餅は餅屋に、人斬りは人斬りに
前回のあらすじ
野生のデス風流人が持っていた実力不相応に強い斬首剣、彼は一体どこからそれを手に入れたのか。その謎を追って、ミトラ山脈探検隊はロビーの奥地に向かうのであった…………
「────そんなわけで、髑髏杯がどうこう言ってる人斬りに心当たりはないかな?」
というワケでやってきました、ロビーの奥地もとい【人斬りスズメ】の拠点。元ネタに倣ってお宿っぽく作られた和風建築は、日本人の心に安心感を与えます。
「いや~、ちょっと心当たりが無いねぇ。というか髑髏杯って何? 織田信長?」
「俺を襲ってきた人斬りが「そのキレイなドタマで髑髏杯を作ってやるよぉ……!」とか言って来てさ」
「何そのイカす口上、今度俺も使おう」
人斬りスズメは対人戦のスペシャリスト集団として有名です。殺しくらい誰でもやってますから、特別嫌われる理由も無いのですよ。定期的に対人戦講座を開いていることもあって、人斬りスズメの存在は探索者間でも広く受け入れられています。
そして人斬りには人斬りが詳しいだろうと、サイトゥスたちは人斬りスズメで聞き込みをしているのです。
「というかそのエセ信長のことを知ってどうするんだ? 一々復讐するような柄でもないだろアンタ」
「それはそう。ただソイツの持ってた武器がかなり良い物でな、作った職人が誰か知っておきたいんだよ」
装備作りを専門とする探索者はそれなりに居ますが、やはり優れた職人の数はどうしても少なくなります。攻略最前線で死にまくるデスマーチのマスターにとって、腕の良い職人とのコネクションはどれだけあっても足りないのです。
まあそのコネクションは「ほどほどの武器を安く量産してもらう」ために使うんですけど、どうせ死んで無くすのに高い武器なんざ使ってられませんよ。
「なるほどね、ちなみにその武器ってのは?」
「斬首剣だよ、ギロチンに仕事を奪われたタイプの」
「あぁそれか! それなら心当たりがある!」
なんと聞き込み三人目でヒット、ツイてますね。
「マジですか!?」
「教えて教えてー!」
「良いとも良いとも、まあ俺も詳しくは知らないんだが……」
サナダとマリーも大はしゃぎです。そして予防線を張った男が、斬首剣に関する「噂話」を語り始めました。
「南蛮街って分かるか?」
「確か第12区画の住宅街でしたよね」
「お嬢様ファッションが流行ってるんだよね~」
第12区画【南蛮街】、中世ヨーロッパごっこをしたい探索者が集まり、結果的にラノベでよく見る中世風の街並みになった区画です。お嬢様ドレスに執事服、全身鎧の騎士や村娘ファッションが歩き回るコスプレの聖地でもあります。
「そう、その南蛮街で裏路地を歩いているとな……後ろから処刑人が話しかけてくるらしいんだよ」
「それはもう暗殺者じゃないか?」
サイトゥスの鋭いツッコミが刺さります、公衆の面前で首を斬るための処刑人が裏路地でコソコソしちゃダメでしょ。
「俺もそう思う。まあともかく、話しかけてきたその処刑人が、決闘を申し込んでくるそうな」
「処刑人が……裏路地で、決闘……??」
「マリー、気持ちは分かるけど一々ツッコんでたら話進まないから」
ロビーでハッピーに生きるコツは、細かいことを気にしない事。ツッコミの放棄とノリに身を委ねることが肝要なのです。
「で、その決闘で善戦すると、処刑人から斬首剣を譲ってもらえるそうな」
「うーん……なるほど、なるほど?」
「ロールプレイの一貫……にしては剣が良質過ぎるんだよな、何が目的なんだ?」
「酔った勢いとかじゃないです? 探索者って割とノリで生きてますし」
まあとにかく行ってみよう。そういうワケで手がかりを得たミトラ山脈探検隊は斬首剣を求め、第12区画【南蛮街】の裏路地へ足を運ぶのであった…………ミトラ山脈関係なくなってますけど、まあ細かいことは気にするな。




