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49話「デュラハンは妖精です」

門星学園 メインステージ(客席)


俺「もうすぐだなぁ……」


ラミア「そーだね。ワクワクするよ」


俺「その割には元気ないけど?」


ラミア「朝だからね……昨日は疲れて……ふわぁぁあ」


ラミアは俺にバレないように顔を隠しながら欠伸をすると、たははと笑いをこぼした。


俺「あんま無茶するなよ」


ラミア「うおっ!? 俺くんが私を心配してくれてるーーーっ!!」


俺「……まあいいか今日ぐらいは」


その時、スパァンというクラッカーの音と同時に舞台から13人のアイドル、ETOが出てきた。


鉄鼠『みなさーん!! 門星学園学園祭にお集まりいただきありがとうございまーす!! 私はETOリーダーを務めさせていただいてる鉄鼠です!!』


俺(この挨拶変だな……。俺の場合は人間です!!という挨拶になるわけだ。今後はニックネームやらをつけた方がいいかも……)


ラミア「俺くん? 俺くん?」


俺は突然のラミアの声に我に変えると、大きな音楽の中でラミアと話をした。


俺「あ、ごめんね」


ラミア「ううん。思ったんだけどさ。俺くんは行かなくてもいいの?」


俺「え?」


ラミア「いや、だってプロデューサーなんでしょ?」


考えてみれば分かるものだが、何故か俺はラミアの言葉の意味を理解するのに時間を要した。


俺「つっても俺はスカウトしただけで何もしてないからなぁ。それに俺は袖よりも客席で見たかったし」


俺はステージ上で手を振ってきたアルミラージにバレないように振り返しながら話した。


ラミア「そういうものかな」


俺「そういうもんだよ」


話に一区切りつけると、そのタイミングでアルミラージの声が響いた。

ちなみに、声はマイクとかではなく魔法にて拡声しているらしい。


アルミラージ『では聞いてください! 私たちの最初の曲『GATESTAR』!!』


…………

……


公演が終わると客席では大喝采が起こっていた。


今頃舞台袖ではお互いの健闘を讃えあっているところだろう。


俺はアイドルのメンバーにお疲れと言うべく菓子折りを持って舞台裏に向かった。


俺「やぁ、おつかれさまー……ってええっ!?」


鉄鼠「ひっくひっく……」


アルミラージ「ぐす……せんぱぁい……」


まさかETOの2トップが泣いているとは思わなかった俺は、とりあえず周りのメンバーに訳を聞いた。


俺「えっとどうしたの?」


メリュジーヌ「普通に達成したことに喜んでるだけネ」


人虎「別にこれで解散するわけではないんだけど。2人とも感極まりすぎだよ」


俺「……なるほど」


俺は事情を理解すると、アルミラージと鉄鼠を励ました。


俺「おつかれさま。とりあえず今日は楽しもうよ。だから涙は無し!」


アルミラージ「……ぐす」


鉄鼠「……ふあい」


俺「そんなことよりもこれ持ってきたんだ。俺の世界のお菓子なんだけどさ、結構評判良いんだよ」


俺は銘菓店で買った少々値の張る菓子箱を出すと、2人に差し出した。


俺「……学園祭はこれからなんだからさ!」


…………

……


俺「お菓子喜んでもらえてよかったな」


俺は独り言を呟くと急いで誘導の立ち位置へ向かう。


タウロ「俺くんこっちだ」


俺「あ、うん。ごめんねタウロさん」


タウロ「いや、それよりもオープニングセレモニー良かったぞ」


俺「いや、あれは僕じゃなくてアイドルのみんなだから……」


俺は偶然にも立ち位置が隣り合わせになったタウロさんと話しながら開放を待つ。


俺「それにしても……」


俺は呟きながら周りを見渡す。


俺「……体の大きな種族は目立つなぁ。グリフォンとかケルベロスはもちろんドラゴン系がこれだけ並ぶと圧倒だよ」


タウロ「そうだな……。まあ多少圧迫感があった方がいいんじゃないか? 安全面の部分では」


確かに言う通りだと思う。もし凶悪な種族が入っていたらそうした方がいいかもしれない。


俺(でも、フカザワ……大丈夫かな)


ふとそう思うが、瞬間的に開幕の鐘がなり校舎が開放された。


*****


オオカミ「押さないでくださーい」


ヴァンプ「急いでいても走ったりすることは止めて、前の参加者の歩行のペースに合わせてくださーい……それにしても毎年こんななのか……?」


オオカミ「……確かにな……でもホテルが足りないという話は無かったし予想通りであるのは間違いないだろ」


ヴァンプは半端適当半端真面目に誘導を行うと、途中でヤマたちの姿を見つけた。


ヴァンプ「あ、あいつらだ」


オオカミ「……あ、本当だな。大丈夫か? 人間だろ……?」


ヴァンプ「……人間の可能性は分からないからな。とりあえず今はこっちを頑張ろうぜ」


オオカミ「お前に言われるのは腹が立つが、正論だな」


*****


ヤマ「大丈夫か二人とも」


エリ「私は大丈夫ですけど……」


二人ははぐれないようにと腕に結んだ紐の先にいるフカザワを見た。


フカザワ「般若波羅蜜多時……」


ヤマ「それ宗教違うぞ。ジーザスだろお前んとこは。あと普通に悪魔系統の生徒いるんだから経唱えるのは禁止な。賛美歌も除霊も同じ」


フカザワ「……うう、塩撒いとこうかな」


ヤマ「マジでやめろよ」


そんなこんなで3人は数十分で校舎に入った。


*****


俺「……疲れた」


タウロ「あ、あぁ……。あとはもう他の学年だから大丈夫だよな….」


二人がゼーゼー言っていると、突然後ろから声をかけられた。


?「すいません、あの聞いていいですか?」


俺「うん? どうしたんですか?」


振り返るとそこにいたのは若い顔をした同じ人間だった。


?「あの、ハッシャクって……」


俺「あぁ八尺様なら、自分のクラスにいると思いますよ。えっと確かクラスは……」


*****


数分後、少年を案内した俺は適当に食べ物を買うと生徒会室へ向かう。


俺「失礼しまーす」


といいつつも生徒会室には俺しかいなかった。


俺(まあ皆仕事だって言ってたなぁ)


俺はいつもの椅子に腰をかけると、一人でポーッとすることにした。

あとの仕事は、いわゆるインフォメーションセンターである。


忙しいと思ってたけど、意外にもみんな理解してから来てくれているようで、むしろ退屈である。


俺は遠くからスピーカーから聞こえてくる遠い残響を聞きながら、うたた寝する。


……

…………


突然体がゆっさゆっさと横に揺らされる。


俺「……うん?」


そこにいたのは……首から上がない女性だった。もうこのくらいじゃ驚かない。

制服を着ているところをみると、ここの生徒らしい。


俺「……。えっと……デュラハンですか? 抜け首ですか?」


尋ねると首のない彼女は一旦頷き、首を横に振った。


なるほど、デュラハンか。


文献などではシューターという馬を引き連れているというが……まあ外で放し飼いにでもしてるのだろう。


俺「……えー……それで相談とは」


尋ねると、デュラハンは手刀で首を切り落とす仕草を見せた。


なるほど、どうやら、その様子。

首を落としたらしい。


首なんて普通落とさないだろうと思うが、この人混みだと無理もないのかもしれない。


とりあえず、まず顔を知るために生徒手帳でデュラハンを検索することにした。


俺「……なるほど」


美人だった。確かに目の前にいるスレンダーな身体に繋げるとぴったりかもしれない。


……というか、この人。顔のない状態でよくここまで来れたな。


……まあデュラハンだし、そのくらいはできるのだろうな。


俺「はい。では、放送で連絡してもらいますので、もうしばらくお待ちください」


*****


放送部に連絡して1分ほどあと連絡が入った。もちろん生徒会室にも聞こえる。


木霊『放送部から皆さんへ探し物の連絡です。たった今デュラハンさんが首を落とされたとの連絡が入りました。心当たりのある方は生徒会室までお願いします』


……小中と学校はいたけど、こんな異質な放送は今まで聞いたことなかったな。


デュラハンは放送が流れるとこちらに向かってペコペコと頭を下げた。

いや、まだ見つかってないんだけども。


まあ、ともかくこれで俺のやれるのはここまでだ。あとは生徒の協力次第である。


しかし、退屈だ。

遠くからズンチャンズンチャンと校庭で流れているのだと思われるBGMの残響が聞こえる。


俺は、欠伸をすると棚から自分の世界から持参したクッキーと紅茶を取り出す。


……と思ったが辞める。ここには今他の生徒がいるし、分けて食べるにしてもきっと彼女には食べられない。


いや、食べられるにしても喉から食事を行う病院の患者さんみたいだし、味わえないだろう。


仕方ない。暫くぼーっとして過ごすか。


俺「……」


デュラハン「……」


俺「……」


沈黙がしんどい。


デュラハン:

アイルランドに伝わる首なしの妖精。

文献によっては騎士だの運び屋だの死神だの言われているが、詳細は不明。食べたら漏れそう。

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