アンドロメダ星雲まで飛ぶ
「ねえ、うちに来ない。」
「・・・・・・・」
「ねえ、聞いてる。」
突然の予期せぬ言葉に、僕の意識はアンドロメダ星雲くらいまで
飛んでしまっていた。
「はい、聞いています。」
「で、どうなの。来るの。来ないの。」
恥ずかしそうに顔を地面に向けたまま、上目使いで僕を睨む。
もう、たまりません。ハグしたくなるじゃないか。
この時の僕の心拍数は、200くらいに上がったかな。
「はい、喜んで。」
「何、それ。変なの。じゃあ、行こう。」
桜の花がパッと咲いたように笑顔が弾ける。これって、もしかして
あのハニー・トラップなるものか。かまわない、キラちゃんの罠なら
喜んでかかろう。どんな酷い目にあっても、本望だ。
上野発の銀座線に乗った時から、僕の意識は銀河鉄道の世界の中。
電車は混んでいるから、入口付近で自然と二人向かい合った形で
密着してしまう。
座席に座っている人は誰も無口で、スマホをいじっているが、
僕は体が膠着して、自分でも顔が紅葉のようになっているのが
わかる。倶利伽羅真言を心の中で唱え、心身を、特に下半身を
落ち着かせようとするが、無理っぽい。
「あれれ、顔が赤くなってる、私に、あんな酷いことしておいて、
可笑しいわ。」
僕の耳元で囁く。それだけでなく、わざと体を押し付けてくる。
艶やかで黒く長い髪の毛と全身から漂う言葉では表せない良い香りに
頭がクラクラする。逃げようにも、逃げられない。こんな場所で、この
タイミングで、そう攻めてくるか。自分の実戦不足を思い知る。
女の子って、怖いよね。祖父が日頃、僕に言っている言葉、
「女は魔物じゃ。気をつけるべし。」を、実感するが、もう僕は
玩具にされてもいいって、思い始めていた。




