斬首剣の謎
リアクションに感謝
「いやぁ大漁大漁、たくさん持ち帰れたねー」
「ロウシが来た時は終わったと思ったけどな」
「決闘に応じてくれて助かったよ、おかげで逃げる時間を稼げた」
ここはデスマーチの拠点、無事帰還したサナダとマリー、そして復活して帰ってきたサイトゥスが、持ち帰った遺品を整理しています。
「パッと見た感じ、この槍と隣の手斧、それから例の斬首剣が良い物っぽいよ」
「あのデス風流人のヤツね」
「織田信長みたいなこと言ってた人な」
ちなみに近年では、信長が髑髏杯で酒を飲んだという逸話は嘘だとされています。実際は討ち取った武将のガイコツを漆塗りして金粉で飾り、それを酒の席で家臣たちに披露したそうな。コワー……
あの信長かぶれがドロップした斬首剣は珍しい武器種です。勝手を確かめるため、サイトゥスが軽く素振りをしました。
「おっ、おぉっ? これは……おぉっ、おっおぉーっ……!」
「オットセイ……?」
「オットセイの真似しまーす! おうおっうおうおwww」
オットセイになりきったマリーが転がりながら手をパンパンと叩いてサイトゥスを茶化します。そして負けじと同じことをして転げ回るサイトゥス、パァンパァン! と手を叩く快音がデスマーチの倉庫に響き渡ります。怪音の間違いでは?
そうして2分ほど経ち二人の熱きオットセイバトルが一段落したところで、サナダが話を戻しました。
「満足した?」
「「満足!!」」
「そりゃ良かった」
有限という呪縛から解き放たれたロビーにおいて探索者は基本的に自由です、一々ツッコんでいたら身が持ちません。
「それで、斬首剣はどうでした?」
「そうそうそれだよ! この斬首剣はかなりすごいぜ、ちょっと気持ち悪いレベルで丁寧に作られてる」
「そんなに?」
「そんなに、ちょっと比較してみようか」
そう言ったサイトゥスが遺品の山からテキトーなロングソードを引っ張り出しました。最低限のパーツだけで構成された装飾の無い佇まいは、THE・初期武器といった安っぽい印象を抱かせます。
「まずはこの安っぽいロングソードで、このポイ捨てされた木箱を斬ってみよう」
サッカーボールくらいの木箱が蹴り上げられ、大上段の振り下ろしで真っ二つにされました。バキャリ! と響いた破壊音が、ロングソードの切れ味の悪さを示唆しています。
「そして次にこの斬首剣で、木箱の残骸を更に斬ってみる」
二つの残骸が放り投げられ、同じような振り下ろしで真っ二つにされます。スパァン! と鳴り響いた快音が、斬首剣の切れ味の良さを強く誇示していますね。
「おぉー! 確かにこれはすごい」
「素人目でも切れ味の違いがよく分かるよー」
「だろう? 俺のガチ武器に迫る性能だ、あんな一般モブが入手できるとは考えずらいんだが……」
ロビーで使われる武器は基本的に探索者が作ったハンドメイドです。運営が配布した【装備作成】スキルを利用して、素材をグニグニ練り上げるイメージですね。
そして当然、強い装備を作るには良い素材と相応のスキルレベル、そして何よりセンスが要ります。売値も相応の物になりますから、一般的な探索者が良い装備を買うのはとても困難なのです。あとどうせ良い武器買っても死んだら奪われますし。
「ちょっとこれは……誰が作ったか気になるな」
「それじゃあ聞き込みだね、マリーちゃんも面白そうだから着いて行くよー」
「じゃあ僕もー」
こうしてミトラ山脈探検隊は斬首剣の謎を追い、ロビーの奥地へと向かうであった……




