特産品開発編④
日本での幼い頃の記憶。
犬や猫を触ると、身体が痒くなる。
そう、私もアレルギーだったのである。
そこで、根本的に症状を
治せたわけではなかったが、
ペットのブラッシングやシャンプーをマメにして、
自分は肌を守るバリア機能のある保湿クリームを使い、
空気清浄機を導入することにより
ペットのアレルゲンの吸収を
極力減らすことに成功したのだ。
それ以降アレルギーを発症しなくなった。
ーーー私の幼い頃の記憶。
そう、これを、
この異世界で再現してみる。
水と油を均一化させる技術、
私の元いた世界ではそれは
乳化と呼ばれていた。
この世界は化粧を厚く塗る風習があったが
その下地になる化粧水や乳液が存在していなかった。
この乳化の技術がなかったのである。
「つまり、デザートを作る時に
水と油と卵が均一化するでしょ?
それと同じことをして、
肌を潤わせるクリームを作るんです」
「なるほど。理屈はわかったよナミ。やってみよう」
シェフ、オズワルドは早速保湿クリーム作りにとりかかる。
もうひとつ、同じ要領で、
シャンプーを開発する。
これも理屈は同じ。
ペット自身を清潔に保つ。
実際は人間にもペットにも
もちろん使える。
「ナミちゃん、これ絶対貴婦人たちが飛びつくよ!」
ルチアが眼を輝かせる。
そう、日本でもこの異世界でも。
きっとどこでも同じ。
流行る売れる商品といえば
ダントツなのが美容関係。
このシャンプーと保湿クリームは
必ず貴族マダムたちに流行る。
【ヴィオラ・エルデシュタイン侯爵令嬢御用達】
しかも、圧倒的美貌とスタイルを持つ、
色んな意味で超有名人の我が主に
自ら広告塔になってもらえれば
これほど強いことはない。
空気清浄機についてはセバスチャンに頼み込んだ。
ペットの毛やダニ、目に見えない粒子レベルの
ホコリを除去するような魔法……
「私の使い魔は風の使い魔。
永続的には無理でも、
定期的に魔法で除去することは可能です。」
やるね!
風の使い魔ちゃん!ホーホー♪
連日実験を重ね、ついに
シャンプー、保湿クリームが完成。
ヴィオラ様に事情を説明して
なんとか合意をもらい、
ーーーその時は来た。
では……
ヴィオラ様、よろしくお願いします!
「うぅ……」
相変わらず
むちゃくちゃ嫌そうなヴィオラ様。
「にゃー」
全員が息を飲み見守る。
シュガーもシャンプー済み。
ヴィオラ様も入浴して
保湿クリームをたっぷり塗ってもらい
セバスチャンの白フクロウが
風の魔法で、微粒子を除去。
さて……
ヴィオラ様の膝の上に乗るシュガー。
恐る恐るなでなでするヴィオラ様。
……いけるか?
……
ごくり。
「……。……痒く……痒くなりませんわ!」
「やったぁぁぁあ!!!」
ウワァァ!!
全員がガッツポーズ!
歓喜の瞬間であった。
屋敷がほんとに一致団結できた気がする。
みんな本当にありがとう!
こうしてーーー
ヴィオラ様からのお墨付きをもらった
シャンプーと保湿クリームは
【黒猫印のシャンプー】
【黒猫印の保湿クリーム】
として、瞬く間にエルデシュタイン領はおろか
国中に大流行していく。
無事に特産品開発を成功させたナミは
今度こそ無事に
黒猫シュガーを正式にペットに迎えいれたのだ。
めでたしめでたし♪
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吾輩は、猫である。
神の名を持つ聖獣。
だが、今は、
神の名ではなく
名前はシュガーという。
名付け主はナミという変な女。
吾輩の魔力の源である
糖分の供え物が安定しているこの屋敷で
しばらく崇められる存在でいてやることにした。
さて、部屋でくつろいでいた吾輩の元へ
誰かがやってきた。
キョロキョロと、周りを確認しながら
こっそりと入ってきた"それ"は
以前とはうって変わって
禍々しいオーラを吾輩に向けなくなった。
ふむ。そうか。
ひとつ、吾輩にも腑に落ちない点があった。
あれだけ吾輩を拒絶していたくせに
ペットにするチャンスをナミに与えたり、
(仮)ペットでしばらくいさせた理由が
どうにも謎であった。そんなチャンス与えずに
さっさと追放すれば良かった話なのである。
しかし、
そうか、
禍々しいオーラが消えた今、
はっきりわかる。
とっくにお前は
……吾輩に魅了されていたのだな。
この地を統べる領主か。
お前も立場というものがあったのであろう。
苦しゅうない。
不問にしてやる。
吾輩を崇めることを
許可してやろう。
「……シュガーちゃん。なんてお可愛いこと。
ほら、美味しいクリームでしてよ。召し上がりなさい。」
モフモフ♡モフモフ♡
今回のナミの1番の功績は
特産品でエルデシュタイン領に
美味しいデザードを流行らせたことでも
国中の貴族マダムに
美容アイテムを提供したことでもなく
冷酷非情と言われた
彼女の心の氷を溶かしたこと。
それこそがなにより
1番の功績だったのではないだろうか。
最強すぎる悪役令嬢がこっそり
黒猫にメロメロになって
モフモフしているその姿。
その姿を
外で見せることは
間違いなく
ないのだろうから。
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