表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地味スキル【荷物持ち】と【逃げ足】による、現代ダンジョン物拾い生活  作者: 自爆霊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/30

やせいの ひときりが あらわれた!

「ヒャッハー! 死ねぇサイトゥス!!」


 世紀末的な叫びを上げた男が、樹上からサイトゥスに飛びかかりました。その手に握られた大斧も相まって、汚物を消毒しそうな凄みを感じさせます。


「はい隙あり」

「グッ!?」


 その斧を半歩下がって回避したサイトゥス。カウンターのハイキックを腹に叩き込み、3メートルほど蹴り飛ばしました。

 世紀末モブは何とか受け身を取ったようで、立ち上がって威勢良く吠えていますね。


「やるなぁサイトゥス!」

「でしょ? 頑張ってるからね」

「だがまだだ! まだ俺は終わっちゃいな「バイバーイ」ギッ……」


 サイトゥスの投げた直剣が世紀末モブの頭を串刺しにしました。会話イベントをスキップするかの如き容赦の無さで、あっさりと彼の命を奪います。


「ナイスキル!」

「見事な投擲、ブルズアイだね」


 狙い違わず頭を貫く投擲に、サナダとマリーから喝采が送られます。

 戦闘力の無い二人にとって、サイトゥスの鍛え上げられた戦闘術は新鮮かつエキサイティングなコンテンツでした。普段見ることのないハイレベルな戦いに、二人揃って釘付けです。


「サンキュー。そんじゃマリーさん、こいつの斧も回収しちゃって」

「はいよー」


 彼らはミトラ山脈遺品回収隊、殺した相手の遺品も、ちゃんと持ち帰ってあげるのです。


「インベントリはまだ余裕あるし、ガンガンしまっちゃおうねー」

「そうなのか? 結構色々拾ったと思うのだけど」

「おうとも、まだ重量上限の半分しか拾ってないぜ」


 マリーのインベントリには重量上限があります。普通にやってれば困らない程度のキャパシティはありますが、こうして重い武器を拾いまくっていると、上限に引っかからないよう気を使わねばなりません。


「それじゃあドンドン進むとしよう、まだまだ遺品は転がっている」

「サイトゥスさんが居れば寄ってくる人の遺品も回収できる、ボランティア冥利に尽きるというものです」

「もし負けそうになったらサナダの手を掴んでね? 10秒凌げば帰還能力で逃げられるから」


 サイトゥスの強さはロビーで有名です、そして強いということはダンジョンで沢山稼げるということ、沢山稼げるということは殺せば大儲けできるということ。これにより「サイトゥスを殺す=億万長者」という隙のないクソのような三段論法が成り立ち、多くのヒャッハー!が寄ってくるのですよ。


「サイトゥスぅ……そのキレイなドタマで髑髏杯を作ってやるよぉ……!」


 そう、このように。


「探索者の死体はすぐに消えるぞ? 仮に作っても、消える前にギリギリ一杯飲めるかだろう」

「その儚さが風流なんだよォ! ハーッ!!」


 デス風流人は死体が消える様に風流を感じる、血生臭い詫び錆びですね。

 振り抜かれた斬首剣をジャンプして回避。下向きの二段ジャンプで急降下したサイトゥスが、すれ違いざまにデス風流人の首を切り落としました。

 勝敗が決まるや否やマリーが駆け寄り、彼の持っていた剣を取り上げます。


「なにこれ斬首剣ってヤツ? 初めて見た!」

「斬首剣は面白いね、帰ったら試しに使ってみよう」

「それじゃあ回収するね!」


 斬首剣がサクッとインベントリに回収されました、ロビーでも中々見ない珍しい得物ですね。


「コレ面白い形ですね、僕も振ってみたいです」

「うんうん、帰ったらみんなで試し切りだね」


 サイトゥスが寄ってきた探索者を殺し、マリーがその遺品を回収する、隙のない完璧な布陣です。もし仮にサイトゥスが殺されたとしても、マリーが遺品を回収してサナダと逃げるから確実にアイテムは持ち帰れます。最強の三人です。


 しかし、最強とは得てして倒されるもの。この三人も、その流れには抗えませんでした。






 それからもう数人の刺客から遺品をはぎ取った後のこと。三人の前にふらりと、雀柄の羽織を纏った老人が現れました。


「やあ御三方、良い天気じゃな?」


 老いた身でありながら生き生きとした表情、そして腰に差した日本刀。まるで歴戦の侍のような出で立ちの老爺が、三人の前に立っています。


「雀の羽織に小麦色の鞘って……まさか、ロウシ?」

「ロウシってあの【人斬りスズメ】マスターの!?」

「いかにも、儂こそが【人斬りスズメ】ギルドマスターのロウシじゃよ」


 【人斬りスズメ】、殺人を専門とするギルドです。メンバーは全員が人斬りを生き甲斐とする対人勢、ダンジョンに潜っては探索者を殺し戦利品を奪い取る、悪逆非道の人斬り集団です。あっいま強盗殺人くらい探索者なら誰でもやってるって思ったでしょ、私もそう思う。


「いやはや、サイトゥス坊が珍しくのんびりしていると聞いてのう。居ても立ってもいられず走ってきたのじゃよ」

「えっサイトゥスさん目当てなんです?」

「サイトゥスさん、何か恨みでも買ったんですか……?」


 人斬り集団の頭領たる老練の剣士が彼をつけ狙う理由、それは…………


「だってサイトゥス全然遊んでくれないんじゃもん、こういう時しか斬り合ってくれないんじゃ」

「しょうがないだろう、人と戦ってもレベル上がりにくいんだから」


 単に遊びたいだけでした。ロビーでは暴力もコミュニケーションですからね、殺し合いもただの遊びなのです。


「もっと老骨を労らんか! 老人ってのは若者と遊びたいものなんじゃよ!!」

「その元気さで老骨は無理があるのでは……?」


 ロビーで復活した探索者は骨折や筋肉痛などのデバフがリセットされます、現世で脚を失ってもロビーで死ねば元通りなんですよ? 便利ですね。

 そんなわけで老いによる腰痛等から解放されたロウシはハッスルして、このように元気に人斬りライフを満喫しているのです。


「まあいいや、それじゃあ決闘だ。マリーとサナダはその辺にどいておいて」

「ほっほ、話が分かるではないか! そこな若者たちは儂らの戦いを見物しているが良い!」

「それじゃあお言葉に甘えまして」

「サイトゥス頑張れ~」


 少し離れたところでサナダとマリーが手を繋いで見物する中、サイトゥスとロウシの決闘が幕を開けます……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ