火事とギスギスはイベントの花
イベント「紅白キル合戦」開始から三日が経過しました。
72時間が経過してもイベントの様相に変化はなく、赤白陣営が仲良くポイント鉱石を集めています。
しかし参加者は確実に減ってきています、なんせずっと同じことの繰り返しですからね。端的に言ってみんな飽きてきました。
「はいはーい! ダルマ落としのポイント商店だよー!!」
そんな失敗への道を進むイベントに、一つの変化が起きました。ダルマ落としによる「ポイント商店事業」です。
「……? ポイント商店って、なんですの?」
「読んで字のごとく、ポイント鉱石で商品を買える店だよ! 色々揃えてるから見て行ってよー!」
「ふむふむ……えっ安」
この事業の目的は「ポイント鉱石の価値を高める」ことです。通貨としての価値を付与することで積極的な採掘、そして奪い合いを促進することが主目的ですね。
「これ大丈夫でして? 採算取れますの?」
「大丈夫ですよ、ウチにはデカいスポンサーがついてますから」
イベントを盛り上げるためだけに大量の資産を投資する、酔狂な人もいるものです。
ポイント商店の開始によって、ダレていたイベントにちょっとした変化が起きました。
「ちょっと? ここはウチが先に掘ってたんですケド!?」
「あっごめんなさい」
採掘場所の取り合いが起きるようになりました。イケイケなギャルに睨まれた地味男子がそそくさと退散します。
しかし、そう言われて黙っているような人ばかりではありません。
「ちょっとちょっとお姉さーん? 先に掘ってたって、嘘言っちゃダメでしょー?」
「そういうの良くないと思うなー」
そう、我らがマリーちゃんです。隣にいるサナダと一緒に、身長差にも臆さずギャルへ食って掛かります。
「はぁ? ガキが何抜かしてんだよ」
「だってお姉さん、ずっとアッチで掘ってたでしょ?」
「あとから来たのにその言い分は無いんじゃないです? レシートも置かずに席取りしてるおつもりで?」
「ハァ~!? ガキが何イキってんの!?」
マリーの事実陳列とサナダの煽りでギャルがイライラしています、明らかに不機嫌です。
「ですから、後から来て「私の方が先に来た!」なんて矛盾したことを言うのは良くないんです。嘘は泥棒の始まりですよ?」
「おいおいサナダ、この姉ちゃんはもうそこのボーイから採掘場所を盗んでるでしょうが」
「じゃあ既に泥棒が始まってましたね、手遅れじゃったか」
「アンタらマジでナメてんじゃ……!」
ギャルが明らかにブチギレています、イライラ極まってます。
しかし二人は意にも介さずさらに煽っていきます。日々殺し合いをしているのに、凶器も無い相手にビビる方が難しいのです。
「まあまあ、そう顔を真っ赤にせず。大人しく非を認めて引き下がってくださいよ、ね?」
「泥棒は良くないんだよ~? 頭わるわるなおねーちゃんには難しかったかな~~??」
「このクソガキッ!」
マリー渾身のメスガキ煽りがクリティカルヒット、ブチギレたギャルがマリーを蹴飛ばしました。
「ガキだから手加減するなんて思った?? アンタみたいな馬鹿はこうして性根を叩き直して……!」
11歳児が蹴り飛ばされるという(現世基準では)ショッキングな絵面に、周囲の人々が静まり返っています。まあビビってるのはセーフゾーン民だけですけど、普通の探索者達は気にせず採掘を続けています。
さて、そうしてブチギレたギャルがマリーの方にズカズカと進んでいます。転がり地に伏せるマリーに蹴りを入れようと、思いっきり右脚を引いたところで。
「はい隙あり」
「えっ……?」
地面に着いてる左脚に、思いっきりマリーのナイフが突き立てられました。
現実が飲み込めないのか困惑するギャル。片足立ちになってるところでその脚を奪われたのですから、当然そのまま倒れ込みます。
「なっ……はぁっ……? あ、あしが……へぅ……?」
「そりゃまあ脚の腱を切ったからね、立てないよ」
「えっあっ? 脚、切られた?」
「そうですね、左脚がおじゃんになりました」
サナダの解説が挟まります。ちなみにポーションなんて気の利いた物はロビーに無いので、怪我したら死なないと治りません。デスベホマです。
「んじゃ殺すよ、またねー」
よって今マリーがトドメを刺したのは、壊れた脚で彼女が長時間苦しまないようにしてあげる、慈悲の介錯なのです。
ちょっとドロップしたポイント鉱石はもらっていきますけど、善意からの行動なのですよ。少なくとも表向きは。
「それじゃあ十分集まったし、私たちは帰るねー」
「さよならー」
唖然とするセーフゾーン民たちを後目に、サナダとマリーはスタコラサッサと帰りました。
ポイント商店の始まったこの日から、赤軍と白軍の間ではポイント鉱石を取り合う、ピリピリとした空気が漂うようになりました。戦争に一歩前進ですね、めでたい。




