表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

第4話 それはあまりに尊いお芝居

レティシアは息を止めた。


机の上の勘定石を見つめたまま、動けなかった。


通るはずのないものが、通った。

しかも、あまりに簡単に。


忍び込んだのではない。

神殿の方が、この方を招き入れたのだ。


レティシアは、そっとアリアの横顔を盗み見た。


本人登録なしでの決済。

罰金を孤児院の朝食に変えた慈悲。

不正の記録を永久に固定した裁き。

そして今、神殿の根幹へ自らの名を刻んだ創造。


そろってしまった。


……女神様では?


いや。

疑問形にすること自体が不敬だ。


女神だ。

今ここに、生身の女神様がいらっしゃる。


だがその瞬間、レティシアはさらに恐ろしい……もとい、あまりに愛らしい真実に気づいてしまった。


この方は、これほどの存在でありながら。

それを隠し通せているつもりでいらっしゃる。


「……っ!」


人の名を用い。

勘定石に触れ、台帳を通し、登録番号まで取得する。


「わたくしは人間ですよ」とでも言いたげに。


なんという慈悲。

なんという不器用さ。

なんという、いじらしいまでのお忍び。


(甘いですよ、アリア様。隠せておりません。わたくしの目は節穴ではございませんよ!)


レティシアは、鼻から漏れ出そうになる歓喜を、鉄の意志で飲み込んだ。


ご安心ください、アリア様。


あなた様が隠したいとお望みなら、わたくしも知らないふりをいたします。


そのうえで、あなた様のお言葉はすべて通します。


赤い文字は警告。

沈黙はご配慮。

表情の消えた横顔は、怒りではない。


創造主が、自らの作品に残った汚れを見つけたお顔だ。


ええ。

読み違えるはずがありません。


レティシアは頬に熱を覚えたまま、静かに目を伏せた。


胸の奥で、何かが決定的に傾いた。


仕える相手が変わったのではない。


世界の見え方が、変わった。

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。

<(_ _)>


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ