50話「定番の妖精はピクシーです」
俺がデュラハンと同じ部屋にて気まずい空気を一緒に吸っているなか、ようやく沈黙が破られた。
九尾「あー、騒がしくてたまらん。年寄りの居場所がないであろうが」
俺「あ、会長」
九尾「ん? なんじゃ俺くんと……ああ放送の」
結滞な放送だったと笑う会長にデュラハンは律儀に礼をした。
九尾「……ん? まさかお主、学園祭の間ずっとここにいるつもりか?」
俺「あ、いや。今日1日だけです」
九尾「とはいえ休憩くらいとっとるか?」
休憩か……今は別に仕事があるわけでもないし、休憩みたいなものだと思っているけど。
九尾「少しぶらついてくるがよい、妾はここで代番する。というよりも学園祭自体が騒がしくて疲れる。妾はここでじっとしていた方が向いておる」
俺「そ、そうですか。じゃあお言葉に甘えさせてもらいます」
会長、一体何歳で学生してるんだよ。
とはいえ、初日は働くつもり満々だったから特に予定ないんだよなぁ。
ともかくせっかく貰った時間だし、そこらへんフラフラしよう。
*****
門星学園 校舎外
とりあえず小腹が空いたので屋台を目指して校庭へ。
部門投票は生徒投票だから、一応ストールも見ておかないと。
しかし、意外なことにまともな屋台しかない。いや、なんだか失礼な言い方かもしれないが、どうせまた得体の知れないものの串焼きやら土手煮やらあると思っていた。
俺「……甘いもの食べたいな」
たこ焼きやら焼きそばやら考えたが、そこまで胃が膨れるものじゃなくてもいい。
アイスやクレープとかそこらへんはないものか。
パーン「あ、俺くん先輩〜」
俺「パーンか。働いてるの? ETOあったんだから、休んでいればいいのに」
パーン「そうは言っても気がひけるからね〜。ほら私神だし! 他のヒトに気を遣わせたくないんだよ」
俺「……ふぅん」
パーンは学園祭Tシャツに身を包み、惜しげもなく煽情的な体のラインを見せていた。
俺「……意外だな」
パーン「そうかな? でも確かにくびれには自信あるよ」
俺「いやそれもだけど、意外にあるんだなって」
パーン「……セクハラ?」
違います。
パーン「いや、私そんなにないよ? コレね。毛」
俺「毛っ!?」
パーン「うん、毛の分だけシャツが盛り上がってるだけ。……でも抵抗なしにそんなこというのは良くないよ?」
いや、他種族だし……と思ったが、ここは門星学園だ。そんな言い訳は通用しない。
俺「……悪かったよ」
パーン「まあ、いいけどね」
許されるなら謝ったほうがいい。
ウチの家訓だ。
パーン「よかったら食べる?」
俺「うん、そうだね。じゃあ貰おうかな。ところで何作ってるの?」
パーンは山の神だし、やはり山菜を使った料理だろうか。
パーン「綿アメ」
まさかの近代機を使う山の神。
俺「……やっぱいいわ」
俺はそのモコモコとした砂糖菓子を思い浮かべた後、パーンのモコモコとした姿を目視して、丁重に断った。
微妙に剃りあがってるんだもん。気になってしまう。
結局俺は自分のクラスの屋台でベビーカステラを袋詰めにしてもらった。
*****
門星学園 校舎内
妹「あ、お兄ちゃん!」
俺「おう。客寄せか?」
妹は白いフリフリのカチューシャにエプロンドレスを着ていた。もう何をしているかは察することができる。
無論文句はない、日本の学園祭らしい催しだと思うし、なにより妹らしい店構えだといえよう。
妹「そうだ! お兄ちゃん店に来てよ!」
俺「でもなぁ……こういうの一人だと入りにくいんだよな」
妹「……へたれ」
俺「……わかったよ」
くそぅ挑発に乗ってしまった。
俺「……えっと、確かお前のクラスってβだっけ?」
妹「うん、初等部β」
まあ喉乾いたし、休憩するにはいいだろう。
*****
門星学園 初等部βクラス
「「「おかえりなさいませご主人様っ!!」」」
俺「あ……うん……ただいま」
なるほど、ヤマが泣いて喜びそうなメイド喫茶だな。
ウロス「ってあれ? 日本ちゃんのお兄さんじゃないですか。残念ですけど日本ちゃんは客寄せでいませんよ?」
俺「知ってるよ。俺がその寄せられた客だから」
妖精「おー! 日本ちゃん働いてるじゃん! あ、お兄さん此方にどうぞ〜」
ご主人様呼びはどうした。
というか、妹ってクラスでは日本ちゃんって呼ばれてるんだな。
エルフ「お兄さんお久しぶりですー」
俺「久しぶりって……あれ? 俺の友達はホテルでエルフさん見たって言ってたけど」
エルフ「やだー呼び捨てでいいですよ!! 昨日の夜仕事が終わったらすぐに学園に戻ったんですよ」
ダーエル「まあ十分に人は足りていたがな」
……っ!?
……俺はその時思い出した。
他種族は空想上の生物だ。
しかし、こうして存在している。
これが何を指すか?
俺「……あのさ、二人とも頼みがあるんだけど」
エルフ「はい?」
ダーエル「なんだ?」
俺「……写真撮っていい?」
ーー俺は他種族が大好きだ
*****
満足した。
というか、あれだ。メイド喫茶として成り立ち過ぎている。
ケチャップで絵を描くにしても歌うにしてもレベルが高すぎる。
本当に妹プロデュースか?
……まあいいや、思ったよりはゆっくり出来たからな。
そんなことをしてる間にもう昼間だ。
初日は情報もないし、外でぶらぶらすることにしよう。
屋台ならチラ見でも充分観察できるだろう。
せっかくだしさっきは見れてなかった校門側を見に行くことにしよう。
*****
門星学園 校門
俺「ひゃあ、場所も場所だし混んでるなぁ」
これだけ人がいたら、迷子になってる子がいても気づきそうに無さそうかも……ん?
俺「あっ、もしかして」
俺は、少し舗装されている部分から離れて、庭園の茂みの方に向かった。
*****
門星学園 庭園
?「参ったなぁ……。こんなところ誰も助けに来るわけもないし……」
俺「あ、いたいた」
?「えっ!? だれ!? 見えない見えない!」
俺「助けにきただけです。これじゃ不便でしょう」
俺はその野晒しにされていた頭部を拾い上げるとこちらを向かせた。手帳通りの超美人だ。
デュラハン「あーっ!! 俺くん、わざわざ助けに来てくれたの!?」
俺「まあ大変でしょうし……ってあれ? なんで俺のこと知ってるんですか?」
デュラハン「いや、私俺くんにあったじゃんさっき」
俺「いや、会ったのは首から下ですし……」
するとデュラハンはため息をついた。
デュラハン「目がなくても見えないとは限らないよ?」
俺「え!? 見えるの!?」
デュラハン「見えるし、聞くことだってできるよ。ただ色が分からなかったり、ぼやけたりするけどね。デュラハンも進化の過程でそれくらいは身につけるさ」
なるほど、体の器官が老いるような感じなのかな。
デュラハン「それにしてもありがとうね。孤独な中で助けられた瞬間、少しカッコいいと思ったよ。正直惚れかけた」
俺「……恥ずかしいこと言わないでください。とりあえず身体のところに行きますよ」
デュラハン「本気なのにねー」
俺「そのくらいで惚れると、俺の世界じゃチョロインと言われちゃいますよ」
本気なのは分かる。
デュラハン……彼女の頭部は血が通うはずがないのに熱くなっていた。
*****
門星学園 生徒会室
九尾「おー来たか。俺くんよ」
俺「気づいてたんですか。千里眼か何か?」
九尾「まあそんなとこじゃな」
俺は、そんなことができるなら先に頭部を見つけ出して欲しかったが……まあいい。
俺「デュラハンさん。どうすればいいです?」
デュラハン「ドッキングでいいよ。あと、断面は覗かないほうがいいよ」
正直もう遅い。身体と一緒だった時に気になって覗いてしまった。
……なんというか、グロかった。
首の断面など見るものじゃないな。




