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地味スキル【荷物持ち】と【逃げ足】による、現代ダンジョン物拾い生活  作者: 自爆霊


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現代で飛脚する

 紅白キル合戦開始から6日目、赤軍と白軍に「組織」が形成され始めました。

 サナダとマリーがギャルをぶっ殺したのと同じ日に、いくつもの採掘ポイントで似たような争いが起きたのです。


「赤軍がケンカ売ってきたんだよ!」

「白軍の人に殺された……怖い……」


 恐怖、怒り、そして暴力。ロビーの生活必需品が、平和ボケしたセーフゾーン民たちにももたらされました。

 そうして争いを始めようとする人々に、サイトゥスとロウシが強く応えたのです。


「赤軍の諸君! 団結の時が来た!」


 サイトゥスは協力を掲げました。恐るべき殺人者たちから団結して身を守る、助け合いという正義です。


「奪われたなら奪い返せばよい、そうじゃろう? 白軍の若人たちよ!」


 ロウシは報復を掲げました。奪われたものを奪い返し、血を血で贖う、原初の正義です。


「数で上回る我ら赤軍が団結すれば! 白軍なぞ恐れる所以なし!」


 赤陣営に軍が生まれました。互いを助け合い、血を流すことを惜しまない、団結を旨とする組織です。


「戦えい! ここロビーにおいて力なき者は何も為せぬ! 欲すれば先ずは戦に備えよ!」


 白軍にも軍が生まれました。自らを鍛え、戦いへ身を投じる、闘争を旨とする組織です。

 かくして各陣営に簡易的な"国"が出来上がり、本格的に戦争が始まることとなりました。






「はいはーい、ポイント鉱石回収便だよー!」

「ポイント鉱石を拠点まで運びますよー」


 そんなわけでサナダとマリーは白軍の勝利のため、ポイント鉱石の運搬業務に従事しています。なんせポイント鉱石は重くて、そして殺されれば奪われる。ハッキリ言って拠点まで持ち帰るだけでダルイです。


「良いタイミングで来てくれましたね。ここに集めてあるので、持っていけるだけ持って行ってください」

「はいよー!」


 そこでサナダとマリーの出番です。マリーがインベントリに大量のポイント鉱石を詰め込んで…………


「わっ、本当に全部消えちゃいました」

「ちゃんとインベントリに入ってるから安心してねー」

「それじゃあ次の拠点に行くので、頑張ってくださーい」


 そのマリーをサナダが担ぎ【逃げ足】の俊足で運搬する、この人力宅配便がイベントで大活躍なのです。

 まずインベントリの中身は体重に影響しません、30kgとか詰め込んでいても普通に走り回れます。ですのでおこちゃま体重なマリーを背負って、サナダは問題なく走り回れるのです。ですから仮に赤陣営の刺客に狙われても……


「はっはァッ! ここで会ったが運の尽き、お命頂だ「急いでるんでー!」足が早い!?」


 このように逃げ延びることが出来ます。前口上をガン無視された山賊系の彼には悪いですがこれも戦争なのでね、致し方ありません。


「いやぁ、ガッツリ殺し合いが始まったねぇ」

「期待していた物が出て来て、マリーちゃんご満悦である!」


 現在イベントマップでは、赤陣営と白陣営がポイント鉱石の採掘ポイントを奪い合っています。そうして参加者の集めた鉱石は各陣営の国庫に集められ、首脳陣の判断の元ポイント商店で軍需品と交換されるのです。

 つまりポイント鉱石を集めれば集めるだけ軍備が整い、有利となります。両陣営が全力で採掘ポイントを奪い合っているのは、そういうワケなのですね。


「いやー、やっぱサナダがいると楽ができて良いわ。おんぶ最高」

「マリーは一日中ロビーにいるもんね、大丈夫? 怖い人に絡まれたりしてない?」

「なに、オカンみたいなこと言うじゃん」


 マリーちゃんは諸事情で学校に通えず一日中暇です、家から出られないのでネットを見るくらいしかできません。サナダは学校に通っていて夜しかロビーに入れないので、普段のマリーちゃんが心配なのです。

 そうそうこれは豆知識なのですが、ロビーで死ぬと空腹・睡眠不足がリセットされます。なんせロビーと現世の肉体は共用ですからね、現世でスキルは使えませんが、肉体的な不調はちょっと死ぬだけで簡単に解決できるのです。徹夜し放題です。


「そういうのは大丈夫だよ、今のところ皆よくしてくれてるし。それに仮に絡まれても殺すし」

「なら良かった」


 この「よくしてくれる」というのは「楽しく殺し合いをしてくれる」という意味です。サイコ染みた口上を述べながら臓物を引きずり出して、遊び感覚で腱を切り合う。そういう気持ちの良い、爽やかで健全なやり取りが「よくしてくれる」ということなのです。はいそこ絵面が終わってるとか言わない、死んでも問題無いんだからいいでしょ別に。


「サナダは心配性だねー、マリーちゃんがガッツのある女なのは分かってるでしょ」

「でもお前時々ヘラってるじゃん」

「それはそう。そしてそういう時に「甘やかせー!」って言えるからこそ、私は強い女なのだよ」


 家から出られないのくだりから察せられる通り、マリーちゃんの現世は割と闇が深いです。簡単に言えば座敷牢暮らしです。人間力が高いから楽しくロビー生活してますが、たまーに家でシナシナになってます、だからサナダが心配するのも無理のないことなのですよ。


「まあ大丈夫なら良かった、何かあったら言ってね?」

「はいはい、そんなことよりもうすぐ次の採掘場所だよー」

「あっホントだ」


 そんな感じで二人はイベントを満喫しています。戦争も順調に進んでいますし、序盤の失敗確定みたいな空気感は完全に払拭されました。よかったよかった、これでポョムが引きこもらずに済む。

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