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僕は 君たちの玩具じゃない   作者: 三ツ星真言
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不忍池の言い伝え

「駄目じゃ。ボートには、絶対に乗るな。」

 いきなり僕たちの眼の前に現れたのは、祖父だった。

「どうして、ここに。」

「男がそんな些細なことなどきにするもんじゃない。

 とにかくじゃ、ボートだけは絶対に乗るな。」

「どうしてですか。」

 僕たちは不思議でたまらなかった。

「この不忍池で一緒にボートに乗るとそのカップルは

 別れてしまうんじゃ。そういう言い伝えがある。」

「えっ、どうしてですか。御祖父様、一緒にペダルを

漕いでの共同作業はなおさら仲が深まるんではないですか。」

 えっ、そんなこと考えていたのかと、僕はガチで嬉しく

なった。きっと、顔にハートマークついただろう。

 今まで、警戒して損したな。ルン。

「・・・・・・・・・」

 祖父は、暫く空を睨むように見上げていたが、意を決して

話してくれた。

「ワシも若い頃、逢引きでこのボートに乗ったのじゃ。」

「ハンバーグを作ったんですか。」

「たわけ。逢引きはだな、今で言うと、デート、そうデートじゃ。

 連れの女子おなごがその言い伝えを気にして嫌がるのを、

ワシは笑い飛ばして、無理に乗せたのじゃ。」

「それで、どうなったのでしょうか。」

 今度は、星明が聞いた。

「結局、別れた・・・・。弁天様の罰が当たったんじゃろう。

 お嬢さん、アンタは別嬪ぺっぴんさんだから、よけい

弁天様が嫉妬するじゃろう。だから、ボートだけはやめてくれ。

頼む、この通り。」

 あの鬼より怖い祖父が頭を下げて他人に頼むなんて、まずない。

「承知いたしました。御祖父様、御顔を上げて下さい。」

「そうか、有り難や。こいつは女子に愛想の一つも言えない

 朴念仁じゃが、どうか宜しく頼む。」

 祖父はそれだけ言って、安心したのか、疾風のように去って行った。

 何て足が速いジジイなんだ。自分だって人のこと言えない石部金吉だし、

そもそも、こんな風に僕に育てたのはアンタだろう。

 僕は、心の中で散々毒を吐いた。

「とっても素敵な御祖父様ね。」

 星明は、別嬪さんと褒められて、よほど嬉しかったのか、めっちゃ

機嫌が良かった。

「えっ、どこが。鬼より怖いし、鬼より強いんですよ。」

「それ、マジ、ウケる。」

「冗談じゃないからね。キラちゃん、子どもの頃から、

何度死にそうな目にあったか。いっそのこと殺してくれって

何度思ったことか。」

「それだけ、リズ君のことが可愛いからよ。私だって、そう。

 御祖母様に厳しく育てられたんだから。」

「そうなのかな。キラちゃん。」

「きっと、そうよ。リズ君」

 僕たちは、いつの間にか自然に名前をそう呼びあっていた。

 動物園って、癒し効果があるのかな。

 いや、僕にとってこれ以上のファンタジーは、ないぞ。

 夢にまで見た憧れの星のビーナスとデートができて、

こんな関係になるなんて、神様ありがとうだよ。

 お互い、昔っからずっと二人の出会いを待ってたような

不思議な気持ちだった。不忍池の弁天様のお導きもあるのかな。

 暫く見つめあっていたが、二人同時に、脳裏に閃いたことが

あった。

「もしかして。」「きっと、そうよ。」

 しかし、それを聞いても素直に答えないだろうよ。

 祖父は、頑固ジジイだからな。

 

 

 



 

 

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