ハルマゲドンの闘い
「見つけたわ。あなたが栗殻ね。覚悟。」
ギリシャ神話に出てくるセクシーな女神姿の森 星明が
大きな弓矢で栗の被り物姿の僕の心臓に狙いをつける。
そこへ、悪魔装束の龍美たちが地の底から現れ、僕を
鎖でがんじがらめにして、耳障りな嘲笑で引きずり回す。
そして、僕をめぐって女神と悪魔のハルマゲドンのような
激しい闘いが起き、「やめてくれ。」と僕が叫んだところで、
教会の鐘が鳴り、眼が覚めた。
良かった。夢だったのか。目覚まし時計が鳴っていた。
ホッとするものの、何とも嫌な夢だった。僕の名前は、
奏夢だから、もっと音楽的なロマンテックな夢を
見たいものだ。
こんな夢を見るのも、あいつらデビルドラゴンのせいだ。
何が電龍組だ、あいつらと関わり合ったばかりに、とんだ
災難に巻き込まれてしまったじゃないか。
僕が図書館であいつらと一緒だったこと、キスマークを
首筋につけられていたことは、もう全校生徒に知れ渡って
しまっている。事件に何らかの関与していることは明白だと、
高校生探偵気取りの者まで現れ、大迷惑している。
確かに、俱利伽羅という女装男子は僕で、紛れもない真実だ。
でも、真実は一つでも、一つじゃない。え~と、ピラミッドは
上から見たら正方形だけど、側面は正三角形でできているし、
え~い、頭がすっきりしない。年末に日本人が大好きな忠臣蔵の
悪役の吉良上野介は実は地元では名君で慕われていたとか。
見る者の立場によって真実は変わってくると僕は訴えたい。
自分でも何を言っているのかわからない。まったく、嫌になる。
そんな僕を見て、朝食の食卓で、祖父はかくのたまう。
「無し無しと云うは偽り我が姿 有るこそ無きの始めなりけれ」
念流・念阿弥字音の秘伝道歌だったかな、「はい。」と素直に
返事するしかない。
きっと、深い意味が込められているんだろうけど、考える
余裕がない僕はそのまま学校へ向かった。




