冒険者ギルド編⑥
翌日。
そのまま次の日を迎えたギルドの空気は重かった。
命は助かった。
だが――
「結局……犯人は不明、でござる……」
バルドが項垂れる。
襲撃犯は全員死亡。
口を割らせる前に“毒”で自害。
「あきらかにシンシアさんの不在を狙った襲撃」
「内部に、通じる者の確率が極めて高い」
「つまり、あの時"ギルドにいなかった"メンバー」
仲間を疑うとてもいやな気分。
誰もが考えたくないその事実に私達は項垂れていた。
(上手く最初に斬られたフリをしたのに……)
(さっさとナミだけやってズラかればいいものを)
(まさかうちのギルメンがあそこまで結託するとは…)
「こんな嫌な思いはごめんでござる……」
そんな空気の中、ギルドの前に馬車がとまる。
ーーーコツン。
ーーーコツン。
一定のリズムでこちらへ向かうその足音。
ギルドの外を歩く足音が
なぜか聞こえる。
なぜ聞こえるのか
誰にも理解はできない。
寒気、悪寒、恐怖、
説明のしようがないその感覚。
この空間を支配されている感覚。
ーーーあは。私、怒られるかな……。
「はわわ〜マスター!領主様ががごが!」
ドンガラガッシャーン!!
この覇気にあてられたら
そりゃこの受付嬢はひっくり返るよね。
そう、我が主、
ヴィオラ・エルデシュタイン公爵令嬢の登場である!
「ギルドメンバー全員、裏へ来なさい!」
ここはギルドの裏にある桜の木。
ギルドメンバー全員の前に立つのは
我が主とその執事。
「前ギルドマスターはワタクシが産まれる前から
このギルド【漆黒の翼】を守り抜いてきた英雄です」
ん?
何の話だろ?
「そのギルドマスターの不名誉な死から
この事件は始まっていました」
え?
「セバスチャン、その墓、掘り起こしなさい。」
「はっ!」
え?
えええええーーーー!!!!???
「なにを?!」
「領主様!?」
「一体なんの真似でござる!」
さすがのマスターも顔から血の気が引いている。
「死者への冒涜でござる!
さすがに許されることではござらん!」
「だまりなさい!!」
ピシッ!!
「……!!」
セバスチャンの扱う
地属性魔法により
墓の土はみるみるはがされ
棺桶が取り出される。
そして棺桶が、開かれる。
「遺体の、埋葬されたあとがございません」
「……!?」
「遺体がない?!どういうことでござる!?」
セバスチャンが続ける。
「報告では魔物にやられ殉職。
しかし、真実はギルド内での不正に気付き、
悪事をあばいたところを、
その犯人にやられたのだとしたら?
傷を見れば魔物からの傷なのか、
人にやられたかなどすぐに確認ができます。
証拠隠滅のため、遺体を隠したのでしょう」
ざわざわ……!
ーーーー緊張が走る
「前ギルドマスターの埋葬の手配をしたのは……!」
扇が閉じる。
ピシッ!!
「あなたですわね。サブマスター、レオン」
「……!!そ、そんな……」
やはり
犯人はサブマスターだった。
私の推理は間違ってはいなかったけれど
私じゃ予測するのが限界。
結局捕まえるところまでいくには
まだまだ実力が足りなかったんだ……。
こうしてーーー
逃げ場のなくなったレオンは力なく座り込み、
周りを囲んだ衛兵に連れていかれる。
事件は解決ーーー
私とシンシアは
ヴィオラ様の前で跪く。
「……申し訳ございません」
珍しいシンシアの謝罪。
「シンシア。以後気をつけなさい。」
「はい!」
「……ヴィオラ様!!すいませんでした!!」
すでに、涙が止まらない私は叫ぶように謝る。
「せっかくお任せいただいた仕事なのに
結果を出すどころか……
こんな事件まで起こしてしまって!!
本当にすいませんでした!!」
「……顔をあげなさい。」
うぅ……
「ナミ。今回の結果は一目瞭然ですわ」
「……!」
みんなを死に目にあわせて
なんの言い訳もできない
やはりクビかな……うぅ……
「……後ろをごらんなさい」
……
え?
後ろを振り返る私。
パチパチ……!!
「ナミちゃん!ありがとう!」
「ナミ殿のおかげでござる!」
「もう大丈夫だよ!このギルド必ず再建できる!」
「はわわ〜ナミさん〜!!」
「本当にありがとう!!」
「再建担当!おつかれさま!!!」
……
……!!
みんな……!!
「ナミ。これが今回の結果です。」
「……ヴィオラ様!!」
「よく頑張りましたね。素晴らしい功績ですわ」
……!!
うわあああ!!
ーーー桜の木の下
涙が止まらない私を
みんなは優しく微笑み包んでくれるのであった。
ーーー帰り道
「……ヴィオラ様。あのお二方が……」
シンシアがヴィオラ様へ。
「……ええ。わかっています。」
ん。
「たまに帰ってきた時くらい
領主の仕事させないとですわ。
普段好き放題しているのですから」
「やはりそうでしたか……言葉もありません」
ん?
「こちらにいる間だけでもギルドの様子
みてくださいとワタクシから伝えていたのですわ」
んん?
「ヴィオラ様。ナミにはお伝えしても?」
「かまわなくてよ」
こちらをふりかえったシンシア。
「公には、病気にかかり伝染らないようにと
別邸にて隔離、療養中ということになっています。
しかし、本当は
領主の仕事をするのが嫌で
"一人娘"に領主権限を全て渡し、
身分を隠して偽名を使い、
世界中を旅して回っておられます。」
え!
え?!
「エドと……シータは……?」
「偽名ですわ」
ぷいっと拗ねた仕草をするヴィオラ様。
「はい。あのお二方こそ、我が
エルデシュタイン侯爵と
エルデシュタイン侯爵婦人でございます。」
ええええ!!!
あの二人が!!
なにそれ!!!
何してんの?!
え?
てことは
ヴィオラ様の
パパとママじゃんーーー!!!!
「ですので気にしなくてよろしくてよナミ。」
「……はわわ〜」
また腰を抜かした私。
そうか。
私とヴィオラ様も同い年。
親の世代だってそりゃ
同じだよね。
「ヴィオラ様の面影ありました……!」
「……!ありませんわ!失礼ですよナミ!」
クスクスと横で笑うシンシアと
私達3人。
屋敷に帰ったら
美味しいシェフのご飯食べて
今日はゆっくり眠ろう。
やっと。
やっと。
自分に向けて
やっと一言だけ
言葉をかけてあげれる気になれた。
ナミ……
「お疲れ様。」
読んでいただきありがとうございます!
もし少しでも面白いな、
続きが気になるなと
思っていただけましたら
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