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僕は 君たちの玩具じゃない   作者: 三ツ星真言
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48/59

ランチはコーヒーカップのお店で

「お腹空いたね。ランチ、どこにする。」

 僕は自信を持って、尋ねた。

 この日のために、軍資金をお年玉貯金から引き出し、

ネットで上野周辺のお洒落なお店を検索し、昨日、土曜日

下見に来たからね。

「私ね、子どもの頃から行きたかったお店があるんだ。」

「へえ~、それはどこのお店なの。」

「特定のお店じゃないの。」

 キラちゃんが選んだお店は、何とどこにでもあるチェーン店の

回転寿司であった。キラちゃんは、僕の予想を裏切った。

 やっぱ、稽古と実戦は違う。僕は、まだ甘いな

 日曜日のお昼時なので、そこそこ混んでいたが、二人なので

カウンターに待たずに座れた。

 キラちゃんのテンション、ハンパない。店内を走り出さないか

心配になったくらいだ。

「私ね、子どもの頃からずっと来たかったの。友達が、学校で

色々話しているのを聞いていて、不思議だったんだ。

 クルクル回るお寿司って、遊園地のコーヒーカップみたいなって

思ったの。」

「ちょっと、それは盛ってない。」

「本当よ、私が嘘をつくと思う。」

 キラちゃんのくっきり二重で大きな瞳で睨まれると、即答した。

「思いません。」

「それからね、カッパが握っているとか、いや握ってないとか、

 違うよ、新幹線が握ってんだよとか。僕はサーモン星人、

私はマグロ星人って、みんな宇宙人になるんだよ。

 まだ、あるの。何でお寿司屋さんなのに、ラーメンや

ケーキまであるのか、不思議でたまらなかったの。」

 きっと、キラちゃんのお家は、庶民が行けない銀座の高級

お寿司屋さん、回らないお寿司屋さんだったんだろうな。

 子供の頃のキラちゃんが抱いた回転寿司のイメージを想像すると、

可笑しくなった。

「ちょっと、馬鹿にしてない。」

「ううん、可愛いなって思った。」

「まあ、実はリズ君、女の子の扱い慣れてたりして。」

「そんなことないよ。それより、早く食べよう。回ってるの、

取ってもいいし、職人さんに注文してもいいんだよ。」

「はあ~い。」

 キラちゃんは、サーモン、炙りサーモン、マグロ、エビと

次々と制覇していった。そのたびに、歓声を上あげる。

 見ていて、僕まで嬉しくなる。食事って何を食べるか大事だけど、

誰と食べるか、メッチャ大事なんだね。

 僕は、そんなことを考えながら、鯛を食べた。ヒラメ、ハマチと

白身から攻めて、赤身へと繋いだ。

 鰻は回ってなかったので、キラちゃんが玩具に触るかのように

嬉しそうな表情で、タッチパネルで僕の分まで2皿注文した。

 暫くしてから、新幹線で運ばれてきた。

「やった~、スゴイ。」

 手を叩いて喜ぶものだから、職人さん、自分のことのように

照れている。只でさえ、キラちゃんは人目を惹く美少女、

店内のお客さんの男性のほぼ全員の視線を集める。

 こんな時って、誇らしいような、見るなって独占したいような

複雑な気持ちになるんだね。これも、初めての経験だ。

 果たして、美少女が鰻を食べて、どんなリアクションをとるか、

みんなが見守る中、キラちゃんは、鰻を食べた。

「う~ん、超美味しい。」

 嘘偽りのないリアクションに、みんな、軽くどよめく。

安心したような、自分のことを褒められたような嬉しい気分、

幸せな気分になる。

 キラちゃんの存在は、まさに周りを明るく照らす星みたいだ。

 名は体を表わすを、実感した。

 この日、このお店始まって以来の鰻の注文が殺到し、

すぐに売り切れになったらしい。新しい都市伝説が生まれたか

どうかは定かではないが。

「もう、お腹一杯。食べられない。」

「どれ、どれ。」って、キラちゃんのお腹を触りたい衝動を

全身全霊で断ち切った。まだ、早いじゃなくて、セクハラ親父

みたいじゃん。

 僕は、10皿に抑えておいた。三時のお茶が待っているかも

しれないからだ。

 ここは私が払うと、黄色い皮の財布から見たことのない金色の

カードを取り出したが、そのカードはここでは使えないかも

しれないと言いくるめ、僕が男らしく現金で支払った。

 銀座の高級お寿司屋さんに比べれば、安いもんだ。

 二人分でも5千円で、おつりがくるもんね。

「さて、次、どこへ行こうか。」

 僕の問いに、キラちゃんが返した言葉。

 またもや、予想を裏切られたもんじゃなかった。

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