強盗を働くとき、他の強盗もまたあなたをのぞいているのだ
イベント「紅白キル合戦」が始まって12日、参加者の間でポイント鉱石の奪い合いが起き始めました。
「へへっ、チョロいもんだね」
彼らはポイント鉱石を「通貨」とみなし、その魅力に憑かれひたすらに集めようとしているのです。
丁度いま同陣営の探索者を謀殺してポイント鉱石を奪い取ったこのギャルのように、陣営を問わず各地で仲間割れが起き始めました。
「マジメにせこせこ採掘なんざしてられるかってーの。やっぱ横からいいとこだけを掻っ攫うのがイケてるっしょ〜」
彼女はこの前マリーに刺殺されたあのギャルです。幼女に足の腱を切断されるB級映画のような展開を経て、ロビーのやり方を理解した様子。将来有望だぁ。
「あの頭のおかしいガキに殺された時は何もかも投げ出してやろうと思ったケド、こうして殺す側に回ると一気に楽しくなるね!」
ギャルちゃんは素質があったようで、死にも怯えずガンガン殺して殺されて、探索者としての経験を積み上げているのです。これほどの逸材がセーフゾーンなぞに押し込まれていたなんてあまりにも勿体ない、こういった人材を採掘できるのだから、ポョムの思いつきもバカになりませんね。
まあとはいえ、あくまでもギャルちゃんは脱初心者といったところです。熟練探索者たちにはまだまだ及びません、例えば
「やるじゃん。ギャルの姉ちゃんも馴染んできたみたいだね?」
こうして背後から話しかけてきた、マリーのような探索者には。
「げぇっ!? あの時のイカれ幼女!?」
「イカれ幼女とは失敬な、ちょっと過剰防衛でぶっ殺しただけじゃんね」
「蹴飛ばされてケロッとしてるガキのどこがマトモだってんだよぉ!?」
ギャルちゃんはまだ肉体の損傷に慣れ切ってませんから、思いっきり蹴飛ばされてもなんとも思わないマリーのことが理解できないのでしょう。
「ハハッ、でも丁度良かった。殺しにも慣れてきたとこだし、アンタをぶっ殺してあの日の雪辱を晴らしてやる……!!」
うんうん、とりあえずぶっ殺す選択が出来るのはとても良いことです。優秀な探索者は居れば居るだけ有難いですから、ここで殺された後も頑張ってほしいですね。
「……? ああ、お姉ちゃんは素人だったね」
「なに?」
「あのさぁ、せっかく背中刺すチャンスだった私が、なんでわざわざ話しかけてると思うワケ?」
至極真っ当なお話です。不意打ちで先手を取る機会を手放したのですから、当然それには意味があるのです。そして、彼女はもう既に敗北しているのですよ。
「そりゃあ、お前が性格の悪いクソガキだからだろ?」
「ひどっ!? こんなに可愛いマリーちゃんをクソガキ呼ばわりとか人間としてどうかと思うよ!!」
「見た目と中身は関係ないだ────」
ギャルちゃんがもっともなことを言い切る前に、その首が斬り落とされました。
「もしかして知り合い? 話せるように殺さず手足落とした方が良かった?」
そう、マリーの付け合わせことサナダです。
「別にぃ、イベントで最初に殺した相手ってだけだよ」
「……あーあれか、マリーを蹴飛ばしてたギャル」
「そうそう、セーフゾーン民のクセに腰の入った蹴りを腹に叩き込んでた素質のある子よ」
マリーが話しかけて油断したところをサナダが不意打ちでぶっ殺す、二人の作戦が見事にハマった形ですね。マリーが会話イベントを終えるまで不意打ちを待ってあげる、サナダの優しさも光ります。
「こうして会えたのも縁だし、なんか言っとく?」
「確かに、そんじゃこうしよう」
殺された探索者は幽体となって、復活するまで殺された場所に留まります。つまり地面に転がっているギャルちゃんの首無し死体のあたりで、彼女の幽霊が二人をじっと見ているのです。
生者に幽霊は見えません、しかし彼女はそこに居るのだろうと、きっと私たちを見守ってくれているのだろうと。そう信じて、マリーがサナダと肩を組みました。
「えっなに?」
「サナダサナダ、空いてる方の手でピースして」
「こう? 何故……?」
「それはこうしてだねぇ……」
促されるままにピースするサナダ、そして一緒にピースしたマリー。満面の笑みの幼女が、こう言い放ったのです。
「……私たちの勝ちぃ」
「なるほど…………いぇーい」
そう、煽りである。
「ねえねえどんな気持ち? クソガキにぶっ殺されて勝利の肩組みダブルピース決められるってどんな気持ち??」
「雪辱、晴らせなかったですね? せっかく奪ったポイント鉱石もこうして僕らに奪われて、悔しいですよね。分かります」
「やーい、よわよわおねえちゃん。年下のクソガキに二度も分からされてやんのー」
そうして一通りギャルを煽った二人は「「イェーイ!」」とハイタッチをして、悠々と去っていきました。ちなみにロビーで煽りは"アリ"です。品行方正でも煽りカスでも平等に強盗殺人されるのがロビーですからね、よほどラインを超えない限りは大体許されるのです。




