幼女を味方へシュート!
本日もサナダとマリーはポイント鉱石を運んでいます。逃げ足と荷物持ちによる最強運搬コンボで、二人の活躍が止まりません。
「ガッハッハ! 私らの活躍が止まらない件!」
「ラノベ? 確かにメチャクチャ役に立ってるけど」
マリーちゃんもテンション上がってこんな戯言を言ってます、ゴキゲンです。
「だって私ら大活躍だし! マジすごいし!」
「かなりの鉱石を運んだもんね」
「私ら最強コンビを捕まえられるヤツなんていないもーん! 私らサイキョー!」
実際、逃げ足で駆け回る二人からアイテムを奪い取れた人は今のところいません。おかげさまで白陣営は安全に鉱石を持ち帰れて、順調に戦果を伸ばしています。
「ん……?」
しかし最強とは得てして破られるもの。この二人の最強運搬コンボもまた、対策される時が来てしまったのです。
「マリー? どうしたの?」
「……横に跳んで!」
「はーい」
そうしてサナダが横に飛び退くと同時に、後方から一本の槍が投擲されました。
「ひぃ!? ナニコレ!?」
凄まじい速度で飛んできたその槍は二人がいた場所を通り抜け、ぶつかった木に深々と突き刺さっています。
「多分ハナマル! 私らの鉱石を刈り取りに来た!」
「ヤッバ……!」
ハナマル、突撃スキルを持つデスマーチの一番槍。サナダと同等の走力を誇る高速アタッカーです。
「ひとまず真っすぐ走って! この先の採掘ポイントは白軍の仲間がいるはず!」
「分かった! ……ってもう来た!?」
二人の後方からハナマルの声がします。
「久しぶりだね二人ともォ! ちょっと兄ちゃんとオハナシしなーい!?」
「そんなこと言って殺すんだろ! 騙されんぞ!」
「そんなことないって! ちょっと串刺しにして木に打ちつけるだけだって!!」
串刺しだけなら死ぬまで猶予がありますから、その間に雑談くらいはできるでしょう。死に慣れ切った探索者であれば、藁人形よろしく木に打ち付けられた状態で会話することも十分現実的です。現実であってたまるかそんなこと。
「物騒な丑の刻参りですね!?」
「知らんのか? これがイマドキの流行りなんだぜ」
「ウッソでしょ!?」
人間を藁人形代わりに打ち付けるのがロビーのトレンドです、普通に呪う相手を殺す方が早いような……
「嘘に決まってるでしょサナダ!」
「いやホントだけど、丑の刻参り用の神社に行って藁人形役を現地調達するのが最近のトレンドだよ」
「ウッソでしょ!?」
ハナマルの言ってることは本当ですよ、第25区画だかに建てられた「丑の刻神社」では、嫌いな人を呪いたい探索者たちが毎晩バトルロワイアルをしています。負けた人が藁人形にされる感じですね。
「ほらサナダ! 採掘ポイント着いたよ飛び込んで!」
そんなことを話している間に二人が目的地に着きました。防衛用に配置された2メートルくらいの柵を飛び越えると……
白軍と赤軍が、総力戦をしていました。
「押し込め押し込め! ロウシさえ抑えとけばどうとでもなる!」
赤軍の指揮を執るサイトゥスが号令を飛ばしています、最前線で戦いながら自軍を適切に動かす様は驚異の一言ですね。
「ちぃっ、数が多すぎる! サイトゥスめ猪口才なァ……!」
白軍の最前線でロウシが無双しています。集る赤軍をティッシュでも斬るように一撃で殺し続けている、文字通りの無双です。前から思ってたんですけど、なんかロウシだけ別ゲーじゃないです? 普通の人間は刀の一振りで骨をスパッと切断できないんですよ、こんな風に無傷で百人斬りが出来るなんておかしいですよ。
「……誘いこまれた!?」
「ヤッバ……! なんとかコッソリ逃げないと……」
そしてこういう前線指揮において、サイトゥスはちょっと気色悪いレベルで冴えています。例えばそう、偶然乱入してきた子供二人を視認して……
「そこのちびっこ共がメタルスライムだ! 確実に仕留めろ!!」
即座に攻撃命令を下せる程度には。
もしサナダとマリーがここにあるポイント鉱石をかっさらえば一発で白軍の勝利です、逆に二人が殺されればこのまま白軍が押し込まれて赤軍の勝利です。そしてこの判断を0.3秒くらいで下したのがサイトゥスです、即断即決とはまさにこのこと。
「ヒェッ赤軍が寄ってくるぅ!? 助けてサナダァ!!」
「いや無理でしょ! 人が多すぎて壁になってるんだけど!?」
赤軍の基本戦術は「数で押し切る」です。囲んで叩けば大体なんとかなることを彼らはよく理解しており、数の暴力を効率的に押し付けるため何も考えず雪崩のように押し寄せて来るのです。
そして当然グズグズしてれば、後ろのハナマルに追いつかれます。
「そろそろお縄につきなよ二人共ー?」
「追いつかれたァ! もう終わりだぁ!!」
「なにアレ……飛んでる……!?」
上空10メートルくらいに滞空したハナマルが二人に自首を促しています、槍を持ってるのもあって竜騎士のジャンプみたいな絵面ですね。【槍術】スキルレベル10で解禁される減速ギアの部位別使用、これを応用するとビタロックみたいな感じで力をチャージすることができ、ハナマルのような派手な大ジャンプが可能となるのです。加減ミスると反動で骨が逝きますけど。
そしてジャンプをしたのですから、その次は当然落ちてきます。
「あれ明らかに急降下してくるヤツだよねサナダァ!?」
「逃げ場無いんだけど! 囲まれてるんだけど!!」
今の二人は前方を赤軍のモブに塞がれて、後方を2メートルの柵に阻まれ、ついでに上空からハナマルが殺しに来てる状況です。さしずめ「前門の虎、後門の狼、ついでに上空の竜」といったところでしょう、四面楚歌ってレベルじゃねーぞ。
「あ"あ"ぁ"ぁ"ーー!! 死"に"た"く"な"い"ー"ー!!」
「ちょっとダミ声やめてマリー! 耳壊れる!」
マリーによる迫真のダミ声命乞いも虚しく、上空のハナマルが急降下して二人を串刺しにかかります。赤軍の人垣も目の前に迫りもはやこれまでといった場面。
しかし強者とは常に道なきに道を見出し活路を拓くもの。この土壇場にあって覚醒したサナダの潜在能力は、己が前に広がる活路を見出したのです。
「っしゃあこれだあ! 頭上失礼しまぁーすッ!!」
「俺を踏み台にした!?」
そう、彼らの前に広がる人垣という名の道を。
「うっそ何アレ!? 人の肩を走ってんのか!?」
「というかリアルでそれ言うチャンスあるんだ……いいなぁ」
サナダがしたことは単純で、【逃げ足】の悪路適応効果を使って「人間という足場」を駆け抜けただけです。子供二人分の体重で踏みつけられた足場さんたちは脱臼したりもしてますが、まあコラテラルダメージですね。
「わっわぁ! すごいよサナダ! マンガみたい!!」
「かなり無茶してるから暴れないでマリー! ってサイトゥスぅ!?」
しかし人の上を走っていれば当然目立ちます。モブとハナマルでは仕留めきれないと判断したサイトゥスが、速攻で刈り取りに来ました。
「やっほー二人共! 死ね!!」
「久しぶりだねサイトゥスさん! お前が死ね!」
「殺しに来るの早すぎ! もっと悩め!!」
二段ジャンプとギアを使った気色の悪い動きでサイトゥスが迫ってきます、ラグいFPSみたいな動き方をしてすっ飛んでくる様子は不審者以外の何者でもありません。
シンプルにクソ強いサイトゥスが追いつけば二人はなすすべなく殺されてしまうでしょう。ですから、サナダは賭けに出ました。
「ええいかくなる上は……ロウシィ!!」
サナダが大声で白軍の殺人マシーンを呼びました。
「サナダ坊! 投げて寄越せ!!」
「そのつもり!!」
そして返事が聞こえるや否や、声のする方へ背負ったマリーを投げ飛ばしたのです。
「ひぃやぁぁ~~!!??」
「逃げろマリー! 俺はいいかブベッ」
無理矢理マリーを投げ飛ばしたサナダは人垣の中へ落ちて、そのまま踏み潰されました。しかし投げ飛ばされたマリーは無事にロウシの傍にいる、白軍の精鋭まで届きました。ナイス投擲。
「下がれ下がれぃ! そのちびっこにポイント鉱石回収させて撤収じゃあ!」
「クッソしくじった……!」
流石のサイトゥスもロウシ率いる人斬りスズメの精鋭部隊からマリーを奪うのは無理です。あの人たちロウシから剣術教わってるだけあってやたら強いんですよね、流石に骨を断ち切るような異常者ではありませんが。
こうしてこの拠点に貯まっていたポイント鉱石は大部分がマリーに回収され、今回の交戦は白軍の戦術的勝利に終わりました。大量の探索者が死んだことでイベントポイントも沢山集まり、星空のヘアピンまでもう少しです。




