冒険者ギルド編②
さてさて、ギルド漆黒の翼の応接室。
重厚な扉の向こうは――
ぐっちゃぐちゃだった。
書類の山。
未処理依頼。
床に転がる封筒。
なぜか食べカスまで。
「……えっと」
「す、すまぬ!今片付けるゆえ!」
慌てて紙をかき集める大男。
筋骨隆々。
だが目は優しい。
「拙者が【漆黒の翼】ギルドマスター、バルドでござる」
拙者キャラきたーーー!!
「ナミでござるます〜……本日は運営の件で……」
「うむ!領主様より話は聞いている!」
バルドは深々と頭を下げた。
なぜかわかる。
この人はいい人だ。
めちゃくちゃいい人。
でも。
なぜか経営に向いてないことも一瞬でわかる。
その横に、静かに立つ男。
黒縁眼鏡。細身。整った顔。
「サブマスターのレオンです」
声は低く、穏やか。
「貴女がギルド再建担当の方ですか?」
「はい。この度は私が担当させていただきます」
このサブマス。
微笑んでいる。
……が。
目は笑っていない。
絶対インテリ枠。
「今のメンバーとはもう、面識はありませんが、
以前このギルドに所属経験がございます」
「こちらは領主直属のボディガード、シンシアさんです」
「貴女が噂の【漆黒の風】ですか」
「私は今回はあくまでボディガードです。」
「担当は私がやります。よろしくお願いします」
「さて、拙者、正直に申す!」
バルドが拳を握る。
「ギルド運営が……うまくいっておらぬ!」
ド直球!
もはや気持ちいいねマスターさん。
「どのあたりがでしょう?」
「全部でござる!」
全部!?
横からレオンが補足する。
「マスター、私が説明をしましょう。」
依頼クエストの失敗、
冒険者同士の抗争、
収支は不安定、
新人は育たずトラブルだらけ。
「前マスターの事故死以降、統制が取れていません」
事故死……。
バルドは目を伏せる。
「前マスター殿は……立派なお方であった」
レオンは淡々と続ける。
「現状戦力もB級4人が最高ランク。
人員も不足しています」
このサブマスはしっかりしてそうなのに
この書類の乱雑具合はなぜだろう。
「と、とにかく!」
バルドが書類を掴む。
「依頼板もこの通り!」
部屋の外の掲示板を見る。
依頼が乱雑に貼られ、上に上に重なっている。
緊急も常設も区別なし。
うん。…これはダメなやつだ。
そこへ。
「……お茶をお持ちしました〜」
……カッ!!
ドンガラガッシャーン!!
「きゃぁぁぁ!!」
ド派手にすっ転ぶ先程受付にいたお姉さん。
「ミリア!なにをしてるのです!?」
レオンが受付のお姉さんを叱りつける。
「……はわわ〜、すいません〜」
また書類がぐっちゃぐちゃに。
この子のせいじゃないのか?これ。
「すまぬ!うちの受付嬢はどうも鈍臭いのでござる!」
ドジっ子受付嬢か。
……嫌いではない。
よし、話をまとめよう。
以前のギルドマスターさんはもうかなり長く
マスターをしていたらしい。高齢の為もう
前線に立つことはなかったが人望も厚かった模様。
ところが人出不足でクエストに出たところ
魔物にやられ殉職。事故だと判断された。
サブマスだったこの2人のうち、
前マスターの意向でバルドが引き継ぐ。
このバルドさんをきっと人柄で選んだのだろうな。
レオンさんが細かいことはフォローして、
事務はこのミリアという受付嬢が担当。
ちょうど間が悪くギルメンも減ったところに
ドタバタが続いてクエストの失敗連発。
責任のなすりつけあいで冒険者同士は仲違い。
事務整理も追いつかず収支も無茶苦茶。
新人冒険者も育つはずもない。
なるほど。これはやること山積みだね。
「ええ、大体状況は把握できました。」
「ナミ殿。迷惑をかけるでござる。」
「お任せください。」
スっと立ち上がる私。
「見事にこのギルドを再建してみせましょう!」
「おお……!」
パチパチ☆
拍手と共に
私を見る羨望の眼差し。
横のゴリマッチョだけは
私に疑念の目を向けているがそんなものは無視無視。
見栄は切った。
今回は、ずっと役に立てなかった私に
ヴィオラ様が初めて任せてくれた仕事。
絶対やり切りたい。
そのための見栄。
自分に逃げ道を与えないため。
私だって成長するんだからねっ!
その横で、なぜか突然窓を開けて
換気をしようとしたドジっ子受付嬢。
風で書類がわさーと散らばる。
ビュー!バサバサ!
「わー!何してるのミリアさん!?」
「……はわわ〜すいません!
なんだか空気が熱かったので……」
気持ちの熱気を物理的に冷まそうとした?
一瞬で書類をキャッチして集める漆黒の風メイド。
「ミリア殿は動くと災害が起きるでござる!ガハハ!」
「やれやれ……」
脳天気なマスターと
気苦労が絶えなさそうなサブマス。
可愛さ余って憎さ百倍に見える受付嬢。
ギルメンは新人含め約20人。
これに私と性格ブスマッチョゴリラ。
よーし!
やるぞ!
頑張るぞ!
ナミのギルド再建物語はこうして始まったのです☆
読んでいただきありがとうございます!
もし少しでも面白いな、
続きが気になるなと
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