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あてどない植物記  作者: 蘭鍾馗


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【No.108】花屋では見かけない サクラソウ

 しばらく桜の話が続きましたが、今回は「ソウ」がつきます。サクラソウです。


サクラソウ(サクラソウ科)

Primula sieboldii

挿絵(By みてみん)


 サクラソウはサクラソウ科の草本。バラ科の樹木である桜とはだいぶ縁が遠い。それなのに「サクラソウ」なんていう名前で呼ばれるのは、花びらの先端が2つに割れている所が桜っぽいから。色も桜に似ている。上の写真は、山梨県の櫛形山で撮影したもの。

 ちなみに、これまでご紹介した花の中でサクラソウ科のものというと、クサレダマがそう。


 サクラソウの自生地は北海道南部、本州、九州の山地の湿った草地や、河川の氾濫原のような環境ですが、自生のものを見かける機会は非常に少ない。有名なところでは荒川河川敷のサクラソウ群落があります。あと、渡良瀬遊水地のヨシ原の中にも点々と自生地があります。


 花期は4~5月頃。3月に葉を出して、4~5月に花を咲かせると、6月にはもう葉が枯れて休眠してしまいます。そう、カタクリなんかと同じ春植物スプリングエフェメラルなんです。ただ、どういうわけかカタクリ等と一緒に生えている所は見たことがありません。カタクリやニリンソウよりも、他の草が茂るような場所で見かけるような気がします。そして、荒川河川敷のような大きな群落は少なく、フクジュソウやセツブンソウ等のように、分布は広いけれども自生地は点在していて少ない、という感じです。理由は良くわかりません。フクジュソウのように石灰岩地に逃げ込んでいるという訳でもなさそうです。


 稀に白花の個体を見かけることがあります。下の写真は栃木県の小さな川べりに自生していたもの。


<白花のサクラソウ>

挿絵(By みてみん)


 ◇


 桜草というと、春になると花屋に良く鉢物が並びますが、花屋で「桜草」の名で売られているものはほとんどがプリムラ マラコイデスという中国原産のもの。花は日本のサクラソウよりも小さいのですが、その分花の数が多く、豪華な感じ。他にもプリムラ ポリアンサやプリムラ ジュリアンといったヨーロッパ産のサクラソウを改良した園芸種も良く出回りますが、こちらは花色がピンクの他に黄色や青、赤等カラフルで、日本の桜草とはだいぶイメージが違う。花屋でも、桜草ではなく「プリムラ」の名で売られていることが多いようです。


 ◇


 ところで、日本の桜草も、江戸時代頃に盛んに品種改良が行われ、多くの品種が生み出されました。プリムラ類と区別するために「日本桜草」と呼ばれますが、花屋の店先でみかけることはほとんどありません。菊や花菖蒲と同じ、いわゆる「古典園芸」と呼ばれるジャンルの花になります。


<日本桜草>

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 日本桜草は、西洋のプリムラ類と比べると、色の変化には乏しく、黄色や青の花はありません。花もプリムラ類と比べると小輪。どちらかと言うと、花の形の変化を楽しむような感じでしょうか。性質もやや弱いため、花壇に植えて楽しむのはちょっと難しい。1本ずつ鉢に植えて、その雅な風情を楽しむ花です。


 ちなみに花言葉は、「初恋」「憧れ」「純潔」なんだとか。



 サクラソウの話でした。



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