戦闘用と布教用
「いやぁ、南蛮街は華やかだねぇ」
「みんなキッチリオシャレしてるからねぇ、気合い入ってるよホント」
マリーとサイトゥスが人々の服装に感嘆の声を上げました。ここはロビー第12区画【南蛮街】、すれ違う人々は華やかな服装に身を包んでいて、本当に異世界に来たような気分になりますね。
「それはそうなんだけど……この格好は何……?」
そう口にしたサナダは、ドラクエの盗賊みたいな服を着せられていました。年齢も相まって「身軽さが売りの小柄な盗賊」といった風情です。
「郷に入れば郷に従えってヤツだよ、この街並みを普通の服で歩いてたら浮いちゃうだろう?」
そう言うサイトゥスは三銃士のような、ヒラヒラした貴族風の服を着ています。羽飾りのついた帽子も相まって、放っておけば誰かに手袋を投げつけ決闘を始めてしまいそうですね。
「そうそう、似合ってるよサナダ! この美少女マリーちゃんに勝るとも劣らないグッドコスプレだ」
そしてマリーは絵に描いたような、魔女の服を着ています。裾の長いスカートに黒いマント、頭にかぶったとんがり帽子がブロンドの派手さを打ち消して、いつもより大人しい雰囲気です。
「そうかな……」
「そうだよそうだよ! いやぁサナダがコスプレしてくれてマリーちゃんとっても嬉しいなあ!」
「まあそこまで喜んでくれるなら…………うん、まあいっか! マリーも可愛いよ!」
「イエーイ!!」
ちなみにコスプレしようと言い出したのはマリーです。サイトゥスを「今度ダンジョン行く時二人で助けてあげるからさっ! ねっ!?」と買収し、二対一でコスプレ法案を可決させました。
「それじゃあ装備も整えたし、いざ裏路地へ!」
「斬首剣手に入れるぞー!」
「おー!」
盗賊・魔法使い・銃士の三人パーティが南蛮街の裏路地へと歩を進めます。こうして見ると斥候・後衛・前衛とバランスの良い編成ですね、実際はサイトゥス以外戦えないのですけど。
南蛮街の裏路地は闇市、ブラックマーケットとも呼ばれています。闇商人ごっこがしたい者、趣味で作った毒を販売したい者、安全性が無い自家製の酒を売りたい者。そういった人々が集った結果、裏路地は趣味全開の品を販売する同人即売会のような様相を呈しています。
「わぁ…………」
「これはなんというか、面白いですね」
ちなみに違法性がある・危険な品は現世に持ち出せないよう、ロビー側から制限がかけられていますよ。ちょっとお腹を壊す程度の食材でも持ち出し禁止です。
「すごい! 絵にかいたようなドクロマークの瓶が売ってる!」
「自家製の酒売ってる……現世だったら一発アウトだ……」
裏路地のその辺に転がってる机と椅子、それに商品を並べただけの簡易違法商店が、裏路地にはまばらに並んでいます。手前から順に劇物取締法違反、酒税法違反、銃刀法違反、食品衛生法違反……数多くの違法商店を眺めながら、三人がテクテクと裏路地を歩き回ります。
「裏路地は危険物ばかり売ってるイメージがあるが、実際はマイナーな品を趣味で売っている店も多いんだ。変な物も多いから、眺めていると意外と面白いぞ」
「詳しいんですね? サイトゥスさん」
「事情通ってカンジ、ちょっとカッコイイぜ~?」
「サンキュー」
世の中には変なアイテムが無いと攻略できないダンジョンが山ほどあります。砂鉄を体に塗すとモンスターに襲われなくなるダンジョンとかね。
そしてそんな変なアイテムを売る物好きは大抵、裏路地で慎ましく物を売っているものです。故に必然、サイトゥスも攻略アイテムを仕入れるために、裏路地によく足を運んでいるのですよ。
「サイトゥスさん、あの『毒キノコ専門店ごくらく』ってのは?」
「毒キノコ料理を専門にしてる店だね、死ぬほど美味いし食べると死ぬよ」
「生き返れるロビーならではの店ってワケだね?」
サイトゥスによる裏路地観光案内が続きます。クセの強い商店が並ぶ裏路地にはサナダとマリーも興味津々、楽しく裏路地を観光していますね。
そうこうして幾つかの店を眺め、三人がちょっとした広場に差し掛かったところで…………
目的の人物が、現れました。
「失礼、そこの方。斬首剣はいかがかな?」
どこか堂に入った立ち振る舞いでマイナー武器を勧めてくるその女は、裾の長いコートを纏い、帽子をかぶっています。彼女の背負う二本の斬首剣が、ギラリと妖しく光を放ちました……




