その10
カイがノキの郷の人たちと話し込んでいる間に、ユラは空になった椀を女将に返しに行った。すると、もうすることがなくなってしまった。今日はたくさん歩いた。少し早いような気もするが、もう瞼が重くて仕方ない。荷物を抱えながらうとうとしていると、カイが帰ってきた。
「明日、ノキの郷へ行くぞ」
カイの言葉にハッと目が覚める。
「魔成獣退治に?」
ユラは目をこすりながら聞いた。
「ああ、そうだよ。どうした。もう眠いのか?」
「まだ大丈夫」
と、答えたものの、やっぱり眠い。目を開けようとしても、まぶたが垂れてくる。するとカイは、
「明日の出発は早朝だ。もう寝よう」
そう言って囲炉裏の火に灰をかけて小さくすると、くるりと背なかを向けて横になってしまった。ユラはノキの郷のことをもう少し詳しく聞きたかったけど、眠気に勝てず、目を閉じるとそのままストンと眠りに入ってしまった。
翌朝はまだ暗いうちに起こされた。宿の裏手の井戸の前で顔を洗い、急いで荷物をまとめる。荷物を背負って、カイと共に宿の前に出ると、もう一同が揃っていた。
「遅くなってすまん」
カイが声を掛けると、なかのひとりが手を振った。カイと同じくらいの年恰好の男だった。
「いや、俺たちもさっき揃ったところだ。あんたに来てもらえて助かるよ。よろしく頼む」
「ああ。そう言ってもらえるのなら、期待に応えなきゃな」
カイは屈託のない笑顔で言った。
「ところで、その子供があんたの雇い主かい?」
その子供というのはユラのことだろう。ユラは小さくお辞儀をした。
「ああ、正確にはこの子の父親が雇い主だ」
カイがユラの方を見て頷いたので、ユラは自分で自己紹介することにした。ユタになりすまして。
「ミクリの郷のユタです。よろしくお願いします」
ユラは、自己紹介をした。
「ああ、よろしく。俺はノキの郷のノアだ。魔成獣討伐のまとめ役を任されている。カイさんを説得してくれてありがとよ。正直、俺たちだけでは心もとなかったから助かったよ。さて、これから街道を避けてノキの郷に向かうが、道が険しい。ちゃんとついてきてくれよ」
ノアはそう言って歩き始めた。
彼らについて歩くうちに、なんでノアが「ちゃんとついてきてくれよ」などと、念を押したのかが分かった。ノキの郷までの道のりはとんでもなく険しい山道だった。ユラは必死で皆の後をついて行った。ユラと比べて余裕のあるカイたちは世間話をしながら歩いていた。
「街道を避けて郷に向かった方がいいんだ。この道は少し険しいが安全だ」
「魔成獣は街道に出るのか?」
「ああ。おそらくそうだ。だが、誰も姿を見たことがない。念のため遠回りだが安全な道を通ってノキの
郷に向かう」
「なるほど。わかった」
それからさらに数時間ほど歩いてノキの郷に到着した頃には、ユラはヘトヘトになっていた。カイ達は魔成獣退治の計画を練るために早速作戦を練ることになった。被害者が多数出ているため、一刻も早い討伐が期待されているのだ。
ユラは、あてがわれた部屋に辿り着くとすぐに床に大の字になって寝転ぶ。
「ああ、疲れた」
目をつむったら、このまま寝てしまいそうだった。
グウ
ユラは意識を手放した。
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