の魔法を教えることになるが
この者は光魔法以外はからっきしであった。
10人召喚されたという勇者候補の中でも
光魔法の回復に特化したこの者は
一人一人を回復するのではなく、
自分自身の周りにいるもの全てを回復してしまう
とんでもないスケールの魔法使いであった。
ひとつの街程もある魔法学園。
そこにいる人間全てを光魔法で覆ってしまった
そのあまりにも強大な力に
私は心底心酔してしまったことを
生涯忘れることはないだろう。
気づいた時にはその勇者候補は
勇者と呼ばれる存在になっており、
私はその従者として仕えることになる。
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ワタクシの名は
ヴィオラ・エルデシュタイン。
周りの人間はワタクシのことを
【勇者の娘】と呼ぶ。
お父様とお母様は
伝説の勇者と呼ばれる
とても立派な人達。
尊敬しているし、誇りに思う。
ただ、
ワタクシには
ヴィオラという名前がありましてよ。
勇者の娘といつまで呼ばれるのか。
「なんでや〜立派なことやないか勇者の娘♪」
「立派なのはお父様とお母様でしてよ!
ワタクシではございませんわ!」
ワタクシの許嫁というこの男は
あっけらかんと言い放つ。
「ほな自分自身が功績残して立派になるしかないな♪」
「絶対なってやりますわ!
お父様もお母様も越える
立派な人間に!」
「気張りや〜応援してるで♪」
「ねぇセシル、明日ね、
我が屋敷に家庭教師が来るのよ。
剣術の達人らしいわ。
見てらっしゃい。
まずはその家庭教師とやらをぶっ倒して
お父様とお母様を超える
ワタクシの伝説を始めてやりますわ!」
「はは♪怖い許嫁やで〜♪」
今では
ワタクシは勇者の娘と
呼ばれなくなった。
冷酷非情の暴君
ヴィオラ・エルデシュタイン
誰かのおかげで得た名声などに
何の価値があるというのか。
ワタクシが全て。
なんぴとたりとも
ワタクシを
ワタクシ以外の名前で呼ぶことは
許しません。
それが
ワタクシが
ワタクシであり続ける理由。
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貴族や国ですらもひれ伏せさせる
我が主のルーツを知ってしまった。
最強すぎる悪役令嬢は
紛れもなく
本物の最強。
彼女こそが私の
絶対的君主なのだ。
「剣聖。ヴィオラ様は勇者の娘と呼ばれるのが
好きではありません。お控えください」
「あ!はい!それは失礼しました……!」
「……かまわなくてよ。子供の頃の話ですわ」
改めて私はこの人に仕えれてよかったなと
この人の取り巻きモブでいられることの
幸せを感じていた。
そこへ
「国から使い魔が来てるでありんす。入れていいか?」
「許可しますわ」
その使い魔は勇者候補にして剣聖であり騎士団隊長、
王の側近でもあるスカーレットへの連絡であった。
「報告します!魔王討伐に向かった
勇者候補、神速のアキレス率いる
魔王討伐軍が
【全滅】とのこと。
アキレスも消息不明。
隣国は魔物の進軍を許し壊滅状態。
剣聖は至急王都へ戻られたし」
それは世界中の希望を打ち砕く
ーーー最悪の連絡だった
読んでいただきありがとうございます!
もし少しでも面白いな、
続きが気になるなと
思っていただけましたら
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