ミトラ山脈に登ろう!
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ここはミトラ山脈六合目。サナダを背負ったマリーが、吹雪の中を歩き続けています。
「……ほら、サナダ……私だって、人を運ぶくらい…………ワケない、んだよ……?」
サナダは何も言いません。目をつぶって微動だにせず、眠っているように静かです。
「まったく……もう、せっかくの登山なのに…………寝落ち、とか。もったいないことして…………」
相変わらずサナダは何も言いません。眠っている……少なくともマリーの中では……眠っていることになっているのですから、当然です。
「女の子に……おんぶさせるとか、甲斐性が…………足りないんじゃないの……? ………………あっ」
そう言っている間に、マリーが倒れ込んでしまいました。寒冷耐性の無い状態でミトラ山脈の吹雪に遭遇したのですから、当然こうなります。
「あっ……ははは、ごめんねサナダ。私も……ちょっと、眠くなってきちゃった……」
すぐ隣に転げ落ちたサナダを、マリー正面に抱え直しました。
「ちょっと……休もっか…………起きたら、また……続きを…………」
轟々と吹雪が吹き荒れる中、身体に積もる雪も気にせず、マリーがサナダへ語り掛けています。
「…………私、ね……? 一回で良いから、山頂で…………ヤッホー、ってさ……言って……みたかった……の…………」
まぶたが下がり、眠りが近づいてきます。
「ね……? だか、ら……一緒…………に………………」
それが、彼女の最後の言葉となりました。
積もった雪が二人を密閉して、二度と離れないように凍らせていきます。天然の白い棺の中で、二人は腐ることも無く、永遠に寄り添い続けるのです。
そうして吹雪が止んだ後の雪景色に、二人を思い出させるものは何一つありませんでした…………
「いや無理ィ!」
「何あのクソ天候!?」
そんなわけでサクッと自宅で復活した二人が、ミトラ山脈のクソ地形にギャーギャーと文句を言っています。
「死ぬじゃん! 歩いてるだけで死ぬじゃん!!」
「ガチ防寒具着こんだのに普通に死ぬんだけど!? 人間が行っていい環境じゃないでしょアレさぁ!!」
なにやら人生のフィナーレみたいな温度感でしたが、あんなのただの茶番です。
無限に死ねるんだから人生の「死ぬ前に言ってみたい言葉リスト」を消化するのは当然のことでしょう? 探索者の殺人鬼ごっこと同じですよ。
「せっかく登山できるとワクワクしてたのにぃ!」
「登山は登山でもエベレストとかじゃん!」
「私のハイキング計画がぁ~~!!」
ミトラ山脈はクレバスに落ちて凍死するタイプの山です、ハイキング気分で行くと普通に死にますしガチ登山気分で行っても死にます。
「サナダーーっ!!」
「マリーーっ!!」
抱き合ってギャーギャーと文句を言う二人。そうして五分ほど喚き続けた後、二人はこれからの話を始めました。
「……さて、これどうしよっか」
「まあ死にまくって耐性上げるしかないんだけども……時間かかるよねぇ」
ミトラ山脈で寒冷耐性を高めるには六合目まで登って死なねばなりません、つまりレベル上げに時間がかかる。
「20分かけて登った結果が寒冷耐性+0.1だもんね、やってられん」
「登頂目安が寒冷耐性3.5らしいから……大体8時間かかるね、やってらんないよ」
それとつい先日のアップデートで、耐性系スキルは「耐性値」にまとめられました。スキル一覧に十数個並んで分かりにくかったのが「寒冷耐性2.1」や「水圧耐性3.5」など、パッと見で分かるようになったのです。便利。
「これは情報収集タイムだね、入って5秒で凍死できるようなダンジョンが知りたい」
「だな、サクサク死んで楽に耐性を上げたい」
そんなわけで二人は情報収集のため、ロビー第一区画【プラットフォーム】へ向かうのであった。




